3章 30話 4節
タクとヒナを含むジャッジライトリバースの同盟が成立した事で
彼らはジャッジライトリバースをK作戦に同伴させるという
共通目的を持った事になる。
ヒナはタクの認識を確認する。
「じゃあ、まずは
ルカゼの目的を阻止する軍の作戦に
私たちが同伴するための方法を
考える必要があるわね。」
タクは腕を組んだ。
「うーん。
ハルカの同伴は、ルカゼを説得する材料になるかも
知れないってのが大きいんだけど、
未知のクールン人を知るためにって理由もあった。
実際、クールンの仲間がマークサスに居るって知り得たのは
ハルカが軍に居たからだ。
そう考えたら、ヒナたちが同伴するってのは
意味はあると思う。
魔法を制限したとしてもね。
クールン人は未知の存在だから、
当事者が多いに越したことはない。」
タクの言葉に、今度はハルカが反応した。
「あ、それならさ、
メコも一緒に連れて行こうよ。
メコは魔法の感覚が鋭くて、
遠くの宇宙で魔法が発動しても
感じる事が出来るんだよ。
ルカゼぐらい大きな魔法なら特にね。
何かをした時に、
感じる事が出来ると思う。」
「そうね。
モミジ姉さんがガイアントレイブに居るってわかったのも
メコがそう言ってたからだし。
十分な戦力だわ。」
ハルカにヒナが同意した。
タクは2,3度頷く。
「それなら、むしろメコの同伴を理由にして、
ついでにヒナたちの帯同も認めさせるってのがいいな。
ルカゼの動向は俺たちが一番知りたい情報だし、
メコの魔法の力は必要不可欠だ。
そっち方面から父さんたちを説得しよう。
メコのボディガードとして、
ヒナたちを推薦してもらえると助かる。」
「OK!
ジャッジライトリバースのメンバーには
私から伝えとく。
メコにはハルカ、お願いしていい?」
ヒナはハルカを見るとウインクした。
メコはハルカと同じ11歳。
親友でもあるハルカが話すのが都合がいいという判断だった。
ハルカは首を縦に振った。
「うん。わかった。
私がロアーソンに連れて行かれた時も
一緒に来たがっていたから、大丈夫だと思うよ。」
ハルカの返事を聞いて、ヒナは椅子から立ち上がると、
マミに合図を送る。
「とりあえず、今日はここまでね。
マミは戦場に出るのは嫌かも知れないけど、
軍人さんたちも守ってくれるから。
私も責任をもって皆を守るから。
ね?」
「ふううぅぅ。」
ため息のような声をあげながらマミも席を立つ。
二人は扉へと歩いて行った。
「じゃ、また連絡するわ。
怪しまれないようにハルカにね。」
シュー!と音とともに扉が開くと、二人は部屋を後にする。
部屋にはタクとハルカが残った。
タクはもう一度椅子に座り直す。
「ハルカ、何かごめん。
部屋に急に押しかけて、
勝手に話もまとめちゃって。」
「ううん。
でも、タクは凄いね。
あんなに簡単に話をまとめちゃってサ。
ちょっと前まで一緒に机を囲んで
勉強してた仲なのにね。
タクだけ、どんどん先に行ってしまう気がする。」
ハルカの言葉は意外だった。
眉を上に上げて、タクは驚いた表情をする。
「あれは俺が学校とか行ってなくて、
ハルカと同じレベルの授業じゃないとついていけなかったからだし、
4歳も年上なんだぜ?
いつまでもハルカと同じレベルじゃダメだろ。」
タクはそう言うと笑った。
彼的には冗談のつもりらしい。
ハルカもその事は理解している。
理解しているが。
「それはそうだけどさぁ。
なんとなく、寂しいって言うか。
遠くに行っちゃうような感覚って言うか・・・・・・。」
「何言ってるんだよ。
俺はお前のボディガードだぜ?
少なくとも任務が終わるまでは
側に居るよ。」
「そうなんだけどさぁ。」
ハルカは自分の気持ちを正直に言えなかった。
そもそもこの気持ちが、恋なのかさえも
自分自身でわかっていなかったからである。
単純に甘えなんじゃないかと思った。
甘やかしてくれる相手に、
ただ甘えようとしているだけの、
卑怯な女なのかも知れないと思ったからである。
タクは優しい。
その優しさに甘えているだけの気持ちであるのであれば、
それは恋ではない。
いや、恋なのかも知れない。
それがわからないからである。
普通の11歳の少女であれば、
恋と思うであろうその感情を
ハルカは持て余し気味だった。
ハルカがそう考えるのには理由がある。
彼女がロアーソン研究所に連れてこられた時、
担当になった研究員は、ハルカに対して
かなり優しかった。
年齢も24歳で一回り以上離れていたが、
ハルカはその男性職員に恋をしてしまったのである。
初恋だった。
そしてその恋は、無残にも最悪の形で終焉を迎える。
ハルカは聞いてしまったのだ。
その相手が同僚の職員と話している内容を。
その時彼は、クールン人の事を
「化け物」と言った。
優しくしとけば、言う事を聞く単純な化け物だと。
それ以来、彼女は自分に対しての優しさを
信じられなくなったのである。
タクもそうなのかもしれない。
彼は今、クールン人の護衛という任務についているが、
任務を全うすれば、出世の道が開かれる。
だったら、ハルカと険悪になるよりも
仲良く接していたほうが都合がいい。
ガードするのに、都合がいいのである。
ついそう考えてしまう。
客観的に考えれば、タクがそんな器用な生き方を出来るとは思えないし、
任務とは言え、惑星カサンドウラで精神攻撃を受けた
ハルカの精神世界に彼女を助けるために
入ってきたの男だ。
それが出来た原理はわからない。
だが、本気でハルカの事を考えていなければ、
出来ない芸当であろうというのは、想像に難しくなかった。
だが、ハルカはタクの優しさを
心の底からは信じられなかったのである。
だが同時に、タクに惹かれ始めている自分の感情にも
気付いてはいた。
彼女の感情は不安定で、まるでトランポリンの上を歩いているかのように
跳ねては沈み、バランスを崩してはよろめくのである。
ただ、漠然と感じるタクが遠くに行ってしまうような、
うっすらとした寂しさの気持ちは、本物であったと言えよう。
それが、ちょっぴり表に出たのであった。




