ジャクソン家は普通じゃない②
ジャクソンの妻は、ふわふわした赤毛の、見るからにヤバい人だった。
ジャクソンと並ぶ長身、ベンダーよりも横幅が広く、筋肉質で。
どれくらい筋肉質かと言うと、女性の太ももくらいの太さの腕にくっきり筋肉の形が浮いている。
殿筋も素晴らしくしまっていて、きゅっと持ち上がったお尻がキュートだ。おっぱいというより胸筋と言った方がしっくりくる分厚い胸板に、フリルのエプロンとオーバーニーソックス、毛糸の腹巻だけを身につけた彼女は、大きな傷の残る顔をほころばせて「かわいい!」と身をくねらせた。
(なにこれ、怖い)
「妻のアマリリアだよ」
一応、ジャクソンが紹介してくれたのだが、クマでも絞め殺せそうな太い腕に抱え込まれたセリアはそれどころではない。ほぼ全裸の、屈強な女性に抱きしめられている現状に、頭が上手く働かない。
「うわ……ゲテモノ食いもここまでくるといっそ清々しいな」
「人の女房に対して失礼な。アマリリアはかわいいじゃないか」
(かわいい?あれが?)
「どこが」
「どこもかしこも」
ジャクソンの目は腐っているのだろうか?どう見てもアマリリアにふさわしい形容詞はかわいいではなく逞しいだし、自宅内とはいえ筋肉ダルマにしか見えない彼女の裸エプロンは、倫理的にもどうかと思うし、まぎれもなく視覚の暴力だ。
「えー、もー、かわいい!かわいいが過ぎる!もう、ジャクソンったら、グラッド卿の連れがこんなかわいい子だなんて言わなかったじゃない!」
「俺も知らなかったんだ。アマリリアが喜んでくれて嬉しいよ。でも、なにか忘れてないかい?」
思いのほか柔らかい胸板に抱かれて振り回され、悲鳴をあげるセリアと、嬉しそうなアマリリアと、彼女を幸せそうに見つめ、自らの頬をトントンつついてただいまのキスをねだるジャクソンと……。
カオスだ。
とても手に負える状況じゃないと悟ったベンダーは、肺が空っぽになるまで息を吐き切って、なにも見なかったことにしようと勝手に食卓の椅子を引いた。
「たーすーけーろーよぉおおおおおおお!」
聞こえない。なにも聞こえない。
ベンダーは自分に言い聞かせるように頭の中で繰り返し、机に頬杖をついて外を眺めた。本日は晴天なり。
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