お小遣い
セリアは目の前に広がる光景に目を輝かせた。
石畳の美しい街並みは、帝都の繁栄を他に知らしめる目的がある。帝都に入ったふたりが最初にやってきたのは、中央通りから少し外れた場所にあるレンガ色の建物だった。傭兵ギルドの本部である。
セリアはギルドと呼ばれる場所には初めて入ったのだが、一階にはカウンターがふたつあり、ひとつは登録と仕事の紹介、もうひとつは報酬の支払いと素材の換金をしているらしい。二階や三階も造りとしては似たようなもので、武器の手入れや新しい装備を売っていたり、酒や軽食を出したりしているらしい。
ベンダーはまっすぐ左側のカウンターに向かった。報酬の支払いをするカウンターだ。ここに来るまでにこなした仕事の報酬を受け取るらしい。採取した素材の換金と合わせるとかなりの額が懐に入るようだ。
今夜はご馳走だとほくほくしているベンダーは、受付嬢と一言二言交わして、いくらかの金銭を受け取るとセリアの元に戻ってきた。
「いくらになったの?」
「だいたい白金貨三百枚」
「一財産だね」
帝国の通貨は、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の順で価値が上がっていく。鉄貨は主に庶民が使う貨幣で、貴族となれば銅貨以上は見たことがない者も多いだろう。
銅貨十枚と銀貨一枚が等価で、銀貨十枚と金貨一枚も等価だ。ただし、白金貨一枚は金貨五十枚の価値がある。定住しているひとり者の一月の生活費用がだいたい金貨二枚であることを考えると、贅沢をしても一生遊んで暮らせるくらいの金額を半年足らずで稼いでしまったことになる。
普段の粗野な言動で忘れがちだが、そういえばベンダーは騎士としても優秀だった。
「つってもほとんど預けちまったけどな。大金持ち歩いてもいいことなんざねえし」
「そう」
気のない返事をするセリアの掌に銅貨十枚と銀貨二枚を落として、ベンダーは残りを自分の財布にしまった。
「これは?」
「お前さんの取り分。チーズパンでも、焼き鳥でも好きに食え」
渡されたお金に首をかしげるセリア黒髪をくしゃりとかき回して、ベンダーは顔を背けた。
(ようするに、お小遣い?)
買い食いするだけなら余るくらいの金額に、こういうところだけは貴族的だとセリアは苦笑した。
「ありがとう。大事にする」
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