忠告への返事
どうして今さらアルフォンスのことなど持ちだしたのかと問い詰められ、ベンダーはため息を吐いた。最近、帝都の辺りでアルフォンスに似た人物が目撃されているという話があったと、ギルドに寄ったときに傭兵仲間から聞いたのだ。
それだけならまだしも、アルフォンスはベンダーが入国したことをすでに知っており、彼を殺害してほしいとギルドに依頼したらしい。
「何故アルフォンスがあなたを?」
「さあね。心当たりが全くない」
十五年前、シュタントを傷つけようとしたアルフォンスを拘束したのはベンダーだった。皇帝の意向に従って、主人に暴言を吐いたアルフォンスの舌を切り落として国外追放に処したのも。恨まれる可能性があるとしたら、それくらいだろう。
本来、不敬罪で処刑されてもおかしくないアルフォンスが生きて追放程度で済んだのは、セリアに従っていた精霊たちが彼の味方をしたからだ。これ以上精霊に見放されることを恐れたシュタントが、減刑を図ったのだ。
実は、目撃されたのがアルフォンスだと言う確証はない。ただ、『丁子色の髪に黒に近い青の瞳をした、話せない男が、帝都のギルドにベンダーの殺害依頼を出した』という情報が回ってきただけだ。年の頃も一致するし、ベンダーはそれがアルフォンスだと確信に近い気持ちを抱いているが。
黙り込んでしまったセリアは、なにか考えているようだ。最近のセリアは、なにか考え込んでいることが増えたような気がする。
セリア・リーレンは元々は公国の公女で、皇帝の側妃だった。お姫様育ちの彼女に、危険なことはできるだけさせたくない。グラッド領で共に過ごし、短い期間とはいえ一緒に旅をした今、ベンダーはセリアのことを手のかかる弟のように思っている。
要するに、ベンダーにとってセリアは守るべき存在なのだ。
だから。
「今のとこ依頼を受けるような奴はいないらしいが、危なくなったらひとりでも逃げろよ」
忠告への返事はなかった。
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