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092 出立準備


朝、霜花亭の一階。


俺は、二日の支度の組み立てを、頭の中で並べていた。武器、地図、装備、書状、補給。エルナが武器、ミラが地図、シオンが書状、ファーファが食料、俺とユミルが指示と細かい買い出し。役割は昨日の夜のうちに割れていた。


「**リン様**」


ユミルが、向かいの椅子に座っていた。手に、書きかけの手紙の束。


「ヴェスタ長老?」

「**はい**」

「進んでるか」

「**……難しい、です**」


ユミルは羽根ペンを置いて、軽く眉を寄せた。書面に、思ったより字が並んでいない。


「何が」

「**お礼と、報告と、お願いを、一通に、まとめます**」

「三点盛り合わせか」

「**はい**」

「重い手紙だな」

「**はい**」


ユミルが頷いた。お礼は街の救援への謝意、報告は十二柱の襲撃と王族面会、お願いは——ファイアウォール解除のタイミング相談。宛名は塔の長、ヴェスタ長老。シオンの直属の、さらにその上の、塔の最上位。


「お願い、書きづらい?」

「**……書きづらい、です**」

「だろうな」


ユミルが、ファイアウォールという言葉を手紙に入れるかどうかで、しばらく筆が止まっていたのは、横で見ていて分かった。


「**……仕組みは、書きません**」

「うん」

「**結論だけ、書きます**」

「結論」

「**敵、王国に、近づきます**。**長老の、防壁、解いて、いただく、必要、出るかも**しれません」

「予告だな」

「**はい**」


筆の先で、ユミルが「予告」と呟き直した。それから、また書き始めた。少し進む。


俺は立ち上がって、椅子の背にかけた上着を、肩に羽織った。


「俺は、矢の補充に行ってくる」

「**何本、ですか**」

「二十四」

「**多め、ですね**」

「**多めだ**」

「**理由?**」

「ソール、出てきた時、十二で足りなかった」

「**……記録、合致します**」


ユミルがうなずいた。ソール戦の俺の矢の残数は、ユミルの記録の中で、たぶん完全に管理されている。十二本を撃ち切って、最後の一本でhoge矢が事故った。あれ以来、俺は矢の本数で焦るのが、ちょっと嫌になった。


「**炎矢用、油壺、追加、必要です**」

「分かった」

「**hoge、用、無関係です**」

「あれ、油いらないもんな」

「**振動で、削ります**」

「便利な技だ」

「**便利、です**」


ユミルが頷いた。便利、というのは、ユミルの中で「再現可能で、コスト管理ができて、出すか出さないかを判断できる技」を指す、らしい。hoge矢はその基準では、完全に便利の側にいる。


階段の上から、エルナが降りてきた。


「あんたら、もう動いてんの」

「ユミルが手紙、俺が矢の補充」

「あたしも、武器、研ぎに出してくる」


エルナが両手剣を肩に担いで、玄関の方へ歩いた。途中で立ち止まって、ユミルを覗き込んだ。


「ユミルちゃん」

「**はい**」

「あんた、字、綺麗だね」

「**儀礼の、書式です**」

「儀礼の」

「**はい**」


エルナが、半笑いで首を振った。


「百年の人の字って、そういう字なんだ」

「**形式、保たれます**」

「形式、ね」


エルナはそう言って、扉を開けて出ていった。


---


外は、王都の朝の光。


通りには、商人の声と、馬車の音と、雑踏。霜花亭の前で、ミラが地図屋から戻る予定だった。シオンは塔。俺はギルドへ続く通りを歩いた。


人ごみの中で、ふと、後ろが気になった。


——気のせい、だ。


いや、気のせいで終わらせないのが、最近の俺の癖だった。ユミルの「**……近い、です**」が、後ろ髪に引っかかっている。


肩越しに、軽く振り返った。


雑踏。誰も、こちらを見ていない。


——気のせい、だな。


今度は、本当にそうだと判断した。今のところ、俺の感覚では。


ギルドの裏の矢職人のところで、二十四本を頼んだ。鏃の重さを、いつもより少しだけ重めに揃えてもらった。長距離の街道で、風が変わる地域に入る可能性がある。重い鏃の方が、風に強い。


「兄ちゃん、今日のは、ちょっと重いな」

「街道、出るんで」

「ああ、長旅か」

「ええ」


職人は、頷いて、一本ずつ重さを確かめながら束にしてくれた。仕事の手が、丁寧だった。


霜花亭への帰り道、俺は、もう一度だけ、肩越しを見た。


雑踏。今度は、視線の片隅に、一瞬だけ、何かが引っかかった。


——黒い、フード。


人混みの奥で、フードを深めに被った人影が、こちらに背を向けて、別の通りへ消えるのが見えた。それだけだった。一瞬の、後ろ姿。


——気のせい、で終わらせるな。


俺は、霜花亭への足を、少しだけ早めた。


---


霜花亭に戻ると、ユミルは手紙を畳んでいた。封蝋に、ユミル印——彼女が王都で作った、雪片を模した印——を押し込むところだった。


「ユミル」

「**はい**」

「街、誰か、見てる気がする」

「**……**」


ユミルが、封蝋を押す手を、止めた。


「**……いつ、ですか**」

「ギルドの帰り。フード、深め、人混みの奥。一瞬で、別の通り」

「**……顔、見ました?**」

「いや、後ろ姿だけ」


ユミルが、しばらく黙った。それから、机の上で、両手を軽く組んだ。組んだ手の指の関節が、わずかに白かった。


「**……気になります**」

「だな」

「**……当たっているかも、しれません**」


昨日の「近い、です」が、こうして、形を持って戻ってきた。俺は、椅子に腰を下ろした。


「敵?」

「**判断、できません**」

「うん」

「**でも、警戒、必要、です**」

「だな」


ユミルが手紙を、机の端に寄せた。封筒の上に、軽く手を置いた。


「**……もう一カ所**」

「ん」

「**王国の、安全の為、もう一カ所、修復、必要、です**」


ユミルが、目を、上げた。


「王国の中?」

「**近郊、です**」

「ターミナル、か」

「**はい**」

「先日、話してたやつだな」

「**はい**」


俺は、頷いた。王族面会で、ユミルは「**侵入経路、世界中、複数あります**」と告げた。世界中、と言いながら、ユミルの頭の中では当然、王国近郊の一カ所が、最も先に対処されるべき位置にあった。


「行く順序は」

「**最初、近郊**」

「次は」

「**判断、必要、です**」


ユミルが、軽く首を振った。


「**北方の、噂**」

「王陛下の」

「**はい**」

「**……確かめる、必要、あります**」

「だな」


俺は、机の木目を、しばらく眺めた。


「ユミル」

「**はい**」

「近郊、いつ、見つけた」

「**……知って、いました**」

「最初から?」

「**……はい**」

「**図書館で、調べたか?**」

「**……図書館で、調べました**」


ユミルが、すまし顔で答えた。俺は、軽く笑った。これは、二人だけのジョークだった。たぶん、世界中のターミナルの位置を、ユミルは最初から、知っている。一カ所ずつ、現地で「探す」素振りはするだろうけど、行き先には迷わないはずだ。表向きの説明は「**図書館で、調べました**」。


「便利な図書館だな」

「**便利、です**」

「即答かよ」

「**事実、です**」


ユミルも、わずかに、口の端を動かした。笑いに近い、何か。


---


昼前、ミラが地図を抱えて戻ってきた。


「リント君、見て見て」


ミラが机に広げたのは、王国全土の地図と、王国近郊の詳細地図、それから街道沿いの宿場町の位置図。


「いいな」

「地図屋さん、いい人だった。書状見せたら、おまけ」

「書状、便利」

「便利」


ミラが笑った。書状の効力は、地図屋でも発揮されるらしい。


「ユミルちゃん、近郊のどこ?」

「**……街道、北東**」

「北東」

「**馬車で、二日**」

「分かった」


ミラが、地図に指を置いた。王都から東に伸びる街道、その途中で北に分岐する細い道。古い街道で、近年は使われていない、と地図屋が言っていた、らしい。


「古い街道、ね」

「**遺跡、だから、です**」

「あ、なるほど」


ミラが、納得した。地図上で、古い道は、たいてい古い場所に繋がっている。それが街道として現役を退いた理由でもある。


「街道、雑魚、出るかな」

「**雑魚、出ます**」

「即答」

「**古い街道、管理、薄い**」

「だよね」


ミラが地図を畳んだ。それから、ふと、俺の顔を見た。


「リント君、顔色、ちょっと、固い」

「ん?」

「街、何かあった?」


ミラの観察眼。俺は、軽く息を吐いた。隠す理由はない。


「フード、見た。一瞬」

「あ」

「ユミルにも、報告した」

「ユミルちゃんは」

「**……警戒、必要、です**」


ユミルが、横で短く言った。ミラが頷いた。それから、地図の縁を、指で軽く叩いた。


「あたしも、街、見てくる」

「ミラ、危ないぞ」

「情報、得意」


ミラがそう言って、立ち上がった。俺は、止めかけて、止めなかった。ミラの情報収集は、王都での暮らしの間に、もう何度か俺たちを助けてきた。今日も、止める理由はなかった。


「無理するな」

「しないって」


ミラが扉を開けて出ていった。霜花亭の扉が、軽い音を立てて閉まった。


---


午後、シオンが王命の書状の写しを持って戻ってきた。


「お待たせ、しました」

「シオン、お疲れ」

「写し、各一通ずつ、計七通」


シオンが書状を机に並べた。リン、ユミル、エルナ、シオン、ミラ、ルーク、ファーファ。ファーファの分にも一通ある。


「ファーファ、書状、要るのか」

「**ニャ?**」


ファーファがテーブルの上から、顔だけ動かした。


「お前の分、ある」

「**俺の?**」

「俺じゃなくて、ファーファ」

「**ファーファのニャ?**」

「お前のだ」


ファーファは、興味なさげに首を傾げた。


「**字、読めないニャ**」

「読めないのかよ」

「**字、ジャーキーじゃないニャ**」

「そりゃそうだろ」

「**ジャーキーの、レシピ、なら、読むニャ**」

「お前の世界観、ジャーキーだけだな」


エルナが横で、笑った。両手剣の研ぎは、もう終わっていた。武器屋の若い職人が、よく研げたとのこと、らしい。


「ファーファのジャーキーレシピ、全部、頭の中?」

「**当然、ニャ**」

「強いね、それ」

「**強い、ニャ**」


ファーファが、満足そうに尻尾を振った。


シオンが、書状の説明を続けた。


「書状の効力は、王国の各都市、各国境、隣国との関所、通用します」

「ヴァナールも?」

「ヴァナールは、外交上の友好国、書状を提示すれば通行配慮あり」

「ありがたい」


シオンが頷いた。


「ただし、戦闘行為、犯罪行為については、書状は守りません」

「当然だな」

「念のため」

「ああ」


シオンの「念のため」が、こういう生真面目な確認の場面でも、ちゃんと出てくる。塔のシオンらしい一語だった。


---


夕方、ミラが戻ってきた。


「ただいま」

「お疲れ」

「リント君、見たフード、たぶん、いる」

「いるか」

「うん。複数」


ミラが、椅子に深く腰を下ろした。それから、少し声を落とした。


「商隊宿、酒場、ギルドの裏。三カ所で、似たフードの目撃情報。背格好、違うっぽい」

「複数人」

「うん」

「いつから」

「昨日から、らしい」


俺は、息を吐いた。ユミルが、隣で、軽く目を伏せた。


「**……当たって、しまいました**」

「だな」

「**……すみません**」

「謝るな。お前の感、当たってよかった」

「**当たって、欲しくなかった、です**」

「分かる」


ミラが、机の上に、手帳を広げた。さっきまでの聞き込みが、簡潔な箇条書きで並んでいた。場所、時刻、目撃者、特徴。情報屋の手帳だった。


「敵?」

「**判断、できません**」

「監視、だけかも」

「**可能性、あります**」


ユミルが頷いた。十二柱が直接街中で動くなら、もっと派手なことが起きるはずだった。街でのソールのように。それが起きていない以上、これは**監視**の段階だ、と俺の頭の中でも、ユミルの計算と同じ結論になっていた。


「監視なら」

「**情報、収集**」

「敵側に、こっちの動き、伝わる」

「**はい**」

「出立、漏れる」

「**漏れます**」


ユミルが、机の上で指を組んだ。


「**それ、込みで、動きます**」

「込み?」

「**監視、前提、で、出立**」

「逆手?」

「**……逆手、難しい、です**」


ユミルが、軽く首を振った。


「**でも、隠しても追われます**」

「だよな」

「**ならば堂々と**」

「堂々と」

「**はい**」


ユミルの言い方が、迷いなく短かった。これは、合理の鬼の判断だった。隠せないなら、隠さない。隠そうとして失敗した時の損失の方が、堂々と動いた時の損失より大きい。たぶん、計算上で、そう出た。


「分かった」

「**でも、最初の、修復は**」

「ん」

「**……気付かれない、方が、いいです**」

「最初は、奇襲じゃなく、ステルス、ってことか」

「**はい**」

「修復作業中に、敵が来るのは、まずい」

「**遺跡内、ブレス、使えません**」

「だよな」


ユミルが頷いた。遺跡では、ユミルはブレスを使わなかった。前のヴェスティアの時も、白蛇の祭壇の時も。代わりに、終わったあとで、何か、地味な作業をしていた。あれが、たぶん、綻びの、補修。ブレスは、そもそも、ユミル本人も加減できない、ヤバい技。それを、綻びのある場所で撃ったら、たぶん、もっとヤバくなる。理屈は、よく分からない。でも、ユミルが「使えません」と言う以上、使えないんだろう、というところで、俺の中では落ち着いていた。


「だから、最初は、隠す」

「**遺跡まで、隠したい、です**」

「具体的には」

「**スレイプニル**」

「お、出てきたな」


俺は、軽く眉を上げた。スレイプニル。ソールから取り込んだ転移装置の再現。緊急用、消耗激しい、という説明だった。


「使うのか」

「**条件、揃えば**」

「条件」

「**到達点の、座標、必要**」

「お前、近郊のターミナル、座標、知ってるよな」

「**……図書館で、調べました**」

「やっぱりな」


俺は、軽く笑った。ユミルは、すまし顔のまま、頷いた。


「**全員、運べます**」

「全員?」

「**負荷、大、です**」

「お前、消耗するな」

「**……はい**」

「やめとくか」

「**……いえ**」


ユミルが、首を振った。


「**気付かれずに、遺跡、到達**。**消耗、許容、します**」


ユミルの判断は、明確だった。最初の遺跡だけは、敵に**気付かれずに**修復したい。そのためなら、消耗を引き受ける。合理の鬼が、最初の修復だけは、こだわる、らしい。


「他のは?」

「**他は、堂々**」

「最初だけ、特別」

「**最初、修復作業の、見せ方、仲間が、学ぶ、機会**」

「あー」


俺は、頷いた。仲間が、ユミルの修復作業を見るのは、これが初めてになる。白蛇の祭壇は、ユミルだけで、王都に来てしばらく経った頃に、塞いだ。仲間は、修復の現場を見ていない。最初の修復は、**仲間に修復のやり方を覚えてもらう**回でもある。


「分かった。最初はスレイプニル、それ以降は徒歩」

「**はい**」

「監視は、街道に出てから対処」

「**はい**」


シオンが、横で、軽く頷いた。


「明日の出立は」

「**明後日、です**」

「予定通り」

「**変えません**」


ユミルの判断は、変わらなかった。監視がついていても、出立は予定通り。むしろ予定を変えない方が、敵に「焦らされていない」というメッセージになる。これも、合理の判断だった。


---


夜、霜花亭の縁側。


エルナが、両手剣を膝の上で軽く拭いていた。研ぎ上がった刃に、夜の灯りが反射していた。エルナの隣で、ファーファが丸まって、尻尾だけを揺らしていた。


俺とユミルは、縁側の端に並んで座っていた。空には、薄い雲。月は、雲の向こうで、ぼんやり光っていた。


「ユミル」

「**はい**」

「手紙、出した?」

「**塔に、預けました**」

「ヴェスタ長老、明日には」

「**届きます**」


ユミルが、月の方を見た。


「**長老、何か、感じて、おられるはずです**」

「お前のファイアウォールが、揺れた?」

「**……揺らして、しまいました**」

「うん」

「**でも、長老、敏感、です**」


ユミルの語尾が、わずかに、湿っぽかった。塔のヴェスタ長老の書き換え——ファイアウォール保護下で進行中の、長老の人格再構成——のことを、ユミルは、いつも少しだけ、重そうに口にする。


「進んでる?」

「**……三割、です**」

「この前、二割、って言ってたな」

「**進みました**」

「順調?」

「**順調、です**」

「お前、罪悪感、要らないからな」

「**……はい**」


ユミルが、小さく頷いた。罪悪感、という単語に、ユミルが頷くか頷かないかで、いつも俺は、こいつの心の温度を測っている。今は、頷いた。少しだけ、罪悪感の温度がある、ということだった。


「いいよ」

「**はい**」


俺は、それ以上は言わなかった。ユミルが「はい」と頷いた以上、俺の役割は、ここで終わる。


エルナが、刃を拭く手を止めた。


「あんたたち、二人で、なんか、しっとりしてんね」

「縁側だ」

「縁側、しっとりするから、縁側」

「**縁側、しっとり、です**」

「即答すんな」


エルナが笑った。ファーファが、丸まったまま、尻尾だけ、また振った。


「**主の主、しっとり、好きニャ**」

「お前は、ジャーキーが好きだろ」

「**それも、好きニャ**」

「正直」

「**ニャ**」


ファーファの語尾が、寝ぼけた声だった。


俺は、空を見上げた。雲の隙間から、星が一つだけ、顔を出していた。


「明後日、出るな」

「**はい**」

「最初は、王国近郊」

「**はい**」

「気付かれずに、修復」

「**……お願いします**」

「お前が、消耗する」

「**……はい**」

「俺、ハーネス、確認しとく」

「**ファーファの、ですか**」

「お前の、消耗の、リカバリ用」

「**……ありがとう、ございます**」


ユミルの「ありがとう、ございます」が、事務的ではない方だった。


——刻んだ。


俺は、内心で、それを記録した。昨日のシオンに対する「ありがとう、ございます」と、同じ温度の語尾。


エルナが、横で、軽く笑った。


「あんたら、本当、二人の世界、強いね」

「ですみません」

「謝らないでよ」

「すまん」

「謝った」


エルナが、刃を鞘に納めた。すこし遅れて、ファーファが小さく欠伸をした。


夜の風が、縁側を、軽く撫でて、通り過ぎた。


明後日の出立。最初の修復は、スレイプニルで、隠れて。

監視は、たぶん、街道で動く。

北方の噂は、その後だ。


別々の場所で、別々の予兆が、立ち上がっている。

そして、近くにも、何かが、ある。


俺は、もう一度、空を見上げた。


星は、まだ、一つだけだった。


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