表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/233

063 5人の結束

# 第六十二章 五人の結束


夜。


ミラの酒場。


奥の個室に、五人と一匹が集まった。


リント、ユミル、エルナ、シオン、ミラ。


ファーファはユミルの肩で目を細めていた。


机の上に、紙束が広げられていた。


シオンの調査メモ、ミラの裏情報、神殿で得た情報、白蛇の祭壇の記録。


「整理する」


エルナが言った。


「うん」


「全部、並べて、共通項、探す」


「そうしよう」


ミラが酒を運んできた。


「今日は、ちゃんと、頭、使う日」


「だね」


「酒、薄めにしとく」


「気が、利くね」


「五年来のダチだろ」


ミラが酒を注いで回った。


それから自分も席についた。


シオンが咳払いをした。


「では、私から」


「うん」


「白蛇の信徒、三百年前に討伐された、と記録されています」


「うん」


「でも、ヘルベルト司祭の走り書き、別の可能性を示唆していました」


「ヴェスティアの東に、移った、説」


「はい」


「私、討伐の記録、もう一度、洗いました」


「で?」


「**討伐記録、不自然な点があります**」


シオンが紙を一枚、机に出した。


「討伐された、と記録されているのは、信徒の中の、一部だけ」


「一部」


「指導者層、と、武装した戦闘員」


「うん」


「**信徒全員ではない**」


エルナが眉を寄せた。


「残りは、どこに?」


「記録、なし」


「逃げた、ってこと」


「あるいは、逃がされた、という可能性も」


「逃がされた?」


「討伐軍の中に、内通者がいた、可能性」


ミラが息を吐いた。


「いい線、これ」


「うん」


「裏のチャネル、続けよう」


「お願いします」


ミラが頷いた。


「あたしの方の、裏情報」


ミラも紙を出した。


「ヴァナール側、伝手、繋がり始めてる」


「うん」


「ヴァナール、過激派、複数」


「複数?」


「白蛇、その中の一つ」


「他にも、ある」


「他にも、ある」


「で、白蛇、最近、活発化してる」


「だな」


「資金源、最近、変わった、らしい」


エルナが顔を上げた。


「変わった?」


「以前、地元の小さな寄付」


「うん」


「最近、大きな金が、動いてる」


「どこから」


「**追えてない**」


「うん」


「でも、王都、関係してる、らしい」


「王都」


「ここ」


リントが頷いた。


「神殿、内部、敵が、入ってる」


「だな」


「資金源、王都、神殿、白蛇」


「繋がるね」


ユミルが横で、頷いた。


「整理、できてきました」


「うん」


「白蛇、三百年前、生き延びた、一部」


「うん」


「ヴァナールに、流れた」


「うん」


「過激派として、再生」


「うん」


「最近、王都、関係する、資金源、得た」


「うん」


「神殿、内部、入り込んだ」


「うん」


「ヘルベルト司祭、それに、気づきかけて、消された」


「だな」


シオンが頷いた。


「整理、すっきりします」


「うん」


「でも、まだ分からないこと、多い」


ユミルが言った。


「敵の、本拠地、どこか」


「うん」


「敵の、人数、どれくらいか」


「うん」


「**そして、王都の中で、誰が、敵側か**」


「うん」


「ベーア司祭、敵側の可能性、高い」


リントが言った。


「他にも、いる、可能性」


「だな」


「神殿、外にも、いる、可能性」


「うん」


エルナが息を吐いた。


「広い」


「広いな」


「五人で、追い切れるか」


「追い切れる、とは、思わない」


リントが言った。


「だな」


「でも、追わないわけにも、いかない」


「だな」


「できる範囲で、進める」


「うん」


ミラが頷いた。


「分担、決めよう」


「うん」


     ※


「シオン」


「はい」


「お前、表の調査、続けてくれ」


「はい」


「白蛇の、過去、神殿の、内部、王立記録、引き続き」


「分かりました」


「ミラ」


「ん」


「裏のチャネル、ヴァナール側、続けてくれ」


「了解」


「資金の流れ、特に」


「分かった」


「あたし、リント、ユミル」


「うん」


「現場、神殿の、追跡」


「うん」


「あと、王都の街の異変、注意」


「だな」


ユミルが頷いた。


「ファーファの、感知能力も、活用、します」


「**我、活用ニャ**」


「お前、活躍するのか」


リントが訊いた。


「**気配、感知、します**」


「だな」


「**ジャーキー、所望ニャ**」


「**仕事の話、してたぞ**」


リントが叫んだ。


エルナが手を叩いて笑った。


「ファーファ、いつもの」


「**いつもニャ**」


「いつもで、いいよ」


ファーファが、すまし顔で目を閉じた。


ミラが少し笑った。


「あんたの猫、本当、面白いね」


「**我、猫じゃないニャ**」


「あ、ごめん、竜だっけ」


「**竜ニャ**」


「猫みたいな竜」


「**……ニャー**」


「鳴き声、猫」


「**……竜ニャ**」


「いい、いい」


ミラが酒を一口飲んだ。


「あんたら、いいねぇ」


「いいよ」


「五人、揃ってると、心強い」


「だな」


シオンが頷いた。


「私、皆さんと、ご一緒で、嬉しい、です」


「シオン、それ、酒、入ってる発言?」


「酒、入ってます」


「素直」


「素直、です」


「いいね」


エルナがシオンの肩を叩いた。


シオンが少し赤くなった。


ファーファがユミルの肩から、シオンの肩に飛んだ。


シオンが慎重に受け止めた。


「**シオン、いい人ニャ**」


「ありがとう、ございます」


「**ジャーキー、所望ニャ**」


「シオン、与えるな」


リントが言った。


「えっ」


「お前、与えると、味、しめるぞ」


「与えても、いい、ですか」


「やめとけ」


「……分かりました」


シオンがファーファを見た。


ファーファが、すまし顔で、シオンを見上げた。


「**……ジャーキー、ニャ**」


「シオン、無視しろ」


「無視、しています」


「お前、優しいから、無視、できないだろ」


「……はい」


「ユミル、お前のだ」


「はい」


ユミルがジャーキーを出した。


ファーファが、ぱくり。


「**主の主、感謝ニャ**」


「お前、結局、得てんな」


「**結果、大事ニャ**」


エルナが声を出して笑った。


「ファーファ、本当、面白い」


ミラもシオンも笑った。


緊張した話題の後の、緩い時間。


それも、必要だった。


     ※


「で、確認」


エルナが言った。


「うん」


「敵、組織的」


「うん」


「神殿、内部、入ってる」


「うん」


「資金源、王都、関係」


「うん」


「ヴァナール、過激派、再生」


「うん」


「目的、不明」


「不明」


「正体、まだ、掴めない」


「掴めない」


「**でも、追う**」


「追う」


「全員」


「全員」


杯が重なった。


軽い音がした。


ファーファがユミルの肩で、目を開けた。


「**結束、ニャ**」


「結束、ですね」


ユミルが頷いた。


リントも頷いた。


「**主、主の主、姐、シオン、ミラ、我、結束ニャ**」


「お前、自分、最後に入れるな」


「**我、大事ニャ**」


「だな」


笑い声が、また広がった。


夜は、更けていった。


その夜、五人と一匹は、覚悟を、共有した。


正体が、見えなくても、追う。


その合意だけが、まず、固まった。


     ※


——第六十二章、了。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ