表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/201

159 密談その2


その夜、トビーが、宿に、来た。


裏口から、いつも通り。


部屋に入って、フードを、取った。


灰色の毛並み。頬の色が、戻っていた。


「リン」


「ああ」


「あの男、見てきた」


リンは、矢の手入れを、止めた。


ユミルと、ファーファが、トビーの方に、寄った。


「どこで、見た」


「ギルド舎の、裏路地。今夜、また、来てた」


「ティルスと、か」


「ああ」


トビーは、椅子に、座った。


机の上に、肘を、つく。


「俺、屋根の上から、見てた。声は、聞こえなかったが、姿は、見た」


「ふん」


リンは、頷いた。


「身体つきは」


「ティルス様より、少し、低い。たぶん、頭、半分」


「肩は」


「広い」


「武人、だな」


「ああ」


トビーは、頷いた。


「だが、ティルス様、みたいな、武人じゃ、ねえ気が、する」


「どう、違う」


「ティルス様は、剣の、武人だ。あの男は**……**」


トビーは、言葉を、探した。


「**……気配が、違う。剣じゃ、ねえ。何か、別の、何か**」


リンは、頷いた。


ユミルが、低く、続けた。


「**……武人寄りの、体格。ですが、剣の、武人ではない**」


「だな」


リンは、考えた。


——魔法か、何か、違う技。


「フードは、深いか」


「ああ。顔、まったく、見えねえ」


「声は」


「低い。ティルス様より、ちょっと、低い」


「ふん」


「あと、もう一つ」


トビーが、続けた。


「**何**」


「あの男、ティルス様より、立場、上、っぽい」


リンは、目を、細めた。


「上、か」


「ああ」


「**……根拠、ですか**」


ユミルが、聞いた。


「ティルス様の、姿勢、だ」


トビーが、答えた。


「ティルス様、いつも、堂々としてる。剣の、武人の、姿勢だ」


「ああ」


「だが、あの男と、話す時、ちょっと、頭が、低い」


「ふん」


「気をつけて、見ねえと、分からん。ちょっと、だけだ」


リンは、頷いた。


ユミルが、淡々と、言った。


「**……組織の、上位、または、別の、組織の、責任者**」


「ああ」


「ふん」


リンは、頷いた。


——上の、やつ、か。


ファーファが、机の上に、座って、トビーを、見ていた。


「**……トビー、お疲れ、ニャ**」


「ああ、お疲れだ」


「**……ファーファ、ジャーキー、上げる、ニャ**」


「いい、いい。さっき、もらった」


トビーは、胸のポケットを、軽く、叩いた。


「十本、もらった」


「**……ニャ**」


ファーファは、頷いた。


「で、リン」


「ああ」


「明日、また、見に行くか」


「いや」


リンは、首を、振った。


「お前、しばらく、休め」


「いいのか」


「ああ」


「動けるぞ」


「分かってる。だが、休め」


トビーは、頷いた。


「ありがとう」


「もう一つ」


「ああ」


「明日、商業ギルドの方に、行く」


「ああ?」


「スカジー、もう一回、会う」


「ああ、それは、いいな」


「お前、案内、頼むぞ」


「ああ、任せろ」


トビーは、頷いた。


「商業ギルド長は、出張中だ。だが、副長が、いる」


「副長?」


「ああ。猫獣人の、四十代の、女だ。しっかりしてる」


「ふん」


リンは、頷いた。


「商業ギルドと、繋ぎ作りたい」


「ああ、賢明だ」


「ティルスを、追い詰めるには、商業ギルド、味方に、つけたい」


「ああ」


トビーは、頷いた。


「俺、案内する」


「頼む」


トビーが、立ち上がった。


「明日、朝、迎えに来る」


「ああ」


「フードは、被ってくる。お前らを、観察してる、振りで」


「ふん」


リンは、笑った。


「お前、嘘つき、上手いな」


「ああ、得意だ」


トビーは、笑った。


「ダウンタウンで、育った。嘘は、得意だ」


「ふん」


「だが、お前らには、嘘つかない」


「ああ」


リンは、頷いた。


トビーが、フードを、被った。


裏口に、向かった。


「リン」


「ああ」


「ユミルに、よろしく」


「ああ」


トビーは、出ていった。


ユミルが、机の脇に、立った。


「**……リン様、トビー様、信頼に、値する、と、判断、します**」


「だな」


「**……あの男、戦闘、避けるべき、です**」


リンは、頷いた。


「分かってる」


「**……今、戦って、勝てる相手か、不明、です**」


「ああ」


リンは、矢を、見た。


矢筒に、まだ五本、残っている。装置の、戦闘で、使い切らなかった分。


——だが、五本、足りるか、分からん。


「ユミル」


「**……はい**」


「あいつ、ヤバいな」


「**……はい**」


ユミルは、頷いた。


「**……ティルス様、よりも**」


「ああ」


「ふん」


リンは、矢を、矢筒に、戻した。


ファーファが、机の上で、転がっていた。


「**……主、ファーファ、寝る、ニャ**」


「ああ、寝ろ」


「**……主、隣で、寝て、ニャ**」


「ああ」


リンは、ファーファを、抱き上げた。


ベッドに、運んだ。


ファーファは、ベッドの隅で、丸くなった。


クラケンが、触手で、ファーファの背を、軽く、叩いた。


「**……ぴゅ**」


ユミルが、机の脇で、立っていた。


「**……私、解析、続けます**」


「お前、今夜も、寝ねえつもりか」


「**……はい**」


「ふん」


リンは、笑った。


「無理すんな」


「**……はい。お休みなさい**」


「ああ」


リンは、ベッドに、入った。


ファーファの、隣だった。


ファーファが、寝ぼけたまま、リンの腕に、頭を、載せた。


「**……主**」


「ああ」


「**……明日、商業ギルド、行く、ニャ?**」


「ああ」


「**……ファーファ、付いて行く、ニャ**」


「ああ、来い」


「**……ファーファ、頭、いい、ニャ**」


「お前、頭、いいかね」


「**……ファーファ、いい、ニャ**」


リンは、笑った。


ファーファは、また、目を、閉じた。


ユミルは、机の脇で、解析を、続けていた。


夜の、光が、窓から、差していた。


月の、光だった。


-了-

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ