コウ、拾われる
コウを家の前で拾った噂は直ぐに村全体に広まった。
しかし、当然、捨てているのだから、誰もが我が子ではないといい、引き取る者はいなかった。
そこで、コウを拾った老人がコウを育てることにした。
老人の家には白髪で癖っ毛が強い髪の老人と、優しい雰囲気のある老婆と金髪碧眼で、艶やかな金髪が腰まで伸びている1人の娘がいた。
名前は、老人がブラド、老婆がクルト、そして娘はフィオーナという。
ブラドとクルトは農民で、フィオーナは騎士である。
コウをブラドが育てると決めたときには、クルトは即、賛成し、フィオーナは強く反対した。
「お父さん、私がいつまでも結婚もせずに一人でいるからといって、私のじゃない孫を育てることはないんじゃない?」
「フィーにどれだけ見合いの話が来ているのか分かっておるのか?お前は、あんなにもたくさんの見合い相手と、一度も会わずに全部突っぱねておるのだろうが。
儂だって早く孫の顔くらい見たいわい。」
ブラドは、唇を前に突き出し、拗ねたような顔で言う。
「だって…私のところに見合いに来る人はみんないやらしそうな気持ちの悪い奴ばっかりじゃない。あんなんじゃ結婚してからすぐに家を出るわ。
私に結婚して欲しいならもっと性格のできた人から話をもらってよ。
それに、今は騎士の仕事がちょうど軌道に乗ってきたから結婚する気なんてさらさらないわよ。」
「儂はお前に結婚して幸せになって欲しいから見合いの話だけでも持ってきておるのだ。
なんていったって、儂等は35のときに結婚して、母さんが42のときにお前を産んだ。どう考えても遅すぎるし、もっと早く一緒になっていればと後悔しておる。
のう、母さん。」
「そうですよ。私だって、あなたと一緒になるのがもっと早ければと思っていますよ。でも、今の暮らしでも十分、満足です。」
と、クルトはにっこり微笑んで言った。
「いや、しかしな。母さんだって、孫の顔くらい見たいよのう。」
デレデレとしながらブラドは言った
「まあ、見れるものならねえ。」
「で、フィーも結婚する気がなし。なら、この子もこれから行く当てもないし、ここで育ててやってもいいじゃろう?」
と、ブラドは、上目遣いで目をパチパチさせながら問う。
「それでも駄目よ。」
頑なにフィオーナは反対する。しかし、ブラドは、
「この子を儂にまた捨ててこいとでも?お前はそんなことができるか!この子はもう、儂らが見捨てると死んでしまうのじゃぞ!」
と、必死にフィオーナに訴えかける。するとフィオーナは、
「くっ。そんなことを言うのは卑怯だぞ!」
「ダメなのか、いいのか、どっちだ?」
と、ブラドがニヤニヤとした笑みを浮かべてもう一度問いかける。
「分かった。降参よ、いいでしょう。認めるわ。」
フィオーナは両手を上にあげてそう言った。
「でも、条件を付けるわ。」
「条件?」
ブラドはゴクリと息を飲んでそう尋ねた。
「そう。その条件とは、ずばり、大きくなるまでに自分の身を守る力を身につけることよ。その子も我が家の子になるわけだし、私と同様に騎士になるのもありね。」
「なんじゃ、そんな事で良いのか。そんなもの、当たり前じゃ。儂はこの子を最強の冒険者にしてみせるわい。」
と、ブラドは意気込む。
「なんで冒険者なのよ。そこは騎士でしょ?」
「いいや、冒険者じゃ!」
「騎士よ!」
「冒険者じゃ!」
ブラドとフィオーナは子供のような喧嘩を始めた。そして、随分続いた後に、クルトへと矛先が向かった。
「「(お)母さんは!?」
「私は、この子が決める道に進んで欲しいねえ。」
と、もっともな意見を言って、この幼稚な喧嘩は終わりを告げた。
「それにしても、この子は一体何なんだろうねえ。せめて名前だけでもわかれば良いのにねえ。」
すると、クルトは、コウの首にさげられたペンダントに文字が彫られているのに気付く。
「おや?何かが書いてありますねえ…これは、こう…コウです!これ、この子の名前ではないですか?」
「儂は拾った時に気付いておったがのう。よしよし、お前は今日から儂らの子じゃ、コウ。お前を絶対に最強の男にしてやるぞ。」
その日、ブラド一家は一日中大はしゃぎだった。
しかし、今までの間、コウはこの家族のことをじっと泣くことなく、見つめていたのだった。
ちなみに、ペンダントとネックレスの違いは、ペンダントトップと呼ばれる飾りがメインか、首に下げるアクセサリーの総称かの違いで、大きい一粒の宝石などがぶら下がっているものがペンダント。授業参観で母親がさげて来る真珠がいっぱい繋がっているように、宝石がいっぱい繋がっているものがネックレスみたいですよ。




