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愛し方を間違えた鬼は、何度でも君を失う  作者: 白 月虹


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15話 腹の探り合い

朔夜は一件の小さな家の戸を叩く。


「こんな雪の日に誰だよ。」


玄浪が戸を開けると、目に映るのは朔夜……と見覚えのある侍だった。


「……新道さん!?」


「本物だよな!?良かった会えて!」


「ああ…俺も、会えて良かった、です。」


嬉しそうに抱き合う新道に対し、玄浪の顔は曇っていた。まるで見つかりたくなかったかのように。


「冬の間はここに居たらいい。戻るのも大変だろ。」


朔夜が言うと、新道は嬉しそうに頷いた。


「朔夜、ありがとな…それとすまない。」


「……ああ。」


短く返事をすると、朔夜は戻って行った。

外の気配を伺うと、新道は続けた。


「お前!何やってたんだ!」


「……すみません。怪我をして…さっきのやつが手当てしてくれたんです。…動ける状態じゃなくて…。」


「…はぁ……事情はわかったが、もしや絆された訳じゃねーよな!?」


朔夜の目の前にいた新道は鳴りを潜め、玄浪に厳しい顔で詰め寄った。


「そんなわけ…辞めてくださいよ。」


玄浪は思わず目を背けてしまう。


「まあいい。とりあえず一旦戻るぞ。お前から報告しろ。」


「はい……ですが、ここの雪は深いんで、冬が過ぎてからじゃないと…。」


「そうだな……雪が溶けたらすぐだぞ!ここは敵地なんだ。ゆっくりしてられるか!」


こうして新道は村に残り、一緒に冬を超える事になった。


「はあ…今日も獲物とれなかったですね…。」


落胆した様子の心乃葉に、隣に居た朔夜は微笑んでいた。


「あの…。」


「なんだ?」


「……新道さん、どう思いますか?」


「どう思うとは?」


普段、他人の陰口など言わない心乃葉に、朔夜は少し意外そうに眉を上げた。

それから、何かを察したように心乃葉の顔を覗き込む。


「玄浪さん……新道さんが来てから、元気なくて…悩みがあるなら聞きたくて、聞いても、なんでもない。って言われるし…。」


心乃葉は悲しそうな表現を浮かべて、続ける。


「まるで別人みたいで、遠くに行っちゃいそう!」


「心乃葉…。」


朔夜は堪らず、心乃葉の頭に手を置くと優しく撫でた。


「……俺も気にしててやるから、心配するな。」


「でも、国に帰っちゃうかもしれない。」


「大丈夫だ。お前置いて、何処にも行かないさ。」


心乃葉の瞳からは涙がポロポロと零れた。

朔夜はその涙を指で拭うと、微笑みかける。


その言葉は、玄浪に向けたものなのか、それとも自分自身に向けたものなのか――朔夜自身にも分からなかった。


それから朔夜は、新道を見張っていると、不穏な動きはすぐに見受けられた。


雪を掻き分けながら、村の端から山へ入る道までを歩数で測り、他にも山へ入れる道は無いか、山沿いを一周していた。


(…侍だしな。何かあるとは思っていたが…なんのために?この村を乗っ取るつもりか?)


不信感は募るが、憶測の域は出なかった。


また別の日、新道が朔夜に話かける。


「朔夜さん!こんな雪なのに、何やってるんすか!?」


「あんたこそ、何をしている?」


「いやぁ、食いもん分けてもらうばかりじゃ悪いから、探しているんですけど……見つかりませんね。」


頭をガシガシとかくと、朔夜に貼り付けたような笑みを見せた。


「気にするな。春になったら働いてもらう。」


「えー!こき使われそうだなー。」


「期待していますよ。」


朔夜もまた、気取られないよう笑みを貼り付けた。

そして、新道が返す。


「春が終わったら、玄浪を連れて、国に戻りますね。」


「……そうか。」


腹の探り合いだった。だが深く聞く事はなく、朔夜はその場を後にした。


(玄浪が出て行く…心乃葉はどうする?俺は、どうすればいい……。)


答えは出ないまま、月日は流れた。


心乃葉は十八になり、玄浪とは、より深い関係になっていった。


そして朔夜がこの村に来て二回目の春が来ようとしていた。


「玄浪……お前、ここを出て行くのか?」


「ん?ああ……え?なんで知って……。」


驚きを隠せない玄浪。


「新道から聞いた。」


「……出て行くと言っても、上に報告しないといけないから。」


「そうか…。」


「遠いからな……行って戻るのに、季節が変わっちまう。その時は――」


玄浪は朔夜に一歩踏み込む。


「心乃葉を……嫁にするつもりだ。」


「……なら、お前が戻るまで、心乃葉を守っていてやる。」


「本当か!?朔夜なら……安心だ。」


不本意にもこうしてまた、朔夜は村に残る事になった。



つづく。

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