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悪役令嬢RTA(リアルタイムアタック)~断罪イベントまで残り10分ですが、最短ルートで国外追放されてみせますわ!~  作者: 高橋 淳


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2/4

第2話 証拠提出は最速で

初日なので2話投稿しています

明日からは1話ずつ投稿になります

よろしくお願いします

卒業パーティー会場。

静まり返った広間の中央で、エルーゼ・フォン・アルヴィアは優雅に立っていた。

脳内タイマーは、淡々と時を刻んでいる。


《国外追放RTA 00:07:01》


(まずまずのペースですわね)


本来、この断罪イベントは非常に長い。

王太子による糾弾。

攻略対象たちの怒り。

主人公の涙。

悪役令嬢の見苦しい弁明。

そして最後に判決。


フルスキップ不能イベントとして、前世では多くのプレイヤーに嫌われていた。

だが今のエルーゼは違う。

彼女はプレイヤーではない。

走者だ。


「……エルーゼ」


王太子レオニスが、ようやく再起動したように口を開いた。


「君はセシリアに対し、数々の嫌がらせを行ったな」


「はい」


「授業ノートを隠し――」


「やりましたわ」


「階段で転ばせようとし――」


「わたくしですわね」


「茶会でドレスに紅茶を――」


「見事にかかりましたわ」


テンポが良すぎた。

会場がざわつく。

貴族たちがひそひそ声で囁き始めた。


「認めた……?」


「早くない?」


「潔いとかそういう次元ではなくてよ……?」


レオニスも困惑していた。

台本と違う。

完全に違う。


本来ここで悪役令嬢は、


『わたくしではありません!』


『平民風情の嘘ですわ!』


『証拠があるのですか!?』


などと抵抗する。


そして証人が呼ばれ、追加証拠が提示され、イベントが進行するのだ。


しかし今。

証拠提出前に全部認めている。

しかも食い気味に。


(テンポが悪いですわね……)


エルーゼは若干いら立っていた。

断罪イベントは長い。

だが大半が確認作業で構成されている。

つまり。

短縮可能。


RTA的には、ここをいかに高速突破するかが重要なのだ。


「……ゴホン」


進行役の老教師が咳払いした。

彼は学園で風紀を司る教師であり、この断罪イベントの実質的な司会者である。


「では、証拠を提出—」


「不要ではなくて?」


「…………え?」


「すでに認めましたもの。工程を省略できますわ」


教師の口が半開きになる。

広間に再び沈黙。

エルーゼは続けた。


「証拠確認、証人召喚、感情的対立。この辺りは演出としては理解できますけれど、進行効率は最悪ですわよ?」


「し、進行効率……?」


「はい。既に犯人確定済みですもの。次フェーズへ移行すべきですわ」


教師が止まった。

完全に止まった。


長年学園に勤めてきた彼ですら、このタイプの悪役令嬢は見たことがない。


隣では王太子も混乱していた。


「……エルーゼ。君は、本当に反省しているのか?」


「しておりますわ」


「ならばなぜそんな態度なんだ!?」


「だって反省と進行速度は別問題ですもの」


正論みたいな顔で言うな。

空気がそう語っていた。


攻略対象たちもざわついている。


「なんなんだこいつ……」


「急に怖くなってきたな……」


「断罪され慣れているのか……?」


もちろん慣れてはいない。

ただRTA走者なだけである。

エルーゼは扇子を閉じた。


「それで?次は判決ですの?」


「い、いや……その前に、被害者であるセシリア嬢の発言を――」


「あっ、そこ飛ばせませんの?」


「飛ばせません」


「強制イベントでしたのね……」


エルーゼは小さく舌打ちした。

その瞬間。


「え、えっと……」


今まで空気になっていたヒロイン、セシリアが恐る恐る手を挙げた。


会場の視線が集まる。


セシリアは困った顔をしていた。


「あの……エルーゼ様?」


「なんですの?」


「もう少し……揉めませんか……?」


「…………」


「その……なんというか、わたしがすごく悪いことしてる空気になってて……」


確かにそうだった。

泣きながら糾弾されるはずの被害者が、今や進行に置いていかれている。


周囲の貴族たちも妙な顔になっていた。


「むしろエルーゼ嬢のほうが主導権を握ってませんこと?」


「断罪会場を仕切っている……」


「王太子殿下より進行に詳しいぞ……」


異様だった。

完全に異様だった。


だがエルーゼは冷静に考える。


(しまったですわね)


チャートを急ぎすぎた。

イベントには最低限の“盛り上がり”が必要だ。

強引に飛ばしすぎると、進行役が混乱しフリーズする。


これはロスになる。エルーゼは深く息を吐いた。


そして。


「……では、少しだけ揉めます?」


悪役令嬢らしく、美しく微笑んだ。


会場全員が、

「そこ調整可能なんだ……」

という顔をした。

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