7歳になりました 37(オーヴェルニュ領編)
ゼン様を抱っこして背中をさすって子供をあやすようにしばらく経った。私は自分のことでいっぱいいっぱいで、ゼン様のことについてよく分かっていなかった。神を理解しようなんて烏滸がましいのかもしれないが、ゼン様は前世での私の教え子でもあるし、私を異世界に転生させてくれた命の恩人でもある。できれば幸せに過ごしてほしい。私ができることなんて限られてしまうんだろうけど、ゼン君のためになることを考えていこうと思う。
『セリーヌ、ありがとう。もう大丈夫だよ』
「本当ですか?無理してない?」
『うん、久しぶりにセリーヌに抱っこしてもらって元気が出たよ』
ゼン様の表情はいつもの落ち着いた表情に戻っていて、瞳も寂しさは消え光が戻っている。
「それはよかった!また抱っこしてあげますからね!!」
『はははっ!私にそんなこと言うのはセリーヌだけだよ!…でも、嬉しいよ…ありがとう』
「どういたしまして」
『さて、そろそろ元の場所に戻ろう。釘を刺す意味でも私が直接、ドラゴンに話をしよう』
「はい、よろしくお願いします」
次の瞬間、私は元いた場所に戻っていた。そして私の隣には光輝くゼン様がいる。
ゼン様の姿を見て、みな驚いていたけど一斉に頭を下げた。その様子を見ながらゼン様はゆっくりと話し出した。
『ドラゴンよ…神器は誰のものだ?』
『神様のものでございます…』
『それが分かっていてなぜ手を出した?』
『それは…」
『子供のせいにすれば罰せられないとでも思ったか?』
『いえっ!!決してそのようなことは!!!』
『人間を恐るそなた達の気持ちは分かる…しかし過ぎたる力は身を滅ぼすことを肝に命じよ』
『御意…誠に申し訳ございませんでした』
『悪意を持つものは近づくことができないようにしていたが、まさか子供が神器を使うとは思わなかった…。私もきちんとした守りを行っていなかったのも悪かった…よって今回は不問に処す』
『!!!ありがとうございます!!!』
『人の子達よ…今回は迷惑をかけたな…。詫びとしてこの国の秋は豊作と豊漁を保証しよう。そして、このオーヴェルニュは10年間の豊作を約束しよう。もちろん、きちんと世話をしなければ作物はそだたないから油断しないように』
「はい!!ありがとうございます!!!」
「あの、恐れながら申し上げます!!セリーヌの中に神器が入ったとのことですがどう言うことなのでしょうか?!」
『詳しくはまだ話せぬ…しかし、セリーヌの心身には影響はないから心配するな』
「左様ですか!それはよかったです!!」
『では、私は行く。またな』
「はい!お土産持ってまた行きますからね!」
私の声がけに微笑みながらゼン様は消えていった。それを見ながら私は変身していた魔法を解き、7歳に戻った。
「セリーヌ!!!大丈夫だったか?!怪我は?!」
「お兄様大丈夫ですよ!!!」
お兄様は抱き上げながら私の顔を見て、心配そうな表情をしている。私が大丈夫だと分かるとホッとした表情になって、私をギュッと抱きしめながら頭を撫でてくれた。
自分がされる立場になって思うことは、抱きしめられてすごく安心して幸せな気持ちになること。
子供の時期のスキンシップはとても大切なものだ。親と子、先生と子…いずれにしてもスキンシップは重要になってくる。スキンシップを通して互いの信頼関係を築き、安心感を与えることができる。その基盤があることで子供は外の世界へ踏み出すことができる。
ゼン様は私よりも多くの時間を過ごしてきたのだろうけど、その中で基盤となるような愛情を学ぶことができなかったのだ…。だから地球に来て人間の心を学びにきていたのだと思う。しかし、そんな時に出会った私が死んでしまった…。先生と生徒の関係だったけどきっとその時に関わったことがきっかけで私をこの世界に転生させてくれたんだと思う。
私ができる範囲で、ゼン君のサポートをしたり甘えたりできるようにしていきたいな…。
『セリーヌ殿…』
「あ、ブラックドラゴンさん」
『この度は迷惑をかけたのに、我々を助けてくれ本当に感謝している』
「いえ、気にしないでください」
『これは我々からの気持ちだ』
差し出されたのは深い漆黒の鱗だった。角度によって光を受けるとキラッと輝いてとても美しい。
「これは?」
『私の鱗だ。そしてこれは我らとそなたとの友好の証だ。何か我々の力が必要な時はこれを握って呼びかけてくれ』
「え?!そんな大切なもの頂いていいんですか??」
『もちろんだ。こたびのこと、我々は生涯忘れはしない…神への陳情もそなたがしてくれたのであろう?それがなければ我々にどんな罰がくだったか…本当にありがとう…。では、我々はそれぞれ縄張りに戻る。さらばだ!!』
そう言ってドラゴンは大空へと羽ばたいていった。
「では…帰るか」
「はい!!」
こうして私達も帰路に着いたのであった。




