7歳になりました 36(オーヴェルニュ領編)
なんとも言えない雰囲気の中、みんな途方に暮れていた。なぜなら誰もが命を失うことも覚悟の上でここにきたのにあっけなく問題が解決(?)したのだから。
ドラゴンに私の言っていることがなぜか伝わり、意思疎通できることにもビックリだし、何より神器が私の体の中に入ってしまったことにも驚いた。
私はとりあえず状況を整理しようと周りを見渡す。前世の先生時代もやっていたことだけど状況を正確に理解し、自分がどう動くか考える必要がある。危険や遊びをしていれば止めに行ったり、転んでしまった子供がいたらそれに対応しないといけない。
そして今、私がやるべくことはーーーーー…。
周りには怪我をしたり力を使いすぎて疲弊した多くのドラゴンがいた。まずは、彼らを治療しなければ!!
私はそっと目を閉じ、胸の位置で手を組んで祈るようにして集中する。こんなに多くて広範囲に力を使ったことはないけれどやるしかない。
『どうか、みんなが元気になりますように…』
私が願うと虹色に輝く優しい光が辺り一面に広がっていく…回復魔法をイメージして魔法を使ってみた。すると、みるみるうちにドラゴンの傷は癒えて魔力も戻っていった。
「ふう…どうかな?みんな元気になったかな?」
私が思わずつぶやきながら見渡すと、1匹のブラックドラゴンがこちらに近寄ってきた。他のドラゴンよりも一回り大きく威厳のある姿を見ると、ドラゴンを率いるリーダー的な感じなのかなって思う。
『神器の暴走を止め、我らのために力を使い癒してくれて感謝する』
「あ、いえいえ。そんな大したことはしていませんので!」
本当私はちょっと声をかけて止めて、お祈りしただけで大したことはしていない。
『いや、我らが人の手に渡らないようにしていた神器に、子供ではあるが手を出してしまったのは事実だ。そしてそれを止めることができなかったのを助けてもらったのだ』
「子供のうちはしょうがないと思いますよ。大人が考えないようなことをするのが子供なんですから。でも、危険がないように守ってあげることも大人の責任ですよ。今後は気をつけてくださいね」
『誠に申し訳ない…』
「あ、そんな気にしないでください!大丈夫ですよ!この子にも怪我はないようですし、良かったです!でも…」
『何か障があるのか?』
「えーっと…実はあなたたちが守っていた神器が私の中に入っちゃったみたいで…どうしたらいいのかよくわからないので、ゼン様にちょっと聞いてみようと思います。お兄様達もそれでいいですか?」
こちらを見てやや呆然としているお兄様の方を見る。するとハッとしたように我に返って頷いてくれた。
「あぁ…それがいいだろうな。しかし…セリーヌはドラゴンと話せるのか?」
「え?だって普通に私たちと同じ言葉で話してますよね?」
「………いや、セリーヌの言葉は分かるがドラゴンはガオーとかグオーとしか言っていないようだが…」
「えぇ〜?!嘘〜?!」
なんだそれ?!私はムツゴ◯ウさんみたいに互いに想いが通じちゃった的な感じなの?!
うーん、このことも含めてゼン様に聞いてみないと…。
私はゼン様の元に行くために再び目を閉じて念じる。そして、次に目を開けるとそこはいつもゼン様と会う場所だった。
『お疲れ様、疲れただろう?こちらにおいで』
「ゼン様!!!もう、何が何だか分からなくって!!」
『あぁ…そうだね。でもちょっと自体は複雑でね…。今はまだセリーヌにも話せないかな…』
「えっ…そうなんですか?!」
「とりあえず、二つだけ答えてあげる。まず、ドラゴンと話せるようになったのは君の中にある神の力のおかげだよ。神の力があれば万物の物と分かり合える。」
「なるほど!」
『次に神器がなぜ君の中に入ってしまったのかについてだけど、それについて話すのはもう少し先にしよう…。でも安心して、神器が君の中に入ったからといって君の体や心に影響があるわけではないから』
「う〜ん…気になるんですが…わかりました。ドラゴン達は今後どうなりますか?…重い罰などあるのでしょうか?」
『それはないよ。まぁ今回はドラゴンの子供がしでかしたことだし、セリーヌも罰することを望んでいないだろう?』
「はい、できれば罰は与えないでほしいです」
『今回のことでドラゴン達も自分の立場を理解しただろうし、私からは何もしないよ。彼らは深い森の中で神器を人間の手に渡さないようにしていたんだ。ドラゴンがいればよほどの愚か者じゃなければ近寄らないだろう?ドラゴンは大きな力を持っているが故に過信しているところがある…今回のことで認識を改めるだろう…。ドラゴンは力があるが、人は数が多いからより力を持たれるのを恐れて神器の周りに住み着いたんだ』
「そうだったんですか」
『あぁ、しかしそのことが今回の事件を引き起こしたんだ…神に不用意に近づくことは許されないー…』
そう言ったゼン様の顔はいつもと変わらないような表情だったけど、瞳の奥に寂しさを感じた。
「ゼン君…」
思わず以前の呼び方で呼んでしまう。するとハッとしたようにこっちを見るゼン様がいた。
私は優しくゼン様を抱きしめた。そして膝の上に抱き上げて向かい合うようにする。今は17歳の姿なので以前のようにゼン様に接することができる。
「私は、ゼン君のそばにいれてい嬉しいよ…ゼン君にも幸せでいてほしいの…私は先生の時からずっと子供達の幸せを祈っているし信じてる」
『………ありがとう…桜先生…』
私はゼン様を抱っこしならが神としての重責や孤独を少しでも柔げてあげたいと思ったのであった。




