7歳になりました 26(オーヴェルニュ領編)
私の部屋は一瞬にして灼熱のマグマが広がる火山の中にいるかのような息苦しさを感じ、息ができなくなる。火の精霊王であるルビー様から放たれる怒りがそう感じさせているのである。
私が苦しそうにしているとしているとルビー様は私を抱き上げた。すると、嘘のように息苦しさは消えた。でも、私以外のお兄様とヴィクトルさんジゼルさん、そして異変を感じて部屋に入ってきた護衛騎士の2人は苦しそうにしながら床に蹲っている。
「ルビー様!!みんな苦しがっています!!怒りを鎮めてください!!」
『………』
「ルビー様!!!お願いします!!!」
『…はぁ〜、分かった…』
すると今までの息苦しさが消え、途端にみんなが息が吸いやすくなり、よろよろと立ち上がった。
『………』
「ルビー様…私のために怒って下さったんですよね?ありがとうございます。でも、私はみんなが苦しくなるのは嫌です…」
『…悪かった…つい頭に血が昇ってしまった…』
私は改めてヴィクトルさんの方に視線を向ける。するとビクッとなりながらも私と視線を合わせてくれた。
「あの…私はマクシムさんから手紙を預かったのは本当です。でも、私は預かっただけで何が書かれるかは知りませんでした。それに…何か大事なことが書いてあったのですか?すみません、そんな重要なものだって知らなかったんです…」
「…いや、俺が取り乱してしまった。お前…いや、セリーヌは何も悪くない…。すまなかった」
「いえ、私こそ大事なものだって知らなくて…もっと早くに届けに行けばよかったですね。ごめんなさい」
「…それで、あの…その方は…?」
『俺は火の精霊王ルビーだ』
「聖霊王様?!」
「はぁ〜…段々と話がややこしくなっていく…。おい、ヴィクトルこのことは他言無用だぞ。バラせばただでは済まないからな」
「…分かっているよ」
『おい、お前。セリーヌに2度も無礼な態度をとったな…。3度目はないぞ…。』
「…っ!!肝に銘じます。誠に申し訳ありませんでした」
『もし、約束を違えた時はお前とお前の一族は2度と魔法は使えないと思え…』
「御意」
「ルビー様!!そんな怖いこと言わないでください。私は気にしていませんし、私も呑気にしていたのも悪かったんです。きちんと確認するべきでした」
『セリーヌは悪くないだろ?!優しすぎるぞ!』
「ルビー様…力で押さえつけるようなことはよくないです…。本当に大事なことは押さえつけて従わせることではなく、正しいことに耳を傾けることができることが大切だと思うんです…」
私は、先生時代に大切にしていたことは大人だからと子どもに言うことを無理やり聞かせることはしないということ。怒鳴りつけたり罰を与えたりするのではなく、なぜそれが必要なのかを子どもに説明し理解してもらえるようにしていた。力で従わせるのは簡単だけど、それは子どもの成長にプラスになることはない。むしろ、そうすることが当たり前だと思い大人になった時にその子がそうしてしまうことがないようにしたかった。正しい道を大人が示してあげることが大切なんだと思う。
『…はぁ〜、分かった。私も少しムキになってしまった。俺は帰るよ…』
「はい、美味しいお菓子もいただいたので、後で持って行きますね」
『あぁ、楽しみにしてる』
ルビー様は私に微笑んで消えてしまった。
そして、残された私たちの間には気まずい空気が流れる…。でも、何があったのかきちんと確認しておかないといけない。
「お兄様…それとヴィクトルさん。私、手紙の内容をきちんと確認していなくてごめんなさい。えっと…私が知ってもいい内容でしょうか?」
「あぁ、むしろセリーヌの力が必要になるかもしれないな…しかし、危険なことでもあるから父上と相談してからセリーヌには教えるね。少し待っていてくれ…」
「はい、分かりました」
「ヴィクトル…色々と話をしないといけない…い・ろ・い・ろ・とな…」
「…あぁ」
「じゃな、また後でね。セリーヌ」
「はい、お兄様」
何だか、お兄様の背後から黒いオーラが見えるような…そしてそれを察知しているのかヴィクトルさんは顔を引き攣らせながら部屋を出ていった。
手紙の内容は分からないけど、ヴィクトルさんのあの取り乱しようを見るとよほどのことが書いてあったんだと思う…。ヴィクトルさんはちょっと失礼な人だけど、頭に血が昇りやすいだけでそんなに悪い人ではないと思うんだよね…だから、何か協力できるなら協力したいけど…。
「ジゼルさん、ランスさん、シドさん巻き込んでごめんなさい」
「いいえ、お嬢様。何もできず…」
「「申し訳ありません…」」
「そんなっ!みんなは何も悪くないよ!体は大丈夫??もし、辛い時は休んでね」
「大丈夫です。ご心配おかけしました」
「我々も大丈夫です」
「お嬢様、何かあればおっしゃってくださいね。我々はドアのところで待機しております」
「はい、ありがとうございます」
みんなが出ていった後、考えるのは手紙のこと…一体何が書いてあったのか…。ドキドキと鳴る心臓に手を置きながら外の景色を眺める…。外は、さっきまで天気が良かったのに今は厚い雲が覆っている…にわか雨が降りそうだな…。私は不安を抱えながら心を沈めるように深呼吸をするのだった。




