7歳になりました 25(オーヴェルニュ領編)
家に帰ると執事のセバスさんが私の帰りを待っていてくれた。
「ただいまセバスさん。お迎えありがとう」
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「あのね、おじいさんのところに言ったらお土産をたくさんいただいたの。それとアレクシお兄様とお父様に渡す手紙も預かってきたのだけれどももうおかえりかしら?一緒に食べながらお渡ししようと思うのだけれど?」
「当主様はまだおかえりではありませんが、アレクシ様はもうお戻りです。ですがアレクシ様は今来客中なのですがいかがいたしますか?」
「あ、そうなのね。では、お帰りになったら教えてくれますか?」
「かしこまりました」
私は、自分の部屋に戻り商家のお嬢様風の衣装から、公爵家で着ているドレスへと着替えた。元々、日本人として過ごしていた私からしたらこんなドレスは窮屈なんだけど、公爵家の中でもあのままでいるわけにはいかないからね。
「お嬢様、飲み物をお入れしましょうか?」
「あ、嬉しい!ちょうど喉が乾いていたの!ジゼルさんも一緒に飲みましょう」
「お嬢様、ありがとうございます」
私がジゼルさんとレモネードを飲みながら一息ついていると、廊下の方が騒がしい。走ってくるような足音とアレクシお兄様に声と誰かの声がする。何だか言い争っているような声…。
コンコンコン
「セリーヌ、私だ。入ってもいいかい?」
「あ、はい!どうぞ!」
「急に来てごめんね。セリーヌが私に用事があるって聞いて急いできたんだ」
「そうだったんですか?お客様がいらしていると伺ったので、もっと時間がかかると思っていました」
「ふふっ、セリーヌよりも優先することなんてないよ!」
ダダダッ
3、2、1…
「おい!!俺との話がまだ終わってないぞ?!」
「チッ、お前の話はもう聞いただろ?後は父上が来てからじゃないと話が進められない」
「そ、それはそうだが、お前俺をおいて行ってその態度は何だよ?!」
兄い様を追ってやってきた人は貴族の男性のようで、きちんとした正装でありながら、動きやすそうな服だった。黒を基調として差し色でポケットなどに赤色が入っている。赤い髪と瞳で短い赤い髪がワイルドな印象のイケメンだった。
そう、皆さんはもうお気づきですね…すっごく失礼な失礼男がそこにいたのです。
私は呆気に取られて固まってしまった。すると、お兄様が私が固まっているのを見て今来た失礼男を睨む。
「おい、セリーヌが驚いているだろ…お前は出ていけ、話は後から父上と一緒に聞く」
「はぁ?!お前、わざわざ尋ねてきた友達に向かってなんて態度だよ?!」
「はっ、セリーヌより重要事項は俺にはない」
「てめ〜!!!」
何だか、私が固まっている間に喧嘩が始まってしまった。とりあえずお兄様に話しかけて落ち着いてもらおう。
「あ、あのお兄様。私の用事は急ぎではないのでお客様が帰った後でも大丈夫ですよ」
「あ、セリーヌこいつは今日うちに泊まって行くことになっているからいいんだよ。それに後の話は父上がいないと話が進められないことだから」
「でも…お客様は何かお兄様にお話があるようですし…」
「あ?お前がアレクシの妹か?…お前、どこかで…あっ!!あの時の」
「…ご挨拶が遅くなりました。私、アレクシお兄様の妹のセリーヌです。セリーヌ・ド・ラ・ジファールと申します」
「あ、いや…」
「何だ?お前どこでセリーヌにあったんだ?」
「あ〜道でちょっとな…」
「ふ〜ん…その話は後でじっくり聞くとするよ…。で、セリーヌ私に用事だって?」
「はい!実はおじいさんからアレクシお兄様とお父様に渡す手紙を預かってきたんです」
「ほう…マクシム殿から?」
「なんだって?!もしかしてオーヴェルニュのことか?!」
私がお兄様に手紙を渡すとお客様が驚いた表情をした。
「うるさい。っていうか私の可愛い妹が挨拶をしたのに自分は挨拶もしないのか?まぁ、お前なんかをセリーヌに紹介する気はさらさらなかったけどな」
「っ!…ヴィクトル・ド・ラ・オーヴェールだ。いや、そんなことより内容を確認しろよ!!」
お兄様はふーとあきれたような目をして手紙を読み出した。すると表情がどんどん険しくなっていく。
「…これは、大分大掛かりだな…読んでみろ」
そう言って渡された手紙を奪い取るようにしてヴィクトルは目を通す。すると、顔色が一気に悪くなり、手紙を持ってきた私を睨みつけた。
「おいっ!!この手紙の内容は本当にマクシムのものなのか?!こんなことあり得るはずないっ!!!」
「え?」
「大体、お前みたいな子どもにこんな大事な手紙をマクシムが託すはずないだろ?!」
「え…でも、おじいさんが…」
「お前!!!構ってほしくて適当なこと言ってんだろ?!正直に言えよ!!!」
「おいっ!ヴィクトル落ち着け!!」
私は何がそんなにヴィクトルさんを怒らせたのかがわからず立ち尽くす。怖くてぎゅっと手を握っていると、頭上から声が聞こえた。
『何だ、この無礼なやつは…俺たちのセリーヌを脅すとはいい度胸してるな…』
部屋が一気に灼熱の炎に包まれたようで、息ができない。
そこにいたのは怒りをあらわにした火の精霊王のルビー様だった。




