Side キャンプ前日のヒューゴとリュカのあれこれ
私は今、怒りに震えている。こいつは一体、私の家族との貴重な団欒の時間をことごとく邪魔すれば気が済むのだ?!
「……おい、貴様はどれだけ私と家族の貴重な時間を邪魔すれば気がすむのだ?よほど私に氷ずけにされたいようだなリュカよ…?」
「いや〜、そんなに怒るなよ!我々が気兼ねなく遊びに来れるところは限られているんだよ!!」
確かに、王族が旅行に行くとなればそれなりの警備が必要となるし、安全性を確保しながら遠出するのは難しい。しかも、行き先にもきちんとした警備体制が求められる。我が、公爵家と王宮をつなぐ転移魔法で安全にここまで来ることができる。それゆえに、ここに遊びに来ることにしたのだろうが、わざわざセリーヌがせっかく企画したキャンプの日に来なくてもいいだろう?!
「………」
「おい、ヒューゴ目がすわっているぞ…?わ、悪かったとは思っているが息子達もセリーヌと遊べることを楽しみにしていたんだ。セリーヌが王都を離れてなかなか会うことができなくなったから、息子達も寂しがっていたんだ。そんな時、セリーヌがキャンプっていう野営をするって聞いて行きたいとお願いされたんだ」
「………」
「…あ〜…、ゴホン。急に来て迷惑をかけているとは分かっている。それについては申し訳なかった。来れるかどうか調整がギリギリになってしまったからな。今後は…なるべく……気をつけます…」
「………」
しゅんと肩を落としてリュカが小さくなっている。ここに来るには休暇前に机に山積みになっていた書類を片付けなければ来れなかっただろう。あれをそのままにして、我が公爵家に来たとしたら私に息の根を止められていただろうからな…。寝ずに仕事をして終わらせてきたのだろう…。リュカの目の下には休暇前にはなかった隈がくっきり出ている。しかもいつもの無駄なキラキラが減っている気がする…。よほど疲れているようだな…。
「…はぁ〜」
「ヒュ、ヒューゴ!あのな、みんなに土産を持ってきたんだ!」
そう言ってリュカが出したのは王族御用達の職人達や芸術家が作った装飾品や芸術品の数々だった。さすがは王族御用達なだけはある。一目で素晴らしいものだと分かる品々だし、貴重な品々だと思う。別に、そんな大それたものを持ってこなくてもいいのだが…。こいつなりにも気を遣っているのだろう…。
「あ、これはお前のために依頼したんだ!きっと気にいるぞ!!」
そう言っていそいそと取り出したのは布に包まれた絵画のようだった。布を丁寧に解いていくとそこに現れたのはーーーー
「!!!!!」
「どうだ?素晴らしいだろう?」
そこに現れたのは息が止まるほど美しい絵画だった。絵が光を放っているような美しさ、そこから清々しい風が駆け抜けてくるようで、その風に乗って花の香りも感じるようだった。
素晴らしい…
この世のものとは思えぬ美しさだ。心があらわれる…。
「どうやら、気に入ってくれたみたいだね」
「…これは、フィリベールの作品か?」
「おぉ!さすがだな!すぐに分かるとは!!」
「…こんなに素晴らしい作品を描くのは彼ぐらいだろう」
そう、ここに描かれていたのはこの間ピクニックに行った時のセリーヌの絵だった。花の冠を被り微笑むセリーヌはなんと可愛らしいことか…!!
「実は、こんな絵も描いてくれたんだ!見てくれ!」
「何?ーーーーっ!!!!これは!!!!!」
そこに描かれていたのは白いドレスを纏い、白い大きな羽のある美しい天使だった。美しい花々に囲まれ、慈愛に満ちた微笑みを浮かべている。そして、その天使はセリーヌだった。天使だと思っていたが実際に目にすると、本当にセリーヌは天使なのではないかと思ってしまう。確かに神の使いであり、他者とは比べようがないほど才能に溢れている。我が娘ながら、本当に特別な存在なのだと改めて思ってしまう。
「どうだ?今回はこれで許してくれるか?」
「…はぁ、……今回だけだぞ」
「!!あぁ!!今度からは気をつける!!!」
「はっ、どうだか…まぁ、そうなることを願っているがな」
「セリーヌにも迷惑をかけてしまったな…」
「…あの子はそんなこと気にしないだろう」
「ハハッ、そうだな。セリーヌは優しいからな。う〜ん、一緒に謝ってくれるか?」
「…はぁ…私は賄賂は受け取らない主義だが、今回は特別に助けてやる」
「!!!ありがとう!!!ヒューゴ!!!持つべきものは親友だな!!!」
「はっ、貴様と親友になった覚えはない」
「素直じゃないな〜」
こうして、王族一家のキャンプの参加が認められたのであった。




