Side ピクニック中のヒューゴとリュカのあれこれ
王子達とジファール家の子ども達が遊び出すのを確認して、大人達は椅子に座って子ども達の様子を見守りながら話し始めた。王妃と公爵夫人は椅子に座りながら景色の素晴らしさや子ども達の子育てについての話題で盛り上がっていたが、一方の陛下と公爵の間には吹雪のように冷たい風が吹いていた。
「おい、今日は家族水いらずで休暇を楽しむ予定だったのだが?」
ヒューゴの地を這うような声にリュカはヒヤリとしながらも会話を続けた。
「はははっ、君が珍しく休みを取ったって聞いたからね。せっかくだから一緒に参加させてもらおうと思ってね。王宮の騎士と公爵家の騎士がいれば危険はないし安心だろ?」
「はっ、うちの騎士達は優秀だから他の助けなど必要ないんだが?」
「あ〜そんなこと言うなよ〜。せっかくいいものを持ってきたんだからさ〜!」
こう言う事態になることは予測済みだったので、リュカはあるものを準備してきたのだ。いわゆるご機嫌取りの品物である。
「私が物につられるとでも思っているのか?」
「ま〜ま〜、とりあえずこれを見てくれよ!」
リュカが取り出したのはベルベットの箱で、中に10センチほどの透明な丸い水晶が入っている物だった。
「?なんだこれは…?」
思わず眉を顰めるヒューゴには気も止めずにリュカは自分の手に乗せて「再生」と言うと、水晶の中に映像が映し出され、音楽も一緒に聞こえてきたのだ!しかもその映像はこの前のお茶会でセリーヌが歌っている時の映像だったので、ヒューゴはリュカから水晶をぶん取って思わずガン見していた。
「この前言っていた、映像を記録する魔道具のサンプルだよ。まだまだ改良の必要性はあるけど結構良くできているだろう?」
「あぁ、…セリーヌが本当に歌っているようだな…」
「この前、言っていたお茶会に来てくれてお礼だから、持って帰って構わないよ」
「…いいのか?」
「あぁ、いいよ。魔塔の魔法使い達からもらったサンプルの水晶だから、好きに使ってくれて構わないぞ。大体、これ一つに24時間分は記録できるらしい。見るときは『再生』、記録するときは『録画』って言えば起動するから。動力は自分の魔力をこの水晶に少し込めればいいし、魔力のない人は魔石をエネルギーとすれば使うことができるから」
ヒューゴはすっかり水晶に夢中で嬉しそうに眺めている。
実ば、王宮でのお茶会に参加するつもりがなかったヒューゴだったのだが、新しく映像を記録できる魔道具が開発されたから、それを使ってセリーヌの歌っている姿を記録してプレゼントすると言われて参加することに決めたという経緯があった。
本来なら、他の男達がいる所に可愛いセリーヌを出したくないのだが、どうしても新しくできた魔道具が欲しかった。これがあればいつでも可愛いセリーヌの姿を家族みんなで見ることができる!!なので王宮でのお茶会ではセリーヌの周りを固めて他の男に接触させないようにしたが、結局は思うようにはいかなかったが…。その後、セリーヌの可愛らしさと才能に惚れ込み縁談の話が出たがもちろん捻り潰した。
「商品化には、まだまだコスト面や性能の向上など課題はあるが徐々に改善して、商品化していく予定なんだ。何かいいアイディアが出たら教えてくれ」
「分かった。何かあれば連絡する」
そう言って水晶を箱に戻し、そそくさとしまってから、本題を口にした。
「で、今日来たのはこれを渡すためじゃないだろ?ライアンのことについてか?」
ヒューゴの核心を持った口調に、思わず苦笑いしてしまう。ヒューゴにはどんなに取り繕ってもバレてしまうのは、幼い頃から変わらない。いつもは本心を覆い隠す仮面をつけているのだが、ヒューゴには昔から通用しない。
「そうなんだ…セリーヌとのやりとりをしたことで外に出てみようと思うようになったんだ。…あの子はエルサに似ているから王族の特徴と言われる金の髪と瞳を持っていない。だから王族として相応しくないと陰口を言っていた貴族の会話を聞いてしまったようでね。落ち込んで家族以外の誰とも会わなかったんだ。でもセリーヌからの手紙と折り紙のプレゼントを通してもう一度他者と関わりたいと思えたようなんだ。」
「…あの子は自然と相手の心の中に入って癒してくれるからな」
「だから、あの子に会わせたくて無理やりやってきたって訳なんだ。すまないな、ヒューゴ」
「はぁ〜…今に始まったことじゃないだろ?今更お前が何をしても驚かん。…しかし、こちらも一応心の準備が必要だ。今日、ここに到着して人が多くいるはずなのに人が誰もいなくて何かあったのかと警戒してしまっただろ!紛らわしいことをするな!!」
「はははっ、すまんすまん。今後は気をつけるから許してくれ」
その後、大人達は会話をしながらお茶を飲んだり本を読んだりして久しぶりの休日を満喫したのでした。




