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最近、街にプレイヤーという人が来ます。  作者: 月乃 そうま


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ブレイク


 魔王による統制を欠いた出来損ないの魔物たちは、無秩序に共食いを始める。

 魔王候補プレイヤーたちは、急に現れた『精霊・那乃の制御ミニゲーム』に右往左往し、ある者は討たれ、また、ある者は逃れた。


 NPCで残るのはルインのみ。

 後は七十と少しのプレイヤーたちのみだ。

 残念ながら、この時点でルインと面識のあるプレイヤーで生き残っていた者はいない。


 魔王ブレイクの死。

 それと同時に施設は防衛モードに移行して、内部への扉は閉ざされ誰も先へと進めなくなってしまった。


 プレイヤーたちも混乱の最中にあった。

 周囲の魔物が共食いを始めたが、それはプレイヤーたちが狙われないという意味ではなかったからだ。


 プレイヤーたちは必死に戦った。

 結果的に、研究棟の中で立っている者がプレイヤー四十六名だけになった時、ようやく彼らは勝利を確信した。


 勝鬨が上がる。

 お互いの健闘を称え合い、生還を喜びあった。


 そう、その場にはルインもいなかったのである。


 魔王ブレイクの死に場所。

 そこには黄金の心臓とそれに突き刺さるボロボロの金器の短剣だけが残されていた。


 プレイヤーの一人がそれを見つけ、魔王討伐の証として持ち帰った。




 ブレイクが目覚めた時、今、世界が重大な岐路に立たされていることを理解した。


 それは精霊によって理解させられ(インストールされ)た、この世の(ことわり)だった。


 前文明である科学文明は、魔法文明を異端として扱い、限界まで発達する寸前だった。

 生命を創り、創られた生命は人間のために働き、人々は夢想のみで生きる世界。

 神に等しい科学技術の発達は、魔法文明を消滅させ、人々は神へと昇華するかに見えた。


 しかし、古き神々は魔法文明消滅の是否を過去世に生きる人々に問うことにしたのだ。


 科学文明と魔法文明、ふたつの異なる論理体系による決戦が行われた。


 結果は魔法文明の勝利に終わった。

 天秤は次第に魔法文明へと傾いていき、今では魔法文明が科学文明を駆逐せんとする所まで来ている。


 魔法文明は魂と神霊を操り、物理法則を捻じ曲げ、人々は神に等しい力を得ようかという所まで来ている。


 だが、またもや古き神々は科学文明消滅の是否を過去世の人々に問うことにしたのだ。


 神々による審判。


 それこそがふたつの文明の戦争(ティタノマキア)

 ワールドオーダープログラム『マキア』である。


 ブレイクには分からなかった。

 魔法文明と科学文明、ふたつの内、どちらが生き残るのが正解なのか。

 ただ、自分が科学文明の側に取り込まれたのだろうという漠然とした感覚だけがあった。

 よく分からないままに、争いに巻き込まれたが、縋るものを探していたブレイクは、そのまま尖兵として闘争に身を置くことに決めた。


 実際、どちらでも良かったのだ。

 失った腕が治り、もう一度、戦えるのなら。


 チャンスがあった。だから、縋った。


 失いたくなかっただけだ。

 劣等感にまみれて、生きることが認められなかっただけだ。


 死にかけの科学文明を甦らせる勇者、それを世間では魔王と呼ぶ。

 勝てば魔王は勇者と呼ばれる。


 だから、戦った。


 魔王ブレイクは眼を開けた。


 赤色灯が回る部屋の中にいるのだと、ブレイクは理解した。


───緊急事態。全職員は安全のために退避して下さい───


 声はそう導いているのだった。




 なるほど、とルインは納得した。

 全てはルインが【模倣(コピー)】したブレイクが教えてくれた。


 今、目の前には宗旨替えによって、魔物育成用の培養槽からリスポーンする魔王候補プレイヤーたちがいる。


 ルインがブレイクを討った瞬間、ルインは一時的にだが、自身がブレイクであると錯覚した。

 どうも、ルインは『海人あまびと』としては欠陥を抱えているらしい。

 【模倣(コピー)】の衝撃に耐え切れず、一時的に自分を見失ってしまうようだった。


 ブレイクを倒した瞬間、自身をブレイクと錯覚したルインは、緊急退避用の扉へと飛び込んだ。

 研究棟には、そういうギミックが備わっていたのだ。


 そうして、封印の間とは別方向にある施設地下へと逃げ込んだ。

 ここは、魔王候補たちの待機場所になっているようだった。


 ルインの記憶の中には、ブレイクの記憶が焼き付いている。

 しかし、今のルインは、一時的なショックから覚醒して、ルインだった。


 だが、ルインはブレイクの記憶を見たことで、迷ってしまう。

 『海人あまびと』として、ルインとして、ブレイクとしての記憶を持つルインもまた、何が正しいのか分からずにいた。


 いきなり、ふたつの文明の争いが勃発したと言われても、どちらに与するべきかなど、決められるものではない。


 そもそも、この世界の命運を決める役割は、おそらくこの世界の人間にはないのだ。

 行き着いてしまった時代の自分たちではなく、記憶が確かならば、過去世の人々……おそらくは『神兵しんへい』たちによって決められる。


 今ならば、プレイヤーたちが初めての宗旨(リスポーン地点)替えで戸惑っている状態の今ならば、そっとこの場を去ることができる。


 それを感じたルインは、そっとその場を後にするのだった。



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