表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最近、街にプレイヤーという人が来ます。  作者: 月乃 そうま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/91

ルイン2


 リスポーンしたアワツキたちが、急いで戻って見たのは、炎に包まれ、縮こまるようにして魔物に襲われる巨大な狐の姿だった。


 身体から流れ出る血が、魔法の炎に変換されているように見える。


「これが……ルインさん……」


 パーティーチャットを使って、キマイラキラーズから状況を聞いていたとはいえ、ルインの姿を見れば、絶句するしかなかった。


 特にアワツキの場合、魔法の師匠であるノルナニアから『海人あまびと』の特性、神に匹敵する力を持つと聞いていただけに、ただ炎で身を守るだけで、魔物たちの攻撃を耐えることしかしないルインを前に、もどかしさすら感じていた。


「何故、戦わないんだ?」


 ドウマンが呟く。


「あ、仲間殺し……じゃないかな?」


「今、ルインの周りに仲間なんていないぞ。

 プレイヤーだって分断されていて近づけないじゃないか」


「あ、そっか……」


 プッツンプリンがキマイラキラーズからの新しい情報を当てはめようとするが、ドウマンの指摘に、もやもやしたものを抱えながら、持論を引っ込めた。


「いや、そういうことじゃないか?

 これは想像になるが……ルインのトラウマは今の姿で仲間を殺したことにあるんじゃないか?

 アジ・ダハーカには、四足の獣にトラウマがあるくせに、意気揚々と向かっていったから、何かおかしいと思っていたんだ。

 だが、今の姿がトラウマなんだとしたら、納得が行く」


 豆腐メンタルは正確に状況から情報を読み取った。


「……なるほど、筋は通るか」


 ドウマンは納得するが、問題はそれを理解した上でどう動くべきかということだった。

 リスポーンしてきた彼らが考えている中、真っ先に動いたのはアワツキだった。


「ルインさん!

 その姿が嫌なら戻ってくださいっ!

 貴方なら、海人なら、できるはずですっ!」


 炎の中、チラリと金毛白面八尾の狐の視線が動いたように見えた。


 アワツキの言葉によって、ルインは意識を引っ張られるように感じた。

 体の痛みと、自身の内面を見つめ続けて、はち切れそうになっている状態の中で、ソレはある種のトリガーだったのだ。


 ルインはようやく自己肯定ができた。

 赦しを得たような気がしたのだ。


 ルインを取り巻く炎が一際、大きくなって、魔物の群れを焼くと、一気に小さくなっていく。

 それは身体自体が縮んでいくからだ。


 気がつけば、ルインは元のルインの姿に戻っていた。

 ただの模倣品でありながら、人の姿が一番ルインにとって、馴染み深い姿なのだ。


 半身がエビで、半身が黒く染まった人である『海人あまびと』ではなく、巨大な四足の獣である大いなるモノ『金毛白面八尾の狐』でもなく、ルインが選ぶのは、やはり、ルインという人の姿だった。


「そんなので戻るのか……」


 ドウマンは驚くが、罪悪感に塗れたルインにとっては、大事なことだった。


 ルインは無手のまま、魔物を拳で打ち砕く。

 かつて、ルインを呼び戻した女性の技だ。

 【最強拳】

 しかし、ルインは使ってから後悔する。

 彼女の技は、我慢でできている。

 ただのパンチを鍛えに鍛えた結果、硬い物を貫くほどの威力は我慢して打つ。

 つまり、技ではないのだ。根性の問題なのだ。


「いつつっ……諸刃すぎるだろフィニ……」


 ルインはもういない仲間に向かって呟く。

 模倣が得意な『海人』であるルインは、模倣することでその人を取り込む。

 死んだ仲間たちも、確かにルインの内で生きているのだ。

 ようやく、そう感じることができるようになったのだ。


「仕方ない。使うか……」


 ルインは腰の金器を抜くのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ