研究棟7
「師匠、新しい武器です!」
ハイロがインベントリから双剣を取り出す。
「ア○パ○マ○みたいに言うな!」
思わず豆腐メンタルがツッコミを入れる。
だが、それくらいプレイヤーたちはイケイケだった。
封印を施し、ヌマクを助け、ようやく本戦に関われるところまで来たのだ。
しかも、他プレイヤーよりも近い位置にリスポーンポイントを構えるというアドバンテージもある。
存分にゾンビアタックをやってやる、という気概に溢れていた。
「よーし、みんな!
死ぬ前提だけど、死なずにアジ・ダハーカまで辿り着くぞ!」
「「「おう!」」」
消極的だが積極的なカービンの掛け声に、全員が笑顔で応えて、ひとかたまりになって突撃を開始する。
レベルキャップまで成長したプレイヤーは、さすがに強い。
未だコンボを使えないプレイヤーたちであるが、それはパーティー単位で動くことで充分にフォローができる。
「【海原割り】!」
「【円刃剣】!」
「【啄木鳥突き】!」
ただの技ではなく、気力やMPを消費する大技を躊躇なく放つ。
魔物たちは、新しい新鮮な獲物に沸き立つが、次々に撃破されていく。
しかし、魔物たちは千単位で蠢いているのだ。
張り切って突っ込んだプレイヤーたちだが、次第に数に圧倒されていく。
「私がやります!」
アワツキが短杖を正面に向ける。
「ダメだ! アワツキさんの魔法はアジ・ダハーカに近づくまで残してくれ!」
カービンが魔物に追い込まれながらも、否定する。
「片腕の次は、どこを吹っ飛ばすんだ!
肝心なところまで取っとけ!」
ドウマンもアワツキがただの魔物を相手に魔法を使うことを否定する。
「俺が道を開く。
アンタたちはアジ・ダハーカに一発、入れてやれ! 【山颪】!」
突風のようにルインが飛んで来た。
左右の双剣から繰り出される斬りつけは、一見ハチャメチャにも見えるが、それは複雑ながら身体の動線に逆らうことなく繰り出される攻撃で、理にかなっている。
一瞬でアジ・ダハーカまでの道ができた。
「は、走れ!」
カービンの号令と共に全員が走り出す。
死出の走りだ。
最初に死んだのは遊撃のプッツンプリンだ。
アジ・ダハーカを眼前に捉えた時、後ろから迫る魔物たちを引きつけるために一人、飛び出して死んだ。
次にアジ・ダハーカの電撃を一人で受け止めて、カービンが死んだ。
「アワツキ! やってくれ!」
豆腐メンタルとハイロが、アワツキの前後を守って死んだ。
「【命・鬼火】!」
アワツキの全身が炎に包まれ、飛んだ。
その色は赤から青、そして白い光を放って、小さな玉になって飛んだ。
熱とエネルギーが凝縮して、白い人魂の姿で飛んだ。
人魂はアジ・ダハーカの首の付け根辺りに当たって、首から上を全て吹き飛ばした。
「ちぃっ! 俺の一の下僕を!」
一瞬の出来事だった。
巨大なアジ・ダハーカの首は魔物を生む暇もなく蒸発した。
残された身体は、ボコボコと肉が盛り上がり、再生しようとしているが時間が掛かりそうだった。
「やったな、アワツキさん!」
ザビーは誰ともなく叫ぶが、ソレは虚しく空間に溶けていく。
「自爆技かよ……」
言ってドウマンは、ふん、と鼻を鳴らした。
「コーリン、今の内にヤツを!」
紅玉の言葉に、紅玉を介抱していた青玉が置いていたデスサイズを拾う。
残ったプレイヤー、ザビーとドウマンもアジ・ダハーカに向かう。
「仕方ねえな」
ブレイクは【龍砲】を黄水晶に向けて放つと、踵を返してアジ・ダハーカへと向かう。
「邪魔だ!」
ブレイクの肩の触手がプレイヤーに向けられた。
ザビーもドウマンもその触手に食われて終わった。
当然、触手は青玉にも向けられる。
青玉は触手をデスサイズで切り裂いた。
だが、おかげでアジ・ダハーカへは攻撃を向けられなくなってしまった。
ブレイクはそうやって蛇頭の触手で牽制をかけつつ、跳んだ。
盛り上がる肉の中に足を突っ込んだ。
金の粒子は、ブレイクをかなりの巨体にしている。
アジ・ダハーカとブレイクがくっついた。
奇妙な合成生物になった。
鱗のあるケンタウロスで首から上はヒュドラという姿だ。
「くっ……醜悪な……」
【龍砲】をなんとか避けた黄水晶がそれを見て悪態をつく。
ブレイクが暴れ始める。
蛇頭の触手は口から瘴気毒を吐き、腕は【龍砲】と【龍爪】を振り回し、麒麟の胴体部分からは無数の瞳から電撃を放つ。
四足の脚が大きさに見合わぬ速度で走り回り、傷をつければ魔物を生む。
「手がつけられないぞ!」
どうにか回復した紅玉は、その暴れぶりに逃げ回るしかできない。
ルインが魔物を倒すより、ブレイクが走り回って、潰してしまう魔物の方が数が多い。
「はははっ、さあ、かかって来いよ、人間ども!
そのためにここまで来たんだろうが!」
ブレイクは心まで魔王になったようだった。




