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最近、街にプレイヤーという人が来ます。  作者: 月乃 そうま


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鎮めの森、最奥2


「魔物が出なくなったな……」


 ハイロがクロスボウを構えたまま慎重に辺りを窺う。


「レイド戦が始まったんじゃないのか?」


 カービンは脱力しながら言った。

 これがゲームだと再認識したことで、余計な力が抜けたようだ。


「間に合わなかったか……」


 ドウマンは残念そうに言う。


「ん? なんで残念そうなんだ?」


 ザビーが聞いた。


「どうせなら、人数多い方のレイドに参加した方が、勝率上がるだろ?」


「なるほど、ドウマンの勘違いが分かったよ。

 このゲームは、レイド戦だから別マップなんて優しい仕様はないんだ。

 何度も挑めるレイド戦なんてものはないし、クエストだって一度きりの機会を逃がしたら、終わり。

 だから、今頃はレイド戦の真っ最中のはずだよ」


 ザビーの説明にドウマンは頭を捻る。


「おや? でも、どこかの村の村長が病気で、それを治すクエストは失敗しまくっても、何度も同じものが出たとか、どこかの板で読んだぞ?」


「村長しかまともに領主と交渉できないような村なら、皆が同じことを願う。

 でなければ、村自体が食い物にされて滅ぶこともある。

 それだけ、その村の長は重要人物だったということだろうな……」


 干し肉を齧り、水袋から水を飲みながら、ルインは言った。


「ああ、そういうことか!

 なら、今が狙い目ってことだよな」


 ドウマンは、ポンと手を打った。


「その可能性はありますけど、しっかり作戦を練らないと……ただでさえ、普通には倒せない可能性が高い相手ですし、私たちの目的はあくまでも殲滅ではなく、再封印ですからね」


 アワツキがドウマンを諌めるのに、ルインはひとつ頷いて言う。


「ああ、これからの動きの再確認だ。

 まず、中に入ったら、大きな広間がある。

 そこにアジ・ダハーカとその眷属たちが待ち構えているはずだ」


「どこかに地下の封印の間に続く扉があるって話だったよな?」


 豆腐メンタルが引き継ぐ。


「広間には古代文明の鉄の遺跡があって、その中のどれかが扉になってるって話だよね」


 さらにプッツンプリンが話に乗ってくる。


「それがどれかは覚えてない、でしたよね師匠」


 ハイロが念押しのようにルインに聞く。


「ああ……前に俺が再封印した時は辺り一面がぐちゃぐちゃに抉られてて、階段も剥き出しだった。

 だが、古代文明の遺跡はどれだけ壊しても、ほんの数ヶ月で元に戻る……特に封印が必要な場所であれば、特にその傾向が高い」


「精霊・那乃ナノ……」


 アワツキが呟いた。


「ああ、おそらくは……」


 ルインが頷くが、ここでまたもや豆腐メンタルの悪い癖が出たようで、しきりに首を捻りながら考え込む。


「金の手、だったか?

 聞いてると精霊というより、TMMNって感じなんだよな……」


「何それ?」


 豆腐メンタルの扱いに慣れているプッツンプリンが、これは喋らせないと終わらないと判断したのか、代表して聞くことにしたようだ。


「今、各国が共同で開発しているテレパス・マルチ・マテリアル・ナノマシン。

 略してTMMN。

 精神感応型、多層質物資形成、極小マシンで、まあプラスチックから金属類まで多種多様な性質を持つ物体に自動的に変換できる夢のナノマシンだ。

 まあ、理論上は可能とか言われてるが、未だに研究段階で、眉唾って言われてる。

 やっぱりこのゲームの開発にそこら辺に詳しい奴が一枚、噛んでそうなんだよな……」


「へー、すごーい……」


 それはびっくりするほど棒読みでプッツンプリンの口から流れた。


「まあ、霧状のナノマシンを散布して特定の形状、同一の性質の物品を作る技術ってのは、数年前から出来上がってて、それを応用した技術に……」


 豆腐メンタルのオタク魂が無限に言葉を吐き出した辺りで、プッツンプリンは視線を皆に向けて、行こう、と顎で示した。


「うん、うん、なるほどねー、すごいねー、はー、はー、ほー……」


「つまり、TMMNというよりも、壁が直るだけなら現行の技術でも可能で……」


 話している内に、洞窟の入口がすぐそこまで迫ってきた。


「シッ……そろそろ、おしゃべりタイムは終わりだよ、豆腐さん」


「ん、お、おう……そうか……」


 まだ話し足りないという風情の豆腐メンタルだったが、さすがにそこは空気を読んだようで、黙った。

 他のメンバーがそっと胸を撫で下ろしたのは気づかなかったらしい。




 激しい剣戟の音、魔物の叫び、そういった喧騒が聞こえて来る。


「行こう……」


 両手に鉤爪を装備したルインが声掛けと同時に突入していく。


「うっし、俺たちはルインみたいに一人で何でもできる訳じゃない。

 全員でフォローしながら進むぞ!」


 実年齢は関係なく、レベルと経験からカービンがリーダーに適任と考えられていた。


 タンク役は片手剣に盾を装備したカービンと、クレイモアという大剣を使う豆腐メンタル。

 前衛のダメージディーラーは片手斧のカマ・ドウマン。

 中衛には槍を構えたザビーと、遊撃として片刃曲刀を閃かせるプッツンプリン。

 後衛は短杖を携えた魔法使いアワツキとクロスボウを使うハイロという布陣で、プレイヤーたちが後に続く。


 洞窟に入って少しのところで、ルインが立ち竦んでいた。


「何やってんだ!

 バカかあんたはっ!」


 カービンがルインの肩を掴んで引き寄せる。

 魔物たちは未だ初めての獲物を嬲るのに夢中で、ルインに気づかなかったために、たまたま助かったに過ぎない。


 魔物の群れと犠牲者たちの奥、巨大な麒麟のシルエットが悠然と四つの足で立っていた。

 小さな四つの人影が、その麒麟、アジ・ダハーカを攻撃しているのが見えるが、まるで意に介してないとでもいうように、アジ・ダハーカは時折、身体を震わせるだけだ。


「あちゃー、アレは目に入れるなって言うのは酷だね……」


 プッツンプリンが処置なしと肩を竦めたのだった。


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