エーガムの猟師小屋前
猟師と冒険者の違い。
それは冒険者が魔物を倒すために魔物と戦うのに対して、猟師は素材を得るために魔物を倒すということだ。
冒険者は戦った後に売れそうな素材を物色するし、強くなってより実入りのいい依頼を得るために戦う。
猟師は違う。彼らは戦う気など、さらさらなく、如何に素材を良い状態で残すかに気を使い、勝てない相手に挑むような馬鹿はしない。
罠も、遠距離攻撃も、魔物の素材を取るためだ。
ただし、事故で戦うことはある。
そんな時のために、良い薬を用意しておくのが常だし、それら良い薬は自分で用意するのが基本だ。
金を出せば猟師から自作の薬を分けてもらうことは可能だ。
プレイヤーにどこまでの効き目があるかは分からないが、望まれた以上、そこに案内するのがルインの仕事である。
西の山にほど近い、ルナリード西区画は山からの物資を採るために、門ではなく柵で覆われている。
城壁でないため、西側は防備が薄いと思われ、あまり人気のない地域だ。
だが、実際は西の山自体が天然の防壁になっているからこそ、柵で覆うだけにしているのが実状だ。
人気がない地域は、スラムになりやすい。
実際、西側の下半分はスラムだし、上半分は低所得者層の家が立ち並んでいる。
家々は狭く、道幅は大通り以外はかなり細い上に入り組んでいる。
「猟師や木こりはここら辺に住んでることが多い。
あと魚を獲る、漁師や荷運びもここら辺だな」
ルインが説明しながら歩く。
「なるほど、力仕事に就く労働者が多い地域なんだな……レベルも高そうだ」
ホライゾンの呟きにルインは笑って答える。
「ははっ、俺たちNPCにレベルなんてものはないよ。
それがあるのは『魔術書』を持つプレイヤーさんだけだろうな。
他で得た経験を自分で好きな技能に振り分けられるんだろう?
まあ、それも善し悪しだから、羨ましいとは思わないが、面白い特性だよな」
「随分と詳しいんだな」
「まあ、プレイヤーさんたちがこの世界に来るようになって、俺も勉強させてもらったからな」
「そうなのか……」
「ああ、知り合いのプレイヤーさんが色々と教えてくれたんだ」
「ふうん。それなら、僕からもひとつ教えられることがあるな……」
細道に入って、人の気配がなくなった辺りでホライゾンはそんなことを言った。
ルインはそれに非常に興味を示す。
なにしろ、未だプレイヤーについては知らないことが沢山ある。
「へえ、良ければぜひ、聞かせてもらいたいな」
「【鑑定〈魔物〉】って技能がある。
これを使うと魔物の強さがレベルで見えるんだ。
知ってたかな?」
「いや、知らなかったな。
そんな技能もあるのか……どの程度のことが分かるんだ?」
「僕はまだ技能のレベルが低いから、分かることは少ないけれどね。
例えば、どれくらい素早く動くのか、とか、どれくらい力が強いのか、なんてことが分かるようになるんだ」
「それは戦う時の良い指針になりそうだな」
「うん。それからこの【鑑定〈魔物〉】って技能は派生技能もあるんだ。
使っていくと、別の派生技能が解放される」
「そりゃ便利だな!」
「ああ、特定の条件を満たさないといけないらしいけれど、便利だよね」
「うん?
その特定の条件ってのは?」
「ああ、それは簡単。
こうやって、NPCを殺しまくればいいんだよ」
ホライゾンが言った瞬間、ルインは腹に熱いモノを感じたのだった。




