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最近、街にプレイヤーという人が来ます。  作者: 月乃 そうま


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エサム廃坑5


 先程から豆腐メンタルはブツブツと独り言を呟いては、でもとか、だけどなどと否定を繰り返していた。


「なあ、その……大丈夫なのか?」


 帰り道、一人の世界に閉じこもってしまった豆腐メンタルを心配して、ルインはそっとプッツンプリンに聞いた。

 プッツンプリンは、力なく「ハハハ……」と笑いながらも説明する。


「ちょっと豆腐さんは細かいところがあるのよ。

 このゲームに参加したのも、そういうのが嫌で、人と関わることで性格を変えたいからって言ってたけど……まあ、三つ子の魂百までって言うしねぇ……」


「なるほど、神兵しんへいたちは大抵、表の顔と裏の顔があるものだが、豆腐メンタルさんの裏の顔ってことなのかもな……」


神兵しんへいってプレイヤーのことだっけ。

 正直、そんな奉られるもんでもない気がするけどね」


「そうでもない。神ってのは人を救う柔和な笑顔と怒りで荒ぶり全てを壊してしまう顔のふたつがある。

 だから、お前たちは神兵しんへいで間違いないと思うぞ」


「ああ、なるほど、それなら納得かも。

 まあ、それ言ったら、人間なんてみんなそうとも言えちゃうけどね」


「ああ……たしかにな……」


 ルインはプッツンプリンの口にする真理に、やけに納得してしまう。

 ふと、記憶の扉が開いて、龍牙者、最強と呼ばれたフィニの顔が浮かぶ。

 それは悲しくも挑戦的な表情をしていて、全身傷だらけ、血塗れな姿だ。


 人の持つふたつの顔。

 最強でありながら、挑戦者であり続けたフィニの顔を懐かしく思う。


 会いたい、と思うが、もう死んでいる。


 何故、自分だけが残ってしまったのか……。


 思い出そうとしても思い出せない記憶の空白に、ルインは無駄だと首を振った。


「……やっぱり、これだけ作り込まれた世界で、現実そっくりな兵器が、そこだけファンタジーなんておかしいと思ったんだ!」


 プレイヤーたちが使う情報板を『魔術書』で眺めていた豆腐メンタルがいきなり大きな声を出した。


「なに? 急に大きな声なんて出して……」


「プリンさん、見てくれ。

 現実と同じ物がこの世界には溢れているんだ!」


「そりゃ、人間が作ってるんだもん。

 同じような物があっても不思議はないよ」


「違うんだ。これ、他のプレイヤーが撮った視線カメラの写真なんだけど……」


「もう、ちゃんと帰るまでが冒険なのに……」


 プッツンプリンは文句を言いながらも、ルインに視線でいいか、と聞いてくる。

 ルインは周囲を見回して、確認して頷く。


「今のところは大丈夫そうだ。

 少し休憩にしよう。

 見せていいものなら、俺にも見せて欲しいものだがな」


「いいよ、いいよ、私が見せたげる」


 プッツンプリンが安請け合いした。

 ルインが最初の歩哨に立った。

 豆腐メンタルがプッツンプリンに『魔術書』のページを見せながら説明する。


「これ、ダンジョンって言われているけど、罠として置いてあるのは、自動照準のマシンガントラップや対人地雷なんだ。

 それも現実にあるタイプのもので、音声入力式の自動扉や使われていないが最新式の魚雷が錆びついて置かれてる写真もある」


「ふーん、運営会社が随分、勉強したんだねえ……」


「う……そうかもしれないけど……でも、このゲーム世界が実は現実世界の遥か未来なのかもしれないって話があってさ……」


「それって、オカルト?」


「不思議に思わないか?

 いくら全身体感型VRだとしても、現行の技術でここまでの再現をするのはオーバーテクノロジーだろ」


「うーん、競合他社が追いついてないだけで、全く再現不可能ってことはないんじゃない?

 たしか、人が夢を見るプロセスを応用して、全身体感型VRって作られている訳だし」


「いや、味覚とか臭覚の再現は外部刺激に邪魔されるから再現不可能って言われてる。

 まあ、専用マスクトリガーとか使って擬似的に再現してるソフトはあるけど、このゲームはそういう周辺機器は使ってないだろ」


「そこをクリアしたから、このゲームの期待値がマックスで、このベータテストが異常な倍率になってるんじゃん」


「……そ、そうだけどさ……」


「ま、ま、オカルト地味たことが言われてるのは私も知ってるけど、正直、技術がここまで上り詰めたって方が私は納得できるかな。

 最低限、アルファテストをクリアしたからベータテストに入ってる訳でしょ。

 まあ、この段階でバグらしいバグが見られないのはオカルトだと思うけどね」


 そう言って、プッツンプリンはケラケラ笑った。

 一笑にふされた豆腐メンタルは、まだ何か言いたそうにしていたが、これ以上は無駄だと悟ったのか押し黙ってしまう。


 そうして、プッツンプリンが歩哨に立ち、ルインが写真を見せてもらう番になった。

 ルインからすれば『魔術書』をじっくり眺めるチャンスでもある。

 そうは言っても、文字が読めないので、写真だけだが、ルインはすぐにあることに気づく。


「ここは、キマイラの禁足地の先にある棄てられた漁村近くの遺跡か?」


「知ってるのか?」


「ああ、この扉は封印されていて開かなかったはずだが……」


 音声入力式の自動扉を指してルインが言った。


「この扉の奥に、この魚雷……ええと爆発する、水中を進む……なんて説明したらいいか分からないけど、爆弾があったらしい」


「爆発の弾か……そんな危険なものが眠っていたのか……」


「まあ、腐食が進んで、もう推進力はないみたいだけどな」


「そうか……こっちは罠だな」


 今度はルインはマシンガントラップを指さした。


「分かるのか?」


「ああ、古いダンジョンには付き物だと言ってもいいい」


「じゃあ他の場所にもあるのか」


「あるな」


「それなら古いダンジョンを訪ねて行けば、こういう開いていない扉があったりするのか」


「ああ、そういう場所は世界中にまだ幾つも残されていると聞く」


 豆腐メンタルは喜んだ。オカルト好きでミリタリーオタクでもある彼は、それらを生で見られるかもしれないと、テンションが上がったようだった。



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