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最近、街にプレイヤーという人が来ます。  作者: 月乃 そうま


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エサム廃坑4


 ルインたちは当初の予定通り、溶岩の川の流れる場所から離れ、決戦の場に設定した広場へとヒフキヒクイを誘導した。


 ヒフキヒクイが溶岩を吸収できなくなったからと言って、それは決して油断していいものではなかった。

 なにしろ、腹の中には未だたっぷりの溶岩が詰め込まれ、灼熱の排気と一門残った短肢砲、岩を砕く尻尾とヒフキヒクイの攻撃手段は充分に残されているからだ。


 敵を認識したヒフキヒクイの、逆関節で動く大きな脚が三人を踏み潰そうと動き回る。

 関節部分が生身のため、自由度が高く、ギリギリで避けようとすると危険なため、大きく動くしかない。

 大きく動けば、巨大な口に見える排気口から出る熱波に焼かれる危険があるため、自ずと逃げる方向が限られる。

 すると、今度は溶岩吸入口になっている尻尾が襲って来る。

 距離が開くと、短肢砲のいい的だ。


 三人は隙を窺いながら、逃げ惑うしかなかった。


 ルインとプッツンプリンは身軽さを武器に、ヒフキヒクイの関節部分をちまちまと斬りつけるが、避ける方に意識の大半を割かなければならないため、致命打にならない。


「くそ、くそ、くそ!

 デカい図体で、ちょこまか動きやがって!」


 先程から豆腐メンタルは大剣を背負った状態で、小石を拾ってはヒフキヒクイの排気口を狙って投げるという動作を繰り返している。

 しかし、排気口の正面に出れば熱波に焼かれてしまう。

 口の動きを予想しながら脇から投げるしかない。


 大剣使いはその膂力に物を言わせて、大ダメージを出すのが本業であるのに、大剣をしまい込んで、ちまちまと小石を投げるしかできない自分に、ストレスを感じているようだった。

 だが、そうでもしないと、大剣を構えたままではヒフキヒクイにすぐ捕まってしまうだろう。


 そして、辛いながらも、豆腐メンタルは名前とは裏腹の粘り強さを見せて、ついに排気口に小石を投げ入れることに成功する。


「入った!」


 カラン、カランと音がするが、それだけだった。


「マジかよ、フィルターでもついてんのか!?」


「普通、ついてるでしょ!」


 プッツンプリンが怒ったように言う。


「その小石を投げるのは、何か意味があるのか?」


 ルインは豆腐メンタルの狙いが分からず、聞いた。


「え? 意味が分からないまま、俺って放置されてたの!?」


 豆腐メンタルがショックを受けていた。


「すまん」


 ルインはとりあえず謝った。


「……ああ、奴は腹の中に熱々の溶岩が入ってる。

 ついでに身体の各部には熱に弱いはずの生身の部分がある。

 つまり、熱を定期的に逃がさないと、腹の中の溶岩で焼けちまう部分があるってことだ。

 その熱を攻撃にも利用しているのが、厄介だが、あの口から吐いてるのが、その熱な訳だ。

 俺が狙っているのは、アイツの口を閉じさせて、熱を逃がせないようにしようってことなんだが……小石のひとつ、ふたつじゃ、意味がなさそうだな……残念ながら……」


 三人で逃げ回りながらの会話である。

 その間もヒフキヒクイの熱波に踏みつけ、尻尾に短肢砲はフル稼働している。


「なるほど、そういう倒し方もあるのか」


 ルインは関心したように頷いた。


「なら、こういうのはどうだ。

 【武装投擲(ストライクスロー)】」


 ルインは気を込めた剣を天井に打ち込む。

 その一撃は天然洞窟の天井の脆い一点に正確に打ち込まれる。


 ビキビキと音を立てて、今にも崩落しそうだ。


 ルインは今まで背負うだけで使っていなかった盾を背中から取り出すと、それを構えた。

 腕に取りつけるような小さなものではなく、手と腕で支える中型の盾だ。

 助けてくれる協力者がどういうタイプか分からないため、盾役もできるように持ってきていた装備のひとつだ。


 ルインは盾を構えてヒフキヒクイの真下に潜り込む。


「【盾撃シールドバッシュ】!」


 踏みつけを避けるように盾を構えて、ティラノサウルスの顎部分、排気口の下を強くかち上げた。


「逃げろ!」


 ルインが叫ぶ。

 タイミングを計った通りに、排気口が上を向いた瞬間、崩落が始まった。


 慌てて逃げた豆腐メンタルとプッツンプリンは怒りの言葉を吐いた。


「ちょっと、説明してからやってよ!」


「あぶねえ、巻き込まれるとこだったじゃねえか!」


 もうもうと立ち篭める煙の中、文句をぶつけられるべきルインがいないことに、文句を言ってから二人は気づく。


「え……ルインさん……」


「おい、まさか、嘘だろ……」


 煙がゆっくりと晴れていく。

 思った以上に崩落は広範囲だったようで、落ちてきた岩盤にヒフキヒクイは埋もれてしまっていた。


「そんな……」


「ルイーン!」


 シン、と静かな時が流れる。


 ガラガラ……と石が動く。


「はっ……ルインさんっ!」


 慌てて駆け寄ろうとしたプッツンプリンを、豆腐メンタルが止めた。


「プリン、待てっ!」


 キュイイ……ガガッ……ヴィィィッ!


 それはヒフキヒクイの起動音で、口の中には落ちてきた岩が詰まっている。

 嫌な軋み音を響かせながら、ヒフキヒクイが瓦礫を押しのけて立ち上がる。


「あれで倒せねえなら、どうすりゃいいんだ……」


 豆腐メンタルが背負った大剣を抜いて構える。


「ど、どうしよう……ルインさん、死んじゃった……」


 【草薙】……と小さな声と同時に、ヒフキヒクイの下から、真空の刃がふたつ、ヒフキヒクイを大きく引き裂きながら飛んだ。


 キュガガガガッ!


 ヒフキヒクイの肩口から中心部に向けて、亀裂が入る。

 同時にヒフキヒクイのセンサーカメラが力を失ったように点滅したかと思うと、その光が失われていく。


「ちっ……斬り過ぎた!

 まずい、まずい! 溶岩が流れてきた!

 頼む、引き上げてくれ!

 おい、いるんだろ!

 豆腐メンタルさん! プッツンプリンさん、早く!」


 立ち上がったヒフキヒクイと落ちた瓦礫の間から手が見えた。


「ルインさん!」


「ちくしょう、ビビらせんじゃねえよ!」


 ルインは逃げきれないと悟ったのか、一縷の望みに賭けて、ヒフキヒクイの顎下の窪みに身体を潜り込ませたらしい。


 ヒフキヒクイが立ち上がるのに合わせて、奥義を放ったはいいが、斬り過ぎて溶岩が漏れだした。


 間一髪、プレイヤーの手によってヒフキヒクイと瓦礫の間から抜けられなければ、そのまま焼け死んでいただろう。


「ふう……助かったよ……」


 ルインが言うのに合わせて、プレイヤーたちはその場に座り込んでしまうのだった。


「あははははははっ!

 ハアーっ、良かったぁ……」


「何してんだ、アンタは!」


「ああ、ちと目測がな……。

 まあ、倒せて良かったよ……」


 なんとか助かったルインは、二人を促して、少し離れたところに移動した。


「溶岩袋まで斬っちまったからな。

 冷えて固まるまで、少し待たないとな……」




 その後、足場ができるまで待って、背骨に沿ったところからヒフキヒクイの身体を開く。

 胸の中心部辺りに、キラキラと光る石に包まれた脳が様々な線で繋がれていた。


 ルインはその線を金器の証である短剣で切って、脳を取り出した。


「コイツをギルドに納めれば、今回の仕事は完了だ」


 ルインが爽やかに言うのに反して、豆腐メンタルは戦慄の表情をしていた。


「な、なんだよソレ……」


「へ? 何って、ヒフキヒクイの脳だろ」


「違う……それは……そいつは人間の脳だろ!」


「え、そりゃ見た目はそうだけど、そういう魔物なんだから、魔物の脳ってことでしょ。

 嫌だなぁ、豆腐さん、なに怖い顔してるのよ」


 プッツンプリンが笑いながら言う。


「違う! あ、いや、違わ……ない?

 なんでだよ……電子頭脳だろ……A.I.じゃねえのかよ……」


 豆腐メンタルは混乱しているようだった。



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