ある疑惑
騎士様に今度、助けられたら聞いてみよう。私のこと、好きで助けに来てくれるのか、どうか。
もし、騎士様が私のこと、好きだったら、なんて言えば良いのか…。
私には、辺境伯のセシル子息がいるからって、騎士様にお伝えするべきだと思う。
そうなったら、騎士様には申し訳ない気持ちになっちゃう。
だから…騎士様に今度、お会いする時、本当に緊張してしまいます…。こんなこと、騎士様に聞いちゃうから。
ドキドキ、ドキドキ。この心臓音は緊張です。決して、恋愛感情の心臓音ではありません。
だから、セシル子息に知られる訳にはいきません。こんなこと知られたら、彼に申し訳ない気持ちになってしまうから。
だから、私は、騎士様には申し訳ないけど、恋愛対象じゃないからってお伝えしないと。そうしないと、セシル子息に申し訳が立たなくなっちゃう。
私が最近、モンスターやら、ならず者達に襲われたのは偶然であって必然ではないから、多分、騎士様が助けにくることはあまりないように思います。
あれ? それにしても上の木の方に誰かいますよ? いったい誰なのでしょうか? 教会の外にいる私は、木の上にいる人に声をかけてみました。
「すみません、どちら様ですか?」
「うわわわわわわああー!」
ドシーンッと、誰かが落下してしまったのです。
「大丈夫ですか!?」
良く見てみると、セシル子息でした。
「セシルさん、こんなところでいったい、何をしているのですか!?」
「い、いや、ちょっと…」
「セシルさん、何やっているのですか!?」
「な、何もないよ。ハハハハハッ」
何か怪しい…セシルさん。こんなところでいったい何をしていたのでしょう?
「セシルさん、この教会の近くでいったい何をしていたのですか?」
「い、嫌、ちょっと、これには訳が…」
「私に隠し事をするのですか!?」
「い、いや。何も隠し事なんて、してないよ。本当だよ」
「ふ〜ん。それにしても、セシルさんって身体能力高そうですね。あんな高い木に登れるということは?」
「えっ? そ、そうかな?」
「だって、普通の人、あんな高い木に登れませんよ」
「い、いや、それは?」
「何か、隠し事してません? セシルさん…私に」
「な、なんで…何も隠し事なんてしてないよ」
「本当に、本当ですか?」
「うん」
「じゃあ、どうして、教会の近くの木にいたのですか?」
「い、いや、そ、それは…」
「セシルさん、私、隠し事する人、嫌い!?」
「ちょ、ちょっと待ってよ。何で」
「だって、ここにいる理由を言わないからです」
「そ、それは……カナリアさんに会いたかった…から」
「えっ? そ、そうなんだ。じゃあ、お手紙でも、何でも良いから、事前にお伝え下さい! そうじゃないと、こんなところにいたら誰だってびっくりするじゃないですか!?」
「ご、ごめん。僕、カナリアさんのストーカーみたいになってしまってる。何か申し訳ない」
「もう。セシルさん、今日はお忙しいので、お相手出来ませんよ」
「そ、そうだね。ご、ごめん」
セシルさんには悪いですが、今から色々することがありますから。
「ご、ごめん。急に来ちゃって。ま、またね」
「あっ。待って。やっぱり、せっかくセシルさん、遠くから来てくれたのだから、ちょっとだけ、散歩しましょう」
「えっ、い、良いの?」
「うん」
〜教会の中を散歩〜
「昨日、セシルさんと踊っている時、凄く楽しかったです。こちらまで心が嬉しくなっちゃって」
「そうだね、カナリアさんと踊ることが出来たからこちらまで嬉しくなったよ」
「良かった。ねえ、セシルさん、あちらの椅子に座りませんか?」
「あっ、そうだね」
セシルさんと私は、椅子に座ります。セシルさんが私に聞きました。
「ねえ、カナリアさん。カナリアさんは、僕のこと、好き?」
「も、もちろんですとも。セシルさんと私は恋人関係みたいなものです」
「良かった。僕、カナリアさんに嫌われたのかな?ってさっき一瞬、思ってしまって」
「う、ううん。そんなことないよ。ただ、私、隠し事されることが嫌いだから」
「そ、そうなんだね。僕は、別に隠し事なんてしてないよ」
「分かってます。私は、セシルさんのこと、信じてますから」
「あ、ありがとう」
「うん」
その時、神父様の声が聞こえてきました。
「おーい、カナリア君、何をしている?」
「あっ、神父様、今、行きます。セシルさん、気をつけて返って下さいね」
「あ、ありがとう」
私は、急いで神父様のところに向かいました。ですが、私はセシルさんのことが気になってしまい、振り向いたのです。
「えっ?」
その時、私はみてしまいました。彼が高い木をジャンプして乗り越え、帰って行くのを。その姿があの騎士様と重なります。
「どうした、カナリア君、行くよ」
「あっ、は、はい」
セシルさんって…騎士様みたい?…。私の心の中に、ある疑惑が生まれました。




