第4話:悪魔の誕生
ミナトは重い足取りで、朽ちかけた酒場の木製ドアへと歩み寄った。
感情を失ったような手でドアを押し開けると――そこには混沌と汚濁に満ちた空間が広がっていた。
酒場の中は荒くれ者たちで溢れ返っていた。
怒号が飛び交い、賭博に興じる男たちの笑い声が響く。
隅では拳と拳がぶつかり合い、血しぶきが舞っていた。
その喧騒の中――
一人の大男が、酒を配っていた少女の髪を乱暴に掴み上げた。
「早く酒を持ってこい、このクソガキが!」
少女は悲鳴を上げ、床へと突き飛ばされる。
転がった先で――ミナトの足元に止まった。
ミナトは無言で彼女の腕を掴み、立ち上がらせる。
「あ……ありがとうございます……」
だがミナトは一切反応せず、そのまま通り過ぎた。
カウンター席に腰を下ろす。
筋骨隆々の店主が近づいてきた。
「注文は?」
「一番強い酒をくれ」
店主は鼻で笑い、紫色の液体をコップに注いだ。
「なら、これだ」
ミナトはそれを無言で飲み干す。
その時――
隣に一人の男が座った。
視線はミナトのペンダントに釘付けだった。
「おい坊主……いいもん持ってるじゃねえか」
――無視。
男の表情が歪む。
「金はあるのか?」
店主に向かって叫ぶ。
「こんなガキに酒出すなよ!」
店主が前に出る。
「払えねえなら――分かってるよな?」
男が笑う。
「そのペンダントで払えばいいだろ?」
その瞬間――
ミナトの声が変わった。
「……その手を離せ」
空気が凍る。
男は笑いながら言う。
「ここじゃ無銭飲食は斬首だ」
店主が壁を指した。
「見てみろ」
そこには――
並べられた生首。
ミナトの視線が止まる。
「……リュウ?」
時間が止まった。
怒りが、爆発する。
男は笑う。
「そいつか? 今朝殺したぜ」
――次の瞬間。
ミナトが立ち上がる。
感情はない。
あるのは殺意だけ。
剣が抜かれる。
◇
酒場の外――
ミナトが出てくる。
剣から血が滴る。
無表情。
村人たちは中へ入る。
そして――絶望を見る。
血の海。
バラバラの死体。
そして隅で震える少女。
彼女は見た。
――悪魔の誕生を。




