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一期一会  作者: 雪奈
第8章 春の雪に埋もれて
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2、鮎川家の夕食


ババババババ…………


鮎川家上原家にある、全員いっぺんに入れそうなくらいのお風呂に、男女それぞれ入った後、再びリビングで休憩していると聞きなれない、風を切るような音が聞こえてきた。


「この音、なんの音……??」

「ヘリ、か?」


香緒里たちが首を傾げていると、悠が立ち上がり、窓の外を確認しに行く。


「父さんたち、帰ってきたな。」

「急いで帰ると言ってたなら、ヘリだとは思っていたが……。」

「ヘリ!?」


窓辺に近寄るとより音は大きく聞こえ、外を見ると研究施設と言っていた施設の前にある、ヘリポートに丁度ヘリが着陸したところだった。


「ほんとにヘリだ……。」

「私、今日驚きすぎてよく分からなくなってるかも……」

「大丈夫、うちもやで、由美。」


みんなが窓辺でヘリを眺めている間に、亮は井口に夕飯準備をするよう声を掛ける。

その井口からリビングから出ていったのと入れ替わりに、奈津によく似た顔の悠や亮より小さめの男子が入ってくる。


「満!ようやく来た〜。」

「ミツ〜正月ぶり!」

「奈津姉、悠兄、おかえり。」


奈津と悠が気付き、声を掛けると(みつる)と呼ばれた奈津似の男子ははにかむ。


「え、何この奈津に似たかわいい子。」


イケメンやかわいい子が好きな沙世がジーッと見つめる。

ようやくヘリの衝撃から解き放たれた香緒里達も満の方に視線を向ける。


「私の弟の満。4月から緑高生になるよ〜。今回のスキー旅行も一緒に行くから、よろしくね。」

「……上原、満です。よろしくお願いします。」


ちょっと緊張しているのか、少し悠の後ろに隠れながら言う。


「「「かわいい〜!」」」


香緒里、雪音、奈津が声を揃えて言う。

奈津に似てるけれど、奈津より控えめで大人しいようにみえる。


「満、悟さんと祥子さんは?」

「2人もさっき帰ってきたから、もう少ししたら来ると思うよ。」


亮が聞くと満はそう答えた。

亮達とは仲が良好のようで、リラックスしているように見える。


一方食卓には次々に料理が運び込まれてくる。

フルコースのような豪華なものではなく、唐揚げやグラタン、サラダに煮物など一般家庭でも出るようなものが多い。

その種類は豊富だが。


沙世と直樹はテーブルに近づき、その料理を眺め、目を輝かせている。


「沙世、そこにいると邪魔だと思うぞ?」

「直樹も涎垂らさんといて!?」


二人は保護者の真と美愛によってテーブルがずるずると引き剥がされる。


料理やカラトリー、皿が全て並べられた頃、再びリビングの扉が開いた。


「お待たせ。亮、悠、圭、それに奈津ちゃん、おかえり。」


入ってきたのは、亮によく似た黒髪にクールな表情の男性、その隣には圭のような少し明るめの髪色に華やかな美人の女性。

その後ろには奈津に雰囲気が似ている穏やかそうな男性と、奈津とよく似た顔立ちのかわいらしい女性がいた。


それぞれ、亮達の両親の陸と玲、奈津の両親の悟と祥子と自己紹介をしてくれた。


「我が息子達〜正月ぶりだな!!会いたかったぞ〜!」


しっかり名乗ったあと、陸はクールな表情を崩して一番近場にいた悠を抱きしめる。


「父さん!やめろ!!引っ付くなぁ!!」

「あなた、お客様の前ですよ。程々にしてください。」


その陸を淡々とした様子で玲が窘める。


「父は見た目亮の中身圭、母は見た目圭の中身亮、て感じだね。」

「悠はちょうどその真ん中、っていうのもなんだかわかるわね。」


翔太と雪音がその様子を見て納得する。

見た目とのギャップがすごい。


咳払いを1つして、姿勢を正した後、陸は席に着く。

それに倣い、皆も食卓に着いた。


「陸は相変わらずだな。」


呆れたように言う悟に三兄弟は苦笑いをするしかなかった。

香緒里達からの自己紹介も済み、ようやく夕食が始まる。


「しかし、お友達がこんなに家に来るなんて、初めてじゃやいか???」

「奈津ちゃんのお友達が遊びに来てるのは見た事あったわね。上原の方の家に、だけど。」

「あったわね〜。小学生の頃だったかしら?」

「こっちにこんなにたくさんの子供たちが来るのは、初めてかも知れないね。」


和やかに話す、陸と玲、祥子、悟を香緒里は見る。


「皆さん、仲が良いんですね……??」


亮達と奈津が幼馴染だから、ある程度両家に交流があるとは思っていたが、社長副社長という立場があるため、もう少し堅いものなのだろうか、と思っていた。


「私と悟は幼馴染だからね。そもそも、この鮎川グループは私たちの父達が興した物でね。この家を建てたのもそう。まぁ、もう亡くなってしまってはいるんだけど……」

「その会社を、私たち二人で引き継いで、今も頑張ってるというわけなんだ。祥子と玲は、学生時代からの同級生だから、付き合いも長いんだ。」


友人兼パートナー、と言ったところなのだろう。

4人の雰囲気はとても気安い。

仕事上の立場は違えど、関係は対等であろうことがそれを見ればよくわかる気がした。


研究施設では何を作っているのか、亮達の子供の頃はどうだったのか、など秀人や沙世たちが繰り出す質問にもそれぞれ丁寧に答えてくれる。


「なんか、鮎川達や奈津がお金持ちなのに、全然そういう感じせぇへんのは、親の影響なんやろねぇ。」


香緒里の隣で食べていた唐揚げを飲み込んだ美愛が感心したようにそう呟く。


「そうなのかもね。お金が一番大事じゃなくて、人との関係が大事、みたいな感じなのかなぁ。」


こう見ると、普通のどこにでもいる両親のように見える。

お金を持っていることを鼻にかけたり、一般家庭のことを下に見たりせず、分け隔てなく、子供たちの友人として扱ってくれる。

きっと育て方も特別なことはしていないのだろうということは予想出来た。


香緒里たちと出会え、息子達の話を聞けることを本当に嬉しそうにする4人の姿を見て、香緒里はちょっぴり温かい気持ちになった。







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