6、シンクロ
章分類し損ねていました、すみません。
現在第18章 秋色に染まる文化祭、です。
香緒里たちは第二体育館を出た後、校庭に行く道にある模擬店で食べ物を買いつつ、ステージ企画をする校庭へと向かっていた。
「そういえば、クラスで大丈夫だったか?」
道すがら、秀人は香緒里に聞く。
「クラスで?そんなに大きなトラブルはなかったかなー。あ、なんか他校の人に連絡先聞かれたりとかはしたけど。でも柚希や八代くんが間に入ってくれたから大丈夫だったよ。」
「………そっか。」
「しつこかった人もいたんだけどねーでも柚希が秀人のこと話したら引き下がってくれたみたいだよ。他校のバスケ部だったみたい。」
他校でも有名なんだねぇ、秀人。と香緒里は感心したように言う。
「あーまぁ目立つからなー秀人は。他校に練習試合行くとギャラリーがすげぇもん。そりゃ有名になるわ。」
同じく男子バスケ部だった悠はそう話す。
「秀人はこう、存在が牽制だもんね…。」
「あー確かにそんな感じだね。」
雪音が若干乾いた笑いを浮かべながら言い、翔太も同意する。
その場にいなくても牽制になる。
「雪音は大丈夫だった?」
「うん、基本は。声掛けられることはあったけど、沙世がすぐ来てくれるからしつこくされることはなかったかな。」
「なら良かった。」
翔太に聞かれた雪音はそう答える。
「沙世は忙しそうにしてたけど……真の方も結構声掛けられててねぇ。」
「まぁそうだろうな。」
「秀人ほどではないにしろ、目立つからねぇ。」
あっちに行ったりこっちに行ったりと忙しかっただろうなということは想像容易い。
「……渡辺?」
チュロスを齧りつつ、会話に加わらず少しぼんやりした様子の美愛の顔を悠は覗き込む。
「ちょっ、近いわ!」
「なんかあったか?」
「別に……なんもあらへん。」
距離の近さに少し顔を赤くしつつ、美愛は視線を逸らす。
今突っ込んでも多分話してくれないだろうと判断した悠は「そうか?」と言ってそのまま流した。
頭を軽く撫でると、美愛は少しだけ悠の方を見た。
「ん?」
首を傾げると「なんでもあらへん。」とまた目が逸れる。
ちょっと耳が赤いので、恐らくこれは照れてるだけだろう。
香緒里はそんな2人の様子を、後ろをちょっと見てこっそり覗う。
「悠なら大丈夫だろ。」
更にその香緒里を見ていた秀人は後ろに聞こえないくらいのボリュームでそう言った。
「そう……だね。」
「踏み込むタイミングは間違えないやつだ、任せておけば平気だと思うぞ。」
あくまで二人の問題だし、悠ならそこを外さないだろうとは確かに香緒里も思う。
とりあえず、そっとしておこう。
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『それではこれより、友情シンクロクイズ大会を行います!』
今年の生徒会企画イベントは『友情シンクロクイズ大会』である。
同性同士でペア組み、クイズに答える。
いかに答えを合わせられるか、もしくはお互いの考えを読んで答えられるか、というものである。
今回は学年毎に行なわれる。
クイズ大会の出場者が3年生だけ集まらないから協力してもらえないか、と香緒里たち元生徒会メンバーに打診があったのは1週間程前だった。
文化祭の運営の大変さを知っているだけに、その状況がどれ程まずいのかということはよくわかった。
ので、まず一輝と時行がペアで出ることになった。
香緒里は柚希に、出る?と聞くと「そういうの向いてないし、香緒里ならもっと他にペアいるでしょ?」と断られた。
また、現役生徒会の子たちに「吉崎先輩のご友人方にも出ていただけたら嬉しいです。」と言われたので、仲間内にも何人か声を掛けることになった。
『続いては3年生の回です。出場者はこちらの皆さんです!』
故に、香緒里は雪音と出ることになり、他にも秀人翔太、悠圭がペアを組んで出ることになった。
悠と圭は二つ返事で出場してくれ、雪音、秀人、翔太は香緒里の頼みなら……ということで承諾してくれたのだった。
「生徒会の子たち、このメンツ狙ってたんじゃない?」
観客席でステージを見ている沙世はステージの座席につくメンバーを見て言う。
「あーそれはありそう。元生徒会長に、ミスコンミスターコン2連覇中の二人だもんね。観客呼ぶのにもってこいではあるよねー。」
「佐倉がいれば盛り上がりに事欠かないだろうしな。」
奈津と亮もステージを見ながらそう考察する。
実際、ステージの近くに集まる観客は去年と遜色ないくらいいる。
「ちょっと!悠と圭がコンビなの!?兄弟はズルじゃない!?」
時行が悠と圭を指さして抗議する。
「兄弟で出ちゃいけない、なんて決まりはないだろ?」
『同性同士のペア、とだけ決まっているのでルール違反ではないですよ。』
悠が言うとMCをしている生徒会の西川が補足する。
「絶対強いじゃーーん。かおりんもそう思わない!?」
「私に振るの!?……まぁ、3つ子だしねぇ、強いとは思うけど……別にいいんじゃない?」
「ちぇーーっ、頑張るけどさー。」
「とりあえず、お前は座れ。」
隣に座る一輝に引っ張られ、ようやく時行は席につく。
『えーと、では改めまして。まず初めはシンプルにお題に対する答えをお二人で合わせてもらいます。』
フリップとなるスケッチブックとマジックペンが配られる。
『では、まず第一問です。定番ですね、赤い果物と言えば?』
香緒里と雪音は「いちご」で一致。
秀人と翔太は「りんご」で一致。
悠と圭も「りんご」で一致。
その他のペアも概ねいちごかりんごでシンクロする。
序盤だしこんなものだろう、と香緒里は思うが。
「いやなんでスイカなんだよ。」
「ほら、切ったら赤いじゃん??」
「そもそもスイカは野菜だろ!!」
「えーそうだっけ?」
時行がボケ始めた。
おバカではなく頭はちゃんといいので、スイカが野菜であることくらいは当然知っているだろう。
「わざとだろうね……。」
「だろうな。生粋のイベント大好き男が普通に参加するはずない。」
翔太と秀人は呆れつつも小声でそう話す。
一輝が大変になることは目に見えている。
『では問題変わりまして第3問目。文化祭で食べたいものは??』
「今年の緑高の文化祭で食べたいやつってこと??」
『そうでーす。実際にあるものでお願いしまーす。』
「結構幅広くない???」
「模擬店にクラスのカフェのメニューとかも含めると相当あるんやない??」
さすがにあれこれあるため一致するのが難しい中、
「焼きそばだろ。」
「焼きそばだね。」
『さすが鮎川兄弟、思考が一緒なんですかね??唯一のシンクロ!』
「やっぱりずるくね???」
「そう思うならお前はもうちょい合わせる工夫をしろ。」
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『ここからは口頭でサクサク行きますよー。第5問!学校のない休日、何する?まずは吉崎安西ペア!せーの!』
「えーと、勉強。」
「勉強かな?」
「ヤスミノヒニベンキョウ……???」
「悠〜戻ってこーい。お前も最近勉強してるだろ、現実逃避すんなー。」
『はいではそんな鮎川兄弟、次行きますよーせーの!』
「ゲーム!!!」
「ゲーム……っていうよね、悠なら……。」
『ここまで全問一致ですね、鮎川兄弟強いです。』
他のペアも大体が勉強。
受験生故にリアルはそんなものである。
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『ではもう一度フリップ使いますよー問題に対する答えを書いて、口頭で相手の解答があってるか答え合わせしまーす。第7問!相手の初恋はいつ??』
え、そんなことまで答えるの……!?と香緒里は固まる。
いやでもとりあえず考えなきゃか……。
『ではまず吉崎安西ペア見ていきましょーせーの!』
「6歳……??」
「中二。」
『合ってますか??』
「んーー、私の初恋は5歳だったかなぁ。」
「幼稚園っていうのは知ってたんだけど年齢までは……。」
『ちなみに吉崎先輩、ご自分のは合ってます?』
「………合ってます。」
『では次、新谷石川ペアいきますよーせーの!』
「5歳。」
「小6。」
『合ってます?』
「「合ってる。」」
「え、秀人の初恋ってもしかしてかおりんだったりする?」
「……そうだけど?」
時行の質問に答えた秀人に、会場が沸いた。
秀かおファンクラブがあちらこちらで膝から崩れているのを沙世は見た。
これ、香緒里の初恋の相手も秀人だって知ったらやばいんだろうなー。
『では続きまして鮎川兄弟、いきますよーせーの!』
「4歳。」
「高一。」
『合ってますかー?って、え、高一???』
「合ってる。」
「……合ってる。」
『あのー、高一であること、突っ込んでもいいです??』
「……突っ込まなくていい。」
「えーじゃあ今もその恋は継続中ってことでいいですかー?」
「いやお前が突っ込むのかよ。」
「え、つまり悠の初恋って、美愛なの?」
「うん、そうだよ。中学までは女子に全然興味なかったから。ねー?」
「あぁ、バスケやゲームばっかりだったからな。」
沙世が奈津と亮に聞くとそう返って来る。
「美愛ちゃん知ってた?」
「……いや、初耳や。」
一目惚れ、とは聞いていたが……。
『-----では最後に小野佐倉ペアいきますよーせーの!』
「小3……?」
「20歳!!」
「なんで実年齢超えてんだよ!」
「いやーカズの初恋がいつかは知らないからさーちょっと未来にかけてみた。」
「現在進行形で彼女いるんだが???」
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『はい、では最終問題です。こちらもフリップを使って答えてもらいます。第10問!相手が思う自分のいいところは?』
『はい、では早速行きますよー。ではまず小野佐倉ペアからいきましょーせーの!』
「……なんだかんだ付き合ってくれるとこ?」
「おちゃめでかわいいところ♡」
「お前をかわいいと思ったことなんか一度もねーけど??」
「えーひっどーい私とカズの仲なのにぃ。あ、カズの方は合ってるよ?」
「気色悪い声出すな。」
『ちなみに正解は?』
「…………やる時はやるところ。」
『半分正解ということで。それではお次は吉崎安西ペアいきますよ!せーの!』
「真面目なところ?」
「優しいとこ、とか?」
『どうですか?』
「真面目なとこも好きだけど、一番はお人好しなところかなー。」
「え、そうなの??あ、優しいところ、っていうのは合ってます。」
『お2人も半分正解ですねー?』
『ではでは次は鮎川兄弟です。いきますよーせーの!』
「ノリのいいところ?」
「えー要領いいところ?……これ兄弟でやるのちょっと恥ずかしいんだけど。」
『まぁまぁ。では、いかがですか?』
「圭のいいところだろ?面倒見いいところじゃね?」
「面倒見られてる自覚あるんだ………。」
そう言った後、圭はちょっと視線を悠から外して続ける。
「……悠のいいところは、真っ直ぐポジティブなとこ、かな。……ねぇやっぱりこれ兄弟でやるべきじゃないって!」
その弟二人のやり取りを亮はちょっと笑って見ていた。
「何だかんだお互いのこと好きだからね、あの二人。」
そう、奈津が言うと「だな。」と返した。
『---------はい、では最終ペア!新谷石川ペアです。ここまで両方一致はありませんが、最後はどうでしょうか?いきますよーせーの!』
「周りをよく見てるところ。」
「周りをよく見てるところ。」
『えぇ?まさかの2人とも同じ答えですか??』
「まぁ、だろうな。」
「だろうねぇ。」
『そこ一致することあるんだ………。えーと、というわけで二人とも一致です!』
おぉぉ、とどよめきが起きる。
この問題初めてかつ唯一の一致である。
「なんだかんだ、二人とも根本のそういうところは似てるもんね。」
「だよねぇ。」
香緒里と雪音は淡々としている二人の様子を見て、ちょっと嬉しそうに笑い合う。
『はい、では結果発表でーす。優勝は圧倒的正解数だった、鮎川悠&圭ペアです!!!』
「そりゃそうだろうなぁ!くっそー!」
「くそーと言うぐらいならもうちょっと真剣にやれよ。」
終始時行に突っ込みまくっていた一輝は、ただただ疲労が溜まっただけであった。
だが、時行も一輝も会場を盛り上げてくれたことに対して、現役生徒会メンバーから大層感謝されたらしい、と香緒里は後々七恵から聞いた。




