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一期一会  作者: 雪奈
第18章 秋色に染まる文化祭
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194/213

2、文化祭に向けて


今年も文化祭準備期間が始まった。

この1週間の放課後は毎日クラスと部活の準備を交互に行う。


初日の今日はクラス準備となる。

カフェを行う予定のC組には美鈴の会社から衣装が届いた。

香緒里と八代は事務室に届いた荷物を台車で運ぶ。

廊下は八代が押してくれるが問題は階段である。

事務室があるのは1階、3年生の教室は4階。

服の入ったダンボールは3箱。


「……男子誰か連れてくればよかったかな……。」


八代は階段を見て眉を顰める。

台車も入れて4往復か………と思っていると、香緒里はそのうちの2箱を持ち上げた。


「八代くん、そっちの箱と台車お願いしてもいい?」

「え、ちょっ……マジで?大丈夫?」

「全然平気だけど……。ここで立ち止まってると邪魔になっちゃうからとりあえず上がってるね?」


そう言って香緒里はスタスタと階段を上がって行く。

さすが空手部元エースでインハイ優勝者……俺立場なくない?好きな子の方が力あるってどうなの?と八代は心の中で呟く。


箱を抱え、台車を手に持ち後を追う。


「台車無くてもよかったかもしれないねぇ。このまま教室運んじゃおっか。」

「あー……うん、その方がいいかな……。」


階段ですれ違う生徒たちは香緒里を二度見する。

まぁそうだよな、そうなるよな……。

当の本人は特に気にした様子はなく4階分を一気に上がる。

むしろ八代が気を遣われた。

足腰も腕も普通の女子とは比べ物にならない程なのだろう。


「え、香緒里それ運んできたの!?」


教室に戻ると七恵に驚かれる。


「うん、そうだけど。」

「……八代の方がへばってない?」


香緒里は教室の床にダンボールを置きながら答える。

柚希は後ろを付いてきていた八代を見て言う。

八代も元陸上部なのでそれなりに鍛えてはいたはずなのだが。


「うるさい。」

「台車片付けて来るね。」

「いや、それくらいはやらせて………みんなに衣装配っててくれる?」

「そう……?わかった、じゃあお願いします。」


香緒里はクラスの皆に、「衣装届いたよー。」と声を掛ける。

台車を持ち、教室を出る八代を見て、柚希と七恵は不憫なやつ……と思った。


「えー衣装かわいいー!!」

「どこで着替える??」

「借りてきたパーテーションあるからそこで仕切って着替えればよくない?」


クラスの女子たちは香緒里の声にダンボールを開け、それぞれ動き出す。

パーテーションは教室を半分に区切るように置かれた。


「男子も着替えてねー。着てみてサイズ合わない人は教えてくださーい。」


男子も服を取り着替え始めたので、香緒里もパーテーションの中に入る。


七恵は既に着替え終えていた。


衣装は共通で白いブラウスにボルドーのスカートに、肩紐や胸元のあたりに少しフリルが入った白いエプロン、白のハイソックス。

あとは髪型に合わせて大きめのボルドーのリボンをつける。

七恵はボブカットなので、頭の右横にリボンを付けている。


「うん、やっぱりかわいいね!」

「ねーかわいいカフェの店員さんって感じ。香緒里も着替えたら?」

「そうだねぇ。」


香緒里もそう言って衣装を手に取る。

七恵は一足先にパーテーションから出る。

男子たちは既に概ね着替え終えている。


いつの間にか八代も戻ってきていた。


「八代は着替えないの?」

「後で着替える。とりあえずみんなのサイズが合ってるか確認してからだな。女子の方も衣装いい感じだな。」

「でしょ?」


男子は黒のスラックスに黒のベストに黒の蝶ネクタイとシンプルである。

柚希も着替え終え、出てきた。

ポニーテールなので結び目にリボンを付けている。


「柚希もかわいいねー。」

「そう?あんまこういう服着ないからなー。」

「香緒里は?」

「もうすぐ終わると思うよ。」


吉崎さんはハーフアップがいいんじゃない?なんて声がパーテーションの向こう側から聞こえて来る。

体育祭や球技大会を経て、香緒里も随分クラスメイトたちと馴染んできた。


少しすると、香緒里もパーテーションから出てくる。


「うわー……予想通りかわいい。」

「かわいいー!香緒里写真撮ろ??」


柚希は香緒里を見て呟き、七恵はスマホを構え、香緒里と写真を撮りだす。

八代は香緒里を見て少しだけ耳を赤くしてちょっと目線を逸らした。

これは、無理でしょ。


「すっごい純情な反応するじゃん?」

「……うるさい。」


柚希は写真を撮る二人を眺めながら、隣に立つ八代に言う。

クラスの男子たちもざわめきながら香緒里をチラチラ見ている。


「あれ、文化祭で大丈夫か?」

「大丈夫ではないだろうね。私たちでなんとかガードしないと。」

「うわ!!!香緒里かっわいい!!」


八代と柚希がそう話していると、教室の入口の方から大きな声が聞こえてきた。

隣のクラスから様子を見に来た沙世である。


「あれ?沙世、どうしたの?」

「なんか賑やかな声が聞こえてきたから、もしかしたら衣装届いて着替え終わったのかなと思って見に来たの。」


お邪魔しまーす、と言って沙世は教室の中に入って来る。

度々C組に来ている沙世のことをクラスメイトたちはもうあまり気にしていない。


「香緒里めっちゃかわいい〜写真撮っていい???秀人に送る。」

「えっ、ちょ……それは恥ずかしいんだけど……。」

「よし、その顔いただき。」

「私も一輝に見せて来よーっと。はなちゃんも行くー?」


沙世が香緒里の写真を撮っている間に、七恵は一輝と同じB組に彼氏のいるクラスメイトを誘い、教室を出て行った。


「沙世、何枚撮るの……?」

「とりあえずいっぱい?あ、柚希も入って。」

「えぇぇ私も??香緒里だけでよくない?」

「いいからいいから。」


今度は沙世は二人の写真を何枚も撮る。

撮り終わって満足した沙世は、「じゃ、また来るから!」と言って自分の教室へ戻って行った。


「相変わらず沙世は賑やかだね……。」


柚希はそれを見て苦笑いをする。

嵐のようにやって来て、嵐のように去って行った。


「うわーー楽しそうなことしてる!!!!」


嵐第2弾がやって来た。

佐倉時行である。


「うるさっ。」

「ゆず相変わらず冷たくない!?」

「あんたが騒がしすぎるんでしょ。」


自然にC組に入って来る時行に突っ込む者は誰もいない。

むしろ、「やっほートッキー」「トッキーA組行かなくていいの?」と声を掛けられているくらいだ。


「かおりんにゆず、かわいいじゃん。写真撮ろー。」


いぇーいとナチュラルに二人の間に入って自撮りをし出す。


「相変わらず自由人だな佐倉………。」


呆れたように八代は言う。

躊躇なくかわいいと言って、香緒里や柚希と写真を撮れるそのノリの良さは若干羨ましくもある。


「よーし、秀人に送ろーっと。」

「えぇぇトッキーも送るの……?」

「ところで時行、あんたA組や実行委員の仕事はいいわけ?」


時行は今年、文化祭実行委員会に入っている。

どうしてもこの祭りを全力で楽しみたいらしい。


「実行委員の打ち合わせ終わって、教室寄ってこれから第二体育館に行くとこなんだよ。で、C組覗いたらなんか楽しそうだったから寄ってみた。」

「あっそ……。」


その時、ピコンっと時行のスマホが鳴る。


「あ、やべ。秀人に『寄り道してないで早く来い』って言われちった。」

「そりゃ、うちのクラスに寄ってるのバレたら尚のこと言われるでしょうよ。」

「早く行ってあげた方がいいんじゃない?準備大変なんでしょ?」

「そだねーんじゃ、またねー!」


ばいばーい、と手を振って時行は教室を出て行った。

やっと静かになった、と柚希は呟く。


「吉崎さん、男子の衣装、みんな問題なしだってさ。」


いつの間にか八代は全員に確認をしていたらしい。


「ありがとう。女子の方も問題なさそうだったから、とりあえず衣装問題は解決だね。」

「じゃあ内装の続き、着替えてしてもらおうか。」





一方沙世がC組にやってくる少し前の隣のB組。


今年B組は、フォトスポットとして光と映像でまるで水の中の世界を再現したかのような展示をすることになっている。

そのために、機械に強い直樹や亮を中心に企画を進めていた。


「進捗、どうだ?」


B組の学級委員である小野一輝はノートパソコンで作業している亮と直樹の元へ行く。


「ある程度は出来てきている。」

「デモ版ならプロジェクターがあれば流せると思うよー。」

「じゃあ後で借りてくる。悪いな、負担かけて。」

「全然大丈夫だよ〜オレもリョウも結構楽しんでやってるから。なかなかこういうことはしないからねー。」


他のクラスメイトは映像以外の室内の装飾等を作っている。

一輝はもう一人の学級委員と共に全体の指揮をとる。

なかなかのクオリティの物が出来る予定だ。


「かーずき。」


そこへ一輝の彼女である七恵がもう一人のクラスメイトと共に教室の入口から顔を出す。

ちょうど入り口付近の席で作業をしていた亮と直樹の傍を離れ、一輝は七恵の方へと行く。

七恵と一緒に来た女子は彼氏を見つけ、手招きをしている。


「どうした?」

「C組の衣装届いたから見せようと思って。どう?」


七恵のウェイトレス姿を見た一輝は一瞬だけ止まる。


「……スカートちょっと短くねぇか?」

「すっごい親父みたいな感想だねぇ。」

「いや、もちろんかわいいけど。」


一輝の言葉を聞き、七恵は満足そうににっこり笑う。


「あれ、ななちんそれもしかしてC組の衣装!?」


そこへ、時行がやって来る。

A組からの帰り道のようだ。


「そうだよーかわいいでしょー?」

「かわいいかわいい。え、今C組みんな着替えてる感じ??」

「うん、そんな感じ。」

「これから第二体育館行くのか?」

「そうだよ、でもその前にC組寄ってくわ!!」


全力で文化祭楽しんでるなこいつ……とスキップしながらC組へと向かう時行を見て一輝は思う。





香緒里の写真をたくさん撮り、満足した沙世は自分のクラスへと戻った。


「おかえり、どうだった?」


戻ってきた沙世に雪音は聞く。


「やっぱり着替えてたわー香緒里の写真見る?」

「見る見る。むしろ送って?」

「もちろん!」


雪音に写真を送った後、沙世は自分の作業に戻る。

女子全員分のヘアスタイルを考えている途中だったのだ。


「かわいい〜さすが美鈴さん、センスいい。」

「だよねー秀人にも写真送っちゃった。」

「写真見て固まってそうね。」

「かもしれない。見たっぽいけど、まだ返事来てないし。」


雪音は沙世に以前教えてもらった浴衣の着る手順を文章化し、イラスト付きで配布する用の資料を作っている。

真は他のクラスメイトたちと教室内の装飾を作る。


D組も特にトラブルが起きることもなく、今のところ順調に作業が進んでいる。


「準備も含めて、文化祭は楽しいよね〜。」


大変ではあるんだけどね、と付け加えながらも沙世はちょっと笑ってそう言った。

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