5、久しぶり
ゲームセンターを存分に楽しんだ後、近くのファミリーレストランにやって来た。
13人もいるので女子6人、男子7人で座る。
ちょうどお昼のピークを過ぎた時間帯だったため、思ったよりも空いており、まとまって座れた。
「お腹空いたーー何食べよう。」
「とりあえずポテト分けない?」
「あーええなぁ。」
「マヨコーンピザ食べたい。」
「じゃあとりあえず、ポテト1つとピザ1つ、後はそれぞれにする?」
女子組はどれを食べるか、何を分けるかなどを話し合う。
一方で男子組は各々好きな物を注文していく。
「何食う??」
「ハンバーグはやっぱ食っときたいよなー。あとピザと唐揚げ。」
「悠、食い過ぎて動けなくなるなよ。」
「大丈夫大丈夫、加減はする。」
「あーピザか……ピザもいいよな……。」
「直樹、デザートは後じゃないか???」
「えーでもパンケーキ食べたい。」
騒がしく注文した後は、ドリンクバーを取りに行く。
悠と直樹は率先して立ち上がる。
嫌な予感がした秀人はその後をついていくことにした。
「とりあえず、オレンジとカルピス混ぜるだろ。」
「カルピスは大体何と混ぜても美味しいよね〜じゃあコーラとメロンソーダでー、メロンソーダとカルピスも。」
2人はドリンクバーに辿り着くと、2種類のドリンクを混ぜていく。
「俺は自分で取るからいらないからな。」
秀人はそう言ってアイスコーヒーを入れる。
やると思った、というか練習試合帰りなどで男バスでファミレスに寄ると大体悠は原田達とドリンクバーで遊びだすため、今日もやるだろうなと予測が出来た。
「えー美味しいのに。」
「前に飲んだからもういい、俺は普通に飲みたい。」
そう言いつつ秀人は席に戻って行く。
入れ替わりに奈津と美愛がやって来る。
「それ美味しいの……???」
「意外と美味いよ、奈津も飲むか?」
「うーん……じゃあ後でちょっともらう。あ、亮の分はいらないよ。頼まれたから。」
「えーあいつにも飲ませようかと思ったのに。」
「絶対怒られるやろ。」
アホやなぁと美愛に言われつつも二人は席へと戻る。
「うーわ、やっぱり混ぜたんだ……。」
戻ってきた二人の持つコップを見て圭は苦笑いをする。
「まぁ、みんなよくやるよな、部活の時とか。」
「どれが何だ?」
「えーと、オレンジカルピス、メロンソーダカルピス、コーラメロンソーダ、コーヒーオレンジ、コーラ烏龍茶。」
「じゃあ早いもの勝ちで。」
そう言って翔太は一番無難そうなオレンジカルピスを取り、真はメロンソーダカルピス、圭はコーラメロンソーダを手に取り、飲む。
「まぁ、美味しいは美味しい。」
「とはいえ普通に飲むのが一番美味い。」
「それはそう。」
それを横目に秀人と亮はコーヒーを飲んでいる。
「直樹、コーヒーオレンジとコーラ烏龍茶、どっち?」
「オレコーヒー飲まないからコーラの方で。」
「一番やばそうなの残ったな…………。」
「自分で作ったんやから責任持って飲まんとやろ?」
「まぁ、そうなんだけど…………奈津、飲むって言ってたな?」
そう言って悠は隣のテーブルの奈津を見る。
「毒味させるのやめて??それは飲まない。」
「じゃあこっち飲む?味は普通。」
「コーラメロンソーダか…………まだマシかな。」
圭からコップを受け取り奈津は飲む。
無難な味がした。
「コーラ烏龍茶、不味くもないけどすごく美味しいわけではないな〜。」
「…………コーヒーにジュースはよくねーな。」
責任持って全部飲め、と亮と秀人に言われ、悠はちびちびと美味しくないドリンクをしばらく飲んでいた。
そうこうしているうちに、頼んだものが続々と届く。
男子テーブルは皿が多すぎてギリギリ入るか入らないかまで並んでいる。
「男子高校生やばいな。私もあれだけ食べられたらなー。」
その光景を見ながら沙世はポテトを摘む。
そう言いつつ、沙世の前にはハンバーグとライスとサラダがあり、既にピザも1切れ食べている。
「沙世も食べる方でしょ?」
「まぁそうだけど、部活引退しちゃったからさーちょっと考えて食べないと多分太る。」
雪音に言われた沙世は困ったように言う。
食べたい気持ちはあるけど、といったところだろう。
多く頼みすぎた場合は、真の方へその分は回される。
「食べた分身長にいけばいいんだけどねぇ……。」
由美は頼んだパスタを食べながらそう言った。
ほんとそれ、と沙世は同意する。
「美愛は身長もあるし、今は食べた物全部胸に行くでしょ?ずるくない!?」
沙世のその発言に男子テーブルの空気が一瞬止まる。
が、何事もなかったようにその後話が再開された。
悠だけは数秒間、ちょっと耳が赤くなりながら止まっていたが。
「まぁ、せやなぁ。太りづらくはあるな。」
「羨ましい体質………。」
どうやったら体重減るかな、などダイエット話がその後は女子テーブルでは始める。
食べ過ぎないで運動するのが一番なんじゃないか、と男子たちは思ったが何も言わないでおく。
結局、頼んだものは全員完食し、何ならデザートも注文した。
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「運動したし、腹いっぱい食ったし、眠くなってくるなー。部屋戻ったら寝そう。」
ファミレスを出た後、悠はそう言って伸びをする。
一行は寮に戻るため、駅に向かっている。
「悠、明日英語の小テストあるぞ。」
「げ、なんも勉強してねぇ……。」
「いつもやろ。」
「美愛ちゃん、私たちのクラスも明日小テストあるよ?」
「聞こえへん、うちには何も聞こえへん。」
秀人に言われ悠はげんなりし、美愛は奈津から言われ耳を塞いだ。
「私も部活休みだし、勉強したいなぁ。」
「「「ブカツヤスミダシ、ベンキョウシタイナ…??」」」
勉強の話の流れでそう言った香緒里の言葉に、信じられないものを見たような顔で沙世、美愛、悠は香緒里を見た。
「……部活休みだったら遊びたいよな。」
「…せやな、たまの休みやったら絶対一日遊ぶ。」
「…そんな日に絶対勉強しないよね。」
勉強嫌い組はコソコソと話す。
道を歩いているため距離は近いので、香緒里たちにもばっちり聞こえてる。
「えぇ…そんなに驚かなくても………。そもそも私勉強好きだし………。」
「ダメだ、人種が違う。」
「俺らとは考えが違う。」
「頭いい人は考え方がちゃうんや……」
「………そういうこと言うと、勉強教えないよ?」
「「「それは困る。」」」
綺麗にハモった3人に香緒里は呆れた顔をする。
秀人と香緒里に教わらないと多分受験は乗り切れない。
「俺らちょっとコンビニ寄ってくるから先行ってて。」
途中にあるコンビニの前で翔太はそう言い、雪音と中に入って行く。
「あ、私もスイーツ買わなきゃ。」
「え、まだ食うのかよ?」
「さすがに今は食べないよー。このコンビニ学校の近くにないからさ、限定スイーツ買っておこうと思って。」
「オレも行くー!スイーツ!」
そう言って、沙世と真は同じくコンビニに入り、直樹もその後を追った。
残りのメンバーは駅までの道のりをゆっくり歩くことにした。
「んじゃ、とりあえず帰ったら勉強だな。」
「えぇぇゲームしたい……。」
「テスト対策終わったらね。」
「このカップル鬼や………。」
「普段から勉強してればそんなに焦らなくていいのにな。」
「それはそう。」
秀人香緒里と勉強会が決まり、悠美愛は項垂れる。
それを見て圭と奈津は苦笑いをする。
「あれ?圭くんじゃない、久しぶり〜。」
そんな話をしていると、前から来た女子がそう言って圭に声を掛けてきた。
大人っぽい服装をしているが、香緒里たちと同い年くらいの美人の女の子だった。
その姿を見た途端、圭はもちろん亮、悠、奈津の雰囲気も変わる。
「くるみ………。なんでここに?」
「彼氏……うーん、彼氏候補かな?の家がこっちにあるのよ。」
くるみ、と聞いて香緒里は以前圭から聞いた元カノの名前であることに気が付いた。
圭をスペックだけ見て付き合い、それを知らない圭は本気で好きになり、あげく5股を掛けられたという、あの元カノ。
「3年ぶりくらい??やっぱりイケメンねー圭くん。」
過去のことを一切気にしていない様子でくるみは圭の傍に寄る。
「亮くんも久しぶり〜。子会社の社長になったんだってね、パパから聞いたよ?」
隣にいた亮にも声を掛け、下から見上げるように見る。
亮は一切表情を変えず、答えもしない。
その亮の腕を奈津は取る。
奈津にしては珍しく表情が少し険しい。
くるみは奈津には話し掛けず、悠の方を見た。
「あれ?もしかして悠くん???」
「…………そうだけど。」
「かわいかったのに、随分かっこよくなったのね。」
「そりゃどうも。」
にっこり笑いかけるくるみに悠は真顔で答える。
悠も亮も奈津も、過去の二人を知っている。
当然の反応だろう。
由美は『くるみ』という名前を聞き、それが圭の元カノであることに気が付いた。
秀人と美愛だけ事情を一切知らないが何かしらあったのだろうということはその場の雰囲気を見て察せられた。
くるみは次に、秀人を見た。
「圭くん、あの人は??」
「……友達だよ。」
「ふーん?」
じーーっと観察するように秀人を見る。
何を思われているのかは大体想像はつく。
秀人は静かに香緒里の腕を引き、腰に手を添え寄せた。
香緒里もその意図と、くるみの視線の意味が分かったため、そのまま秀人に寄り添う。
その様子を見たくるみは「なるほどね、残念。」と呟いた。
「……相変わらずだな、くるみ。変わってない。」
人の見た目やスペックを重視し、よりいい男を探す。
中学時代のまま……いや、変わってない様子を見ると更に上の男を狙おうとしているのかもしれない。
「そう??圭くんは変わらず女の子たちと遊んでるの??」
「…そうでもないよ。」
「ふーん?」
くるみは圭の目を見つめる。
それだけで、付き合っていたあの頃を思い出されて胸がざわつく。
もう何とも思っていないはずなのに。
「相変わらず、と言いたいところだけど、どちらかと言えば付き合ってた頃の圭くんみたいね。」
「え………?」
香緒里、美愛、と品定めをするようにくるみは見た後、由美を見る。
目が合った由美は思わず逸らした。
あの目は知っている。
中学の時に散々見た、自分より下の存在を見る目。
「あぁいう子とも仲良くするなんて、圭くん優しいわね。」
完全に由美を見て言っているくるみから遮るように圭は由美の前に立つ。
「そういう考え、俺は好きじゃない。」
「そういう人だったわね。もっと自分の価値を分かった方がいいと思うけどなぁ。」
もったいない、とくるみは言う。
本当に何も変わっていない。
切り捨てたはずの思い出がまざまざと蘇ってきて、気分が悪くなってきた。
「圭、行くぞ。」
その圭を見て、亮は声を掛けて歩き出す。
奈津や香緒里もその後を追う。
「じゃあね、圭くん。そのうちまた連絡するわ。」
「………しなくていい。」
「つれないわねー。まぁいいわ、またね。」
圭の態度を気に留めることなく、ある意味マイペースにくるみはそう言って、亮たちと反対方向に歩いて行った。
残された圭の背中を悠は軽く叩く。
「俺らも行くぞ。」
「あぁ、うん。」
その表情はいつもの圭と打って変わって暗い。
ほんの数分の出来事だったが、過去を思い出すには充分の時間だった。
前を美愛と歩く由美が少し振り返り、圭を見る。
心配そうにするその表情に、少し胸が痛くなった。




