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一期一会  作者: 雪奈
第16章 梅雨空に交わる想い
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4、気持ちの変化


「あー結局秀人の勝ちかー……。」

「体育祭でも負けてボーリングでも負けて。」

「やっぱり帰ってからゲームするしかないかー」


次に香緒里たちは同じ施設内にあるゲームセンターへとやって来た。


結果、ボーリングの1位は秀人だった。

2回の得点を合わせて380点。

2位は圭で352点、2回目の成績が良かった。

3位は亮、4位は真、5位は悠、6位は翔太となった。

翔太でも290点なのでハイレベルであったのが伺える。


「とりあえず、エアホッケーでリベンジだろ。」


悠が提案するとまた皆乗ってくる。


「じゃあ次はペア勝負にするか?」

「賛成、組み合わせどうする?」

「オレは審判しとく〜。」


わいわいエアホッケーの方に向かう男子たちに、沙世は「女子はプリクラ行くから〜。」と声を掛けた。


「なんだかんだしょっちゅう勝負してない???」

「男子高校生ってそんなもんじゃない?」

「そう言われるとクラスの男子たちもよく勝負してるかも……。」


奈津がエアホッケーの方を見ながら言うと、沙世はそう返した。

香緒里は今のクラスと去年のクラスの両方を思い返してみると、何かにつけて勝負していたような覚えがある。


プリクラ機の中に6人入ると割りと狭い。

ポーズをあぁでもないこうでもないとわちゃわちゃ決めながら撮る。

女子だけは女子だけでかなり楽しい。


「盛る??」

「んーナチュラルめに行くー?」

「このスタンプかわいいね。」


しっかり編集まで楽しんだ後、さてじゃあ戻ろうかとエアホッケーの方へ向かう。

時間的に言えばまだやっている頃だろう。


近くまで行くとパコーンパコーンとエアホッケーをしている音が聞こえてくる。


「え……何あれ。」

「ギャラリーすごくない……??」


エアホッケーをしているのは現在秀人真コンビ対亮悠コンビ。

そのすぐ近くで翔太、圭、直樹がそれを眺めている。

そしてエアホッケー台を大きく囲うように人集りが出来ている。

男女問わず、ざっと20人はいる。


「すげー勝負だな、めっちゃ拮抗してる。」

「どっちもやばいな。」


「みんなかっこよくない???」

「今やってるあの二人って双子??あ、でも見てるあの人も似てる。3つ子??全員かっこよすぎでしょ。」

「あの黒髪の人、芸能人みたいにかっこいい…………国宝級イケメン……?」


プレイはもちろん、イケメン集団ということでも注目を浴びている。

本人たちは観客たちには目もくれず、ホッケーに熱中してるが。


秀人と真は焦らず確実に守り、隙を狙って打ち込み。

亮と悠は何も声を掛け合っていないのに阿吽の呼吸でポジションを入れ替えつつ守り攻める。

前に出がちな悠を後ろで亮がサポートしている。


「おっしゃ、マッチポイント!!」


秀人と真の間をパックは通り、悠はゴールを決めた。


「ほんっと、悠は乗ってくると厄介だよなー。」

「悠の粗いとこを亮が上手く補ってるところがまたやりづれーしな。」


真と秀人はそう言いつつ、パックを向こう側に打つ。

こちらもコンビネーションはいい。


しばらく打ち合いが続いた後、


「入った!亮ナイス!!」

「あーくっそ、負けたかー。」

「今のは無理だろ。」


亮が最後にゴールを決め、亮悠コンビが勝った。

ワッと周りの観客も沸く。


「亮、あんなにマジにやることあるんだね。」

「意外と負けず嫌いなとこあるんだよ〜。」

「すごい勝負だったねぇ。」


香緒里たちはギャラリーの更に外側から覗くように観戦していた。

沙世が、悠とハイタッチを交わす(と言ってもそんなにテンションは高くないが)亮を見て言うと、奈津はニコニコとそう言った。


試合が終わって落ち着いたからか、周りにいたギャラリーが秀人たちに話し掛け出す。

特に女子が。


「目立つとすぐこれなんだから!」


それを見た沙世はすぐに真の方へ走って行き、後ろから抱き着く。

女子に話し掛けられ、どうしようかと思いつつ無難な返事をしていた真は少しホッとしたように後ろを向いて沙世を見た。


「真、向こう行こ?」

「そっちも終わったんだな。」


そのまま手を繋いで2人は集団から離れて行く。

亮は既に奈津を見つけ、傍にしっかりいる。


「私たちも向こう行こっか。」

「あぁ、だな。」

「ホッケーすごかったね〜。」


香緒里は、女子に囲まれ、「どうやったらあの角度でスピード出るんですかー?」「さっきボーリング場にもいましたよね??」等々話し掛けられている秀人を見て、少々モヤモヤしていた。

とりあえず近くに寄って行くと、秀人はすぐに香緒里に気付いて傍に寄り、さり気なく腰を抱いて引き寄せる。


「もう行くか?」

「うん。」


距離が近いことに少し照れながらも香緒里は頷き、秀人はそれを見て優しく微笑む。

まぁ、当然彼女いますよねー……と秀人の周りにいた女子たちはその姿を見て思う。

入り込む隙は一切ない。


「悠〜、そろそろ行くでー。」


男女それぞれと話していた悠は、美愛に呼ばれるとすぐにそちらへと行く。

女の子たちに話し掛けられていた直樹もそれを見て追い掛ける。


「おねーちゃん待ってーオレも行く〜。」


そう言いながら悠と反対側の美愛の隣に並ぶ。


「いや、いつあんたの姉になったん?」

「その方が撒きやすいかなって思って。」

「ほぼ姉弟だし間違ってねーんじゃね?」


わいわい3人で「次どこ行く?」「ゲームなら直樹も出来んだろ」等話しながら移動していく。


一方その頃翔太も珍しく女子に絡まれていた。

俺に話し掛けるくらいならもっと他に男いるだろ……とも翔太は思うが口には出さない。


「みんな彼女いるんですねー。」

「あーまぁそうですねー。」

「お兄さんもいるんですか?」


いる、と答えようとした時に雪音がこちらにやってきた。

「え、めっちゃかわいい……」と一緒にいた女の子は声を漏らす。


「翔太、行こ?」


小首を傾げて微笑むその姿は控えめに言ってもめちゃくちゃかわいい。

翔太は「じゃあ彼女来たから。」と声を掛け、雪音の手を取り歩き出す。


「どこ行く?」

「みんなクレーンゲームの方に行ったみたいよ?」



概ねみんなはけてしまった中、圭は残されていた。

昔の癖でつい女の子たちと盛り上がって話してしまい、撤退の機会を完全に逃してしまっていた。

流石にみんな行っちゃったし俺も行きたいけど、どうやって話を切り替えるか……と考える。


その圭を少し離れたところから由美は窺っていた。

どうしよう、声を掛けた方がいい……??

でも楽しそうだし邪魔しない方がいいのかな……と悩む。

困っているようなら何とかした方がいいのだろうが。


そう思っていると目が合う。

なんだか困っているようにも見える。

ので、少し手招きをしてみた。


そうすると圭は女の子たちに一言二言何か声を掛けた後、こちらに向かって来る。

女の子たちの視線を感じて微妙な心地がした由美は物陰にちょっと隠れる。

彼女とかではないので…………そんなに見ないで欲しいんだけど……


「ありがとう、助かったよ。」

「それならよかった……楽しそうだったから邪魔しない方がいいのかな、とも思ったんだけど。」

「全然大丈夫。由美ちゃんと話してた方が断然楽しいし。」


そう、自分で言った後、一瞬思考が止まる。

何気なく言った言葉ではあるものの、どこか引っかかりがある。

昔はナンパしてきた女の子たちと話すのは結構楽しく思っていた。

今の状況だったら、「先行ってていいよー」くらい言っていたと思う。

無理してこちらに来てるわけでもなく、むしろ居心地はいいような。

それは俺自身の考え方が変わったからなのか、それとも…………。


「そうだよねぇ。知らない人と話すより、知ってる人と話す方が楽だもんねぇ。」


隣で由美はそう言いながら、クレーンゲームの筐体の間を歩く。

まぁ、いいか。

と考えていたことを一度隣に置いて由美との会話を再開する。


「助けてくれたお礼に、クレーンゲームで何か取らせてくれない??」

「え、そんな大したことしてないよ……?」

「久しぶりにクレーンゲームしたいし。」

「そっか、じゃあそれなら……ありがとう。」


どれがいい?と聞くと由美はしばらくうろうろして悩んだ後、


「じゃあこの子で……。」


スイーツモチーフのキャラクターのぬいぐるみキーホルダーを指した。

ここで大きな物に行かないのが由美らしい。


「OK、その子ね。」


圭はお金を入れてボタンを操作し出す。


「圭くん、クレーンゲームも上手いの?」

「まぁそこそこ上手い方なんじゃないかな??確率良くは取れるよ。」

「それは……デートでたくさんしたから?」

「そこ突かれるとちょっと痛いんだけど…………まぁ、そうだね。」


由美に聞かれた圭は苦笑する。

何なら1年生の頃はここのゲームセンターにもよく来ていた。


3回ほどチャレンジをし、徐々に取りやすいところに持っていき、落とした。


「はい、どうぞ。」


取り出し口に落ちてきたぬいぐるみを手に取り、由美へ渡す。


「わぁ、ありがとう!かわいい……。圭くんやっぱりすごいねぇ。」


受け取った由美は嬉しそうに柔らかく笑う。


かわいい……。

その笑顔を見て、そう思った。


圭は基本的に女の子はみんなかわいいと思っているし、躊躇なくかわいいと褒めることが出来る。

普段なら思ったらすぐ言う。

でも、今回は何故か言葉に出来なかった。


なんでだ…………??

いやまぁ由美ちゃんは元々かわいいけど。

言ったこともある。

なんで言えない……???

モヤモヤと考えていると、後ろから沙世がやって来て、思考が中断される。


「あー!もしかして圭、クレーンゲーム上手いの!?」


相変わらず賑やかである。

由美が持っているぬいぐるみを持って察したらしい。


「取って欲しいのがあるんだけど。」

「真に取ってもらいなよ。」

「だって真、クレーンゲーム下手なんだもん…………。苦手だから〜って言って、悠たちとレースゲームしに行っちゃったし。」


沙世は圭と由美を見たあと、うーん、と考え


「よし、秀人に頼みに行こう。」


そう言って今度は秀人を探しに行く。


「秀人はクレーンゲームも上手そうだな〜俺らも見に行ってみる?」

「うん、いいよー。どこにいるかな??」


圭と由美も秀人を探してうろうろする。



秀人はもちろん香緒里といた。

香緒里は1つのクレーンゲームの筐体の前に立ち、ジーッと見ている。

少し大きめ、30cmくらいのうさぎのぬいぐるみがいくつか転がっている。


「どれが欲しいの?取るよ。」

「え!いいの???」

「もちろん。」

「じゃあ……あのピンクの子がいいなぁ。」


了解、と言って秀人は500円玉を筐体に入れる。

チャンスは3回。

ぬいぐるみの向きを確認した後、迷いなくボタンを操作する。

一度目で少し位置をずらし、二度目でしっかり落とす。


「はい。」

「かわいい〜ありがとう!大事にする。」


ぬいぐるみを差し出された香緒里はそれを抱く。

ニコニコ笑う香緒里の頭を秀人は撫でる。


「あ、いた秀人!」

「沙世、真と一緒じゃなかったの?」

「真は悠たちと遊びに行ってしまった…………。」

「で、俺に取って欲しいものがあると。」

「さすが秀人、話が早い。」

「クレーンゲームだと俺をアテにするからなぁ…。」


どれ?と秀人が聞くと沙世はこっちこっち、と誘導していく。

香緒里もその後を追う。

その途中で圭と由美に出会した。


「あれ?二人、一緒だったんだ。」

「物の見事にみんなに置いて行かれたところを由美ちゃんに拾って貰った。」

「ご、ごめん……すっかり忘れてた……。」

「他のみんなは……?」

「真は悠たちと多分レースゲームかな……?奈津は亮とガンシューティングゲームしてる。雪音たちは多分それを見に行ったかな?」


各々好きに遊んでいる。

もう少ししたら沙世がお腹空いたって言いそうだなぁ、と香緒里は腕時計で時間を確認しながらそう思った。


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