3、真剣勝負?
体育祭の翌日は部活もなく休日のため、香緒里たちは遊びに行くことにした。
場所は以前直樹がマウスを買った家電量販店も入っている商業施設。
今回はまず、ボーリングに行く。
「どうする?点数勝負するか?」
「いいな、1位になったら?」
「昼飯タダでどうだ?」
「よし乗った。体育祭の借りを返す。」
ボーリング場に着くと、悠、秀人、真、圭がそう話す。
「男子だけでやってねー私たち絶対勝てないし。」
「オレは引退します!」
「それ言うなら辞退や。」
運動神経いい男子たちに挑んだところで勝てるわけがないので、沙世は先にそう言っておく。
その中で運動神経皆無の直樹は手をしっかり挙げて宣言するも、美愛に突っ込まれる。
13人いるので、3レーンに分かれた。
「ボーリング久しぶりだねー。」
「中学の時以来かもね。」
香緒里と雪音は秀人と翔太と一緒のレーン。
秀人は既に靴を履き、翔太と共にボールを取りに行こうとしている。
「香緒里、重さいくつにする?」
「んーーとりあえず11かなぁ。」
「雪音は?」
「9かな。」
香緒里と雪音の返事を聞くと、二人はボールが並んでいる方に行く。
「誰から行く???」
「とりあえずあんたからでええよ、もうやりたさが滲み出とるわ。」
「美愛が既に保護者。」
ウキウキしている悠に美愛は呆れて言う。
一緒のレーンの沙世はそれを見て突っ込んだ。
もちろん、真も同じレーンだが、今は直樹のボール選びに付き合っている。
「おっしゃ!行くぞ!」
悠の選んだボールは割りと重めの14ポンド。
それをピン目掛けて思いっきり転がす。
ボールは僅かに左に逸れ、8ピン倒れた。
「ん〜なんか若干投げ心地違うか?」
「そりゃ最後にやった時とから身長も体重も筋力も違うんだから当たり前だろう。」
隣のレーンの席に座る亮が溜息混じりに言う。
ここ1、2年で急激に体格が変わった悠。
身長156cmと170cm超では確かにまるで違うはずだ。
「なるほど、確かに。後でもうちょい重いのに変えてみるかー。」
そう言いつつ2投目を投げ、1ピンだけ倒す。
反対側のレーンで、ガシャーンといい音が鳴る。
「は!?もうストライク出たの!?早くね!?」
悠はレーンの先を見て驚く。
もちろん、投げたのは秀人である。
「勝負なら負けたくないからなー。本気出す。」
「いや秀人が本気出したら誰も勝てないでしょ。」
沙世がジト目でそう言う。
「とはいえ、負けたくはねーなー。」
そう言いつつ、真は投げる。
こちらもいいコースに玉は進み、ストライク。
「ほわぁ!真かっこよ!!!!!!」
「まぁねーたまには秀人に勝ちたいよ、ね!」
圭は綺麗なフォームでボールを投げ、ボールは真ん中より少し右側に当たった。
パコーーンっといい音が出る。
圭もストライク。
亮も淡々と投げ、スペアを取っている。
「規格外過ぎやろこの集団。」
「みんなすごいねぇ。」
美愛と由美はそれを見て言う。
「ほな、うちも投げようかな。久しぶりやなー中学の時にクラスの打ち上げで行った以来?」
「美愛は上手いの?」
「んーまぁまぁ?」
沙世に聞かれた美愛はそう言いつつスペアを出している。
「まぁまぁの基準おかしくない???」
「ええ時と悪い時の差があるっていう話や。今日は割りと調子ええよ?」
一方、奈津はフォームは綺麗なものの、スピードが然程ないため倒しきれず、大体8本を毎度倒している。
「うーん、やっぱり上手くいかないかー。筋力ついたと思ったんだけどなー。」
「腕で投げようとするんじゃなくて、振り子のように振ってみろ、その方がスピード出る。」
「なるほど、やってみる。」
亮のアドバイス通りに奈津はボールを投げる。
そうすると先程よりスピードが出て、ピンも勢いよく倒れる。
「ほんとだ!さすが亮!」
嬉しそうに手を叩く奈津を、亮は少し表情を緩めて見る。
次の番となった由美はボールを手に持つ。
先程から何度か投げているが、どうしても真っ直ぐ転がらない。
うーん、とボールを持ち考えている由美に、圭は声を掛ける。
「由美ちゃん、投げる時ちょっと横に流れてるかもだから、最後手を真っ直ぐ押し出すイメージでやるといいかも。」
「手を真っ直ぐ……?」
「うん、で、あの点、あるでしょ?あそこの真ん中より、ちょい右か左を狙うと、真ん中に行くと思う。」
「なるほど………。」
圭の動きをジーッと見た後、自分でもその動きをちょっと真似てみる。
「やってみるね。」
そう言って、ボールを前に転がす。
ボールはガターにならず、レーンの上のほぼ真ん中をコロコロと転がっていく。
そして、ピンの先頭にぶつかり、ガラガラガラと後ろのピンを押し倒しながらボールは進んだ。
「真っ直ぐ行った!ありがとう圭くん!」
「うん、その感じで大丈夫。ゆっくり意識して投げればいいんじゃないかな?」
その様子を隣のレーンで席でジーッと沙世は見ている。
「沙世、どうした??」
「なんかフラグが立ちそうな気がしている……。」
「好きだなぁそういうの。」
割りと恋愛脳な沙世は恋バナが大好きである。
ここでからかったりはしないのが沙世らしいところではあるが。
ちゃんと人を見て判断している。
さて、私の最推しカプは、と香緒里たちの方を次に見る。
香緒里は先程重めのボールに変えたらしく、その扱いを秀人に聞いていた。
「重いボールは腕で投げるんじゃなくて、振り子で落とすだけでいい。持ち上げて投げるとぶれる。」
「こう……?」
「そう。で、手の位置はもうちょいこっち。」
「………あの、秀人、ちょっと近くない……?」
手を添え、近くに寄る秀人に香緒里は少し顔を赤くする。
「そうか?んで、そのままこの辺で落とす。」
「わ、わかった。」
アドバイスを聞き終えた香緒里は頷く。
その香緒里の耳元で、
「真面目に教えてるのにそんなかわいい顔されると困る。」
と秀人は低く囁いた。
もちろん、香緒里の顔は更に赤く染まる。
ボーリング場の中は賑やかなので、やり取りまでは聞こえていないものの、沙世はニマニマのその様子を眺めた。
「沙世は香緒里たち観察するの好きやな。」
「うん、だってあの感じ大変に萌えない??あれで付き合ってもう3年以上だよ??」
なのに付き合いたてのような反応をしている、主に香緒里が。
沙世的には心は秀かおファンクラブだ。
親友の名誉のために入会はしないが。
一方、沙世たちと同じレーンの直樹は苦戦していた。
「なぁ、直樹のボールいくつ?」
「あー……最初10ポンド持たせようとしたんだけど、持てなくてな。で、徐々に下げていって、結局6。」
「キッズか。」
悠の問いに、一緒にボールを選んでいた真はそう答える。
直樹は6ポンドのボールを両手で投げている。
「やぁ!」
身長170cm近くになり、美少年感が少しずつ抜けてきたものの、そのキャラは変わらない。
ゆっくり真っ直ぐ転がっていったボールはガラガラとピンを倒していく。
「なんでそれで倒れるん???」
「理論上は倒れるぞ。」
突っ込んだ美愛に亮からそう返ってくる。
「両手って逆にむずくね?」
「だって〜片手だとより疲れるからさー。」
「だから俺にくっつくな……って渡辺の方に行けばいいってわけじゃねーからな!?」
ぐでーっと寄りかかってきた直樹を躱すと、直樹は次に美愛にくっつく。
「もーわかったよーじゃあミメイはユウにあげるからさ〜。」
「あ、ちょっ!」
はいはい、と直樹は美愛を悠に寄せる。
ぐいぐい押された美愛はバランスを崩し、椅子から落ちそうになる。
それを悠がとっさに支えた。
至近距離で目が合い、お互いに少し赤くなり、ちょっと逸らした。
「自由過ぎだろ……。」
「……ありがと。いやほんまに。」
ちょうど沙世は投げる番だったため見ておらず、真はその沙世を見ているため一連の流れは見られていない。
美愛と悠は接近した距離を元に戻した。
直樹は既に隣の亮たちの席の方に移動している。
自由である。
1ゲーム目を終え、2ゲーム目。
男子組の勝負は白熱していた。
「今のところ、やっぱり秀人がトップだね。」
「んで、1ゲーム目調子悪かった悠が追い上げてる所やな。」
「真や圭も頑張ってるけどまだちょい点差あるねぇ。」
女子組は自分たちも投げながらその勝負の行方を見守る。
「っしゃあ!2連続ストライク!」
イエーイと悠は美愛とハイタッチをする。
その隣のレーンで綺麗にカーブしながらボールはピンをなぎ倒していく。
「3連続ストライク……。」
「ダントツねぇ。」
翔太と雪音がそれを見て呟く。
秀人は「まぁいいコースか。」と呟いている。
勝負には勝ちたいが自分のペースは崩さない。
「秀人かっこいい……。」
思わず漏らした香緒里の言葉に秀人は笑ってその頭をぽんと軽く撫でる。
「ありがと。次香緒里だぞ。」
「うん、頑張る。」
秀人が過剰に反応しなくなったので香緒里は自分が言ったことにあまり気が付いていない。
「……ちょっと余裕出来たのかな?」
戻って来る秀人を見ながら雪音が言うと、いや……と翔太は否定する。
そして椅子に座った秀人の手首を軽く掴む。
「何だよ?」
「……うん、脈拍は早いね。動揺はちゃんとしてる。」
「脈を測って人の気持ち読むなよ医者の息子。」
後ろのやり取りには気付いていない香緒里は、先程秀人に教えられた通りに投げてみる。
スピードの出たボールは1番前のピンに当たり、後ろのピン諸共吹っ飛ばした。
「やった!!ストライク出たよ!」
珍しくテンション高く香緒里は嬉しそうに跳ねる。
「「かわいい……」」
それを見てハモる親友と彼女に翔太は苦笑いをした。




