閑話 クリスマス会 中編
クリスマス会当日。
終業式終了後から香緒里たち生徒会メンバーは準備を進めだす。
宝探し謎解きの準備は生徒会メンバーと秀人しか行えないので、香緒里以外はそちらの準備をし、香緒里は第一体育館に残り、手伝ってくれる生徒たちと会場準備を行う。
「香緒里ー電飾はツリーだけー?」
「ツリーに巻いて余ったのは壁側にお願い。」
「吉崎ーこっちは?」
「輪飾りと花紙も壁側!」
まぁ概ねいつものメンバーやクラスメイトたちが多い。
あとは後輩の子たちが10数人いる。
実は皆、秀かおファンクラブのメンバーなのだが香緒里はそれを知らない。
香緒里の手伝いが出来て、かつ秀人も企画に携わっているとあるならば、参加しない理由がないからだ。
「うーん、さすがにこのツリー高すぎて上の方は踏み台ないと飾れないか………。」
2m以上はある大きなツリーは身長153cmの沙世にとっては高過ぎる。
テッペンどころか上部にも届かない。
「上の方は俺らがやるから沙世は下の方やってくれればいいよ。」
真は沙世が手に持っていた星を持つと1番上にひょいと乗せた。
その後ろには圭もいる。
二人とも177cm、178cmと背が高い。
「身長大きいのいいな〜。」
「いやぁ沙世ちゃんはそのサイズでいいでしょ、ねぇ真。」
「あぁ、そのままでいいよ、かわいいし。」
「まままたそういうこと言う!!」
また無意識に爆弾を落とす真に沙世は顔を赤くする。
圭はそれを見てあーあ、と苦笑いをした。
「香緒里、この飾りは入口の方が映えそうな気がするんだけど、どう?」
「あー確かに……じゃあそれでお願いしようかな。上届く?」
「届かなかったら翔太に頼む。」
「さすがに俺で届くと思うけど……届かなかったら真あたりに頼むよ。」
「あ、パイプ椅子は使っていいからね。でも乗る時は気をつけて。」
飾りを持って聞きに来てくれた雪音と翔太と香緒里はそう話す。
会場の準備は順調に進んでいる。
校舎組は大丈夫だろうか。
宝探し謎解き組は、秀人一輝、時行柚希、颯斗里華に別れて校内の対象教室等に謎解きを設置していく。
「そういえば、ゆずはもう秀人のこといいの?」
教室から教室へ移動していく廊下で時行はそう問い掛ける。
柚希は嫌そうな顔をしながら時行を見た。
「なんであんたにそんなこと教えなきゃなんないのよ。」
「えー単純に興味と雑談?」
「趣味悪……。」
そう言いつつも、じーっと見られているので仕方なく答える。
「……好きじゃないかって言われたら、違うと思う。でも、会長が新谷くんとお似合いなのはもうよく分かってるから、嫉妬……とかはもうない。」
「ゆず、かおりんのこと結構好きだもんな。」
「あの人の近くにいて、人として好きにならない方が難しくない?」
「まぁ、それはそうだね。」
かっこよくて頼れるのにかわいくて、ちょっと危なかっしくて、お人好しで人の事ばっかり。
そりゃあ新谷くんも放っておけるわけがない。
そう柚希は話す。
「難儀だねぇ。」
「そういうあんたはないの?恋愛話。」
「俺??んーー今はそういうのないかな。会長や安西さんもかわいいとは思ってるけど、別にそういうんじゃないしなー。高校生活楽しけりゃいーじゃん?」
「あんたのその楽しいに私たちは振り回されてんだけど。」
「まぁまぁ、なんだかんだで楽しんでるでしょ?」
そういう面もあるので、確かに否定は出来ない。
黙る柚希を見て時行は楽しそうに笑う。
「なんか腹立つ。」
「ゆずはすぐ怒る〜。」
「あんたのせいでしょ!」
「他の2組も終わったらしい。」
「それじゃ、戻るか。」
一輝と秀人も設置を終え、一輝の元に他2組から連絡が入ったのを確認した後、二人は第一体育館へと戻る。
「この後なんか手伝うことあるか?」
「あー、会場の設営が終わってなければその手伝いってとこだな。それ終わればあとは特にない。」
「無事開催出来そうで良かったな。」
秀人がそう言うと一輝は溜息をつく。
「ほんとな……。時行が言い出して、会長がやるって言った時はどうなる事かと思ったけど………。」
「まぁ、香緒里ならやるって言うだろうな。」
「時行もそこ分かって立ち回ってんのがタチ悪いんだよな。」
「また香緒里が無理して倒れてたら、俺はトッキーに何するかわかんなかったからなー。」
「いやこえーよ。」
秀人が香緒里に関してそう言うと本気に聞こえるから怖い。
半分くらいは本気だろうが。
「ところで、彼女は今日来んの?」
「なな?あぁ、もちろん参加はするけど。さすがになかなか一緒にいられる時間はあんまないだろうがな。」
「いいのか?」
「まぁ明日一緒に出掛ける予定だしな。……お前は会長と好きにやってくれ、どうせ今日出張るのは大体時行だ。ほっとくと会長はあちこち動き回るだろうからな。」
それじゃ適当に連れてく、と秀人は言う。
運営に差し障りのあるタイミングでは絶対に連れていかないだろうから、その辺の心配は一輝はしていない。
仲が宜しくて結構である。
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第一体育館の中央には2m超のツリーが飾られており、集まった生徒たちはその周りで写真を撮ったり眺めたりしている。
『皆様お待たせしました!そしてお集まりいただきありがとうございます!ただいまより、生徒会主催、クリスマス会を始めまーーーす!』
時行がステージ上でマイク片手に声高々にMCを始める。
『まず最初はマルバツクイズです!お題はずばり、緑高について!皆さんがどのくらいこの学校が好きかが試されます。問題は生徒会全員で考えました、誰がどの問題を考えたかは言いませんが、そちらも考えて楽しんでみてくださいね〜』
里華が〇、颯斗が✕のボードを持ってステージの両脇に立つ。
その前の床には大きな四角がそれぞれテープで描かれている。
それぞれが〇エリア、✕エリアだ。
『それでは第一問!第一体育館は第二体育館より広い、〇か✕か!第二体育館は1階と2階の合わせた面積です!』
「〇だろ。」
「〇だな。」
秀人と亮はそれぞれそう答えた。
「二人が言うなら絶対そうだろうねぇ。」
「え、これ二人についてけば余裕で全問正解なのでは?」
奈津と沙世は二人を見てそう言う。
問題によるだろ、と秀人に突っ込まれたが。
正解は〇。
不正解だった生徒は枠外へと出て見学になる。
『では第二問!生徒会長である吉崎香緒里は辛党である!〇か✕か!』
「なんで私が問題に入ってるの!?」
「時行のせいだろ。」
秀人や雪音たちが〇の方に行ったため、大方の生徒はそちらに流れてしまった。
ある意味サービス問題である。
『第三問!!え、誰これ書いたの!佐倉時行の前回の中間テストの順位は28位である、〇か✕か。……俺が頭良く見える人〇にしてね!』
「これ、一輝でしょ?」
「もちろん。たまには自分がネタになればいい。」
「翔太と亮、順位知ってる?」
「いや、さすがに細かいところまでは………。」
「頭はいいだろうけどな。」
「明確に順位が示されてるとこがミスリードなのかどうなのか、ってところだな。とはいえ、〇が続いてるから✕が来てもいい気もする。」
「佐倉のあの発言で〇に誘導してるような気もするしな。」
秀人と亮はそう考察し、✕を選ぶ。
雪音たちもそれに習ってみる。
『正解は〜✕です!惜しい、29位でした!』
お前そんなに頭いいのかよ!と間違えた野球部やクラスメイトからブーイングが来ている。
『第四問!数学の三浦先生の好きな食べ物はラーメンである、〇か✕か!』
そこからは先生の問題や、予測が出来ないようなタイプの問題が続き、流石の秀人や亮はもちろん、多くの生徒が脱落していった。
残るのはあと10人程。
『最終問題、答えは〜〇です!!!〇エリアにいる皆様、おめでとうございまーーす!優勝商品は、学食のデザート無料券3枚綴りです!』
残ったのは結局3人。
3人それぞれに柚希が景品を渡した。
「知識だけで解けない問題になると、さすがに亮や秀人もきついんだな。」
「そりゃな。俺らがいるから余計にそっち方面に舵切ったんだろ。」
悠の言葉に秀人はそう言う。
その予想は大当たりで、普通のクイズだと二人が無双するのが目に見えているので、こうした方がいいだろうと香緒里と一輝が考えたのだ。
『さぁでは次のゲームです!次は、校内宝探し謎解き〜〜!!皆さんには5、6人のグループを組んでもらって、校内を巡って謎解きをしてもらいます。とりあえずまずはグループ組んで〜!最悪少なくてもいいです、大変にはなるけど。』
時行の言葉にざわざわと皆動き出す。
その中で秀人は1人抜け出し、ステージの方へ向かう。
ひょいと軽々ステージに飛び乗り、生徒会メンバーの方へ行く。
さすがに自分で考えた謎解きには参加出来ない。
「圭……!頼むからこっちのチームに来てくれ……!!!」
「俺らだけじゃ詰む……!!」
早々に雪音、翔太、奈津、亮の4人がチームを組み、沙世、真、悠、美愛もチームを組み、カップルが固まったところで圭、由美、直樹はどちらのチームに行くかと相談していると、悠と真が圭に縋り付く。
「えぇぇ………俺?いやまぁ確かにそっちチームはやばそうではあるけど……。」
「直樹、こっち来い。」
「はーい。」
どう考えても学力レベル的に偏りがあるチームを見て圭は言う。
いつものメンバーでの成績下位4人である。
秀人や香緒里がいればもう少しバランスは取れたのかもしれないが。
そして亮は直樹を自分のチームに引き入れた。
「えー直樹はこっち来て欲しいんだけど……。」
「……このメンバーにプラスして体力ないやつのお守りをするか?」
「………やめとく。」
非難がましい目で見る圭に対して亮はそう言う。
体力ミジンコ並み、と美愛に称されるくらいの直樹だ。
校内を歩き回っててへばるのは目に見えている。
亮なりの気遣いである。
「せめて由美ちゃんこっち来てくれる……??まともな人いて欲しい……。」
「わかった。」
由美は苦笑しながら圭チームに入る。
残り4人は「俺らがまともじゃないって言うのか!」と言っているが学力的にやや問題あるのは否めないのだ。
『大体皆さん組めましたねー?ではルール説明です!皆さんには解答用紙を持って校内にある問題を解いて行ってもらいます。最初に行くべき場所は解答用紙の一番上にあります、その後に行くところは各場所に指示があります。』
『各場所にはタブレットが設置されており、常にこちらのモニターと繋がってますのでトラブルがありましたら声を掛けてください。また、先生方にも御協力をいただき、校内の巡回をしていただいてます。』
時行に引き続き、颯斗が付け加える。
『最終問題を解いて宝の在処を見つけてください!ではここでこの謎解きの監修をしてくれた新谷くんから一言!』
「は?聞いてねーけど。」
『いいからいいから。』
ステージにいるものの特に何を指示されているわけではない秀人に突発的にマイクを持たす。
何故秀人だけ参加しないのか、早く解きすぎてしまうから特例で不参加なのか、等疑問に思っていた生徒たちは『監修』と聞いて納得した。
『……問題の難易度はクイズに慣れてる人なら難しくないレベルです。ただ、暗い校内の中を歩き回ることになるのでそちらの方が大変かもしれません。優勝商品は今夜のクリスマスケーキが特別仕様になるのに加えて、佐倉くんが何でも言う事聞いてくれます、頑張って。』
『は!?何それ聞いてないよ!?』
『たまには自分が無茶ぶりされろ。』
『はーいでは解答用紙を貰ったチームからスタートです。』
無茶ぶりには無茶ぶりを返す。
秀人らしい。
香緒里はその様子を見て苦笑いをする。
颯斗の号令によって、校内宝探し謎解きはスタートした。
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『芸術の部屋』と解答用紙の一番上に書かれていた亮率いるチームは早々と美術室に到着した。
美術室の机の2つにA4サイズの紙がそれぞれ貼られている。
片方には
『次に行くべきは、治癒の部屋。』
もう片方には
『インネルミョーシ』
と書いてある。
「こっちは次への指示だね。」
「治癒……ってことは保健室かな?」
翔太と雪音は片方の紙を見て言う。
「いんねるみょーし、って何?」
「アナグラムだ。イルミネーション。」
「はっや!」
首を傾げる直樹に亮が秒で答える。
瞬殺である。
解答用紙に記入すると、「保健室行くぞ。」ともう
教室を出ようとする。
次のチームが入れ替わりで入ってくる。
「これ、俺らいらないんじゃないか?」
「最速クリア出来そうね。」
「亮はクイズも得意だからねぇ。」
その後を翔太、雪音、奈津が追う。
翔太は既に体力が削られている直樹の手を引いている。
直樹の体力が持てば、1位になれるかもしれない。
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『音の集まる場所』とのヒントから音楽室へ向かう圭率いるチーム。
由美以外は体力があるチームなので早歩きで向かっているため、後続のチームはまだいない。
「さすがに夜の校舎暗すぎへん……???」
「なんで電気付けてくれねぇんだよ……!!」
お化け屋敷が苦手組の美愛と悠がそう零す。
校内は非常灯以外一切電気が消えており、頼りはスマホのライトのみだ。
かなり暗めで普段とは違い、ちょっと不気味さはある。
同じく怖いのが苦手な沙世は早々に真の腕にしがみついている。
どこかの階段を上る音が聞こえて美愛はビクっと肩を震わせる。
正直心臓によくない。
別のチームが物陰から出てきたら叫び声をあげてしまいそうなくらいには怖い。
「はよ終わらせて戻りたい……。」
珍しく泣きごとを言う美愛の手を悠は握る。
前に文化祭でお化け屋敷に入った時も手を繋いだな、なんてことを悠は少し思い出す。
何も言わずにキュッと握り返されるその温かさに少しだけ怖さがマシになる。
美愛の表情も少しだけ和らいだように見える。
その様子を後ろから見て沙世はちょっとニヤニヤする。
音楽室にたどり着いた一行は、黒板に貼られている2枚の紙を見る。
片方には
『次に行くべきは、校内の運営を行う場所』
もう片方には
『スンローサクタ』
「なんだこれ………。」
「校内の運営……??職員室か?」
「さすがに職員室は入れないんじゃないかな……?」
悠と真は首を傾げ、由美は冷静にそう言う。
「そっちは多分、生徒会室だな。行事や部活の運営を行うのは生徒会だからね。」
「じゃあこっちはなんやろ。さくた……?人の名前?」
「回転寿司屋さんの名前みたい。」
美愛と沙世も紙を見て首を傾げる。
「これは多分アナグラムだね。えーと………あぁ、サンタクロースだ。」
「なんでわかるの!?」
「圭すげぇ!」
なんかこれ、俺一人で問題をクリアしなきゃいけないんじゃないか……???
と圭はチームメイトの様子を見て察してしまった。
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校内宝探し謎解きが行われている中、第一体育館では夕食となるクリスマスビュッフェが運び込まれて来ている。
香緒里たち生徒会メンバーはその横で机や椅子を設置したり、会場準備を行っている。
そんな生徒会メンバーに代わり、秀人はステージ上に置かれたノートパソコンでそれぞれの教室に設置されたタブレットの映像を見て、監視していた。
香緒里は作業の合間にその様子を見にそちらに寄っていく。
「みんな順調そう?」
「今のところ目立ったトラブルはないな。Aルートのトップは予想通り亮たちのとこ、Bルートは圭たちのとこがトップ、Cルートは3年生チームだな。」
「さすがね。」
「ただ、圭たちのとこはここからだろうなぁ。実質圭頼りになるだろうからな。怖がり3人組もいるし。」
秀人の言葉に、あー……と香緒里はメンバーを思い出して、圭を不憫に思う。
亮チームは問題なく恐らく1位になるだろう。
亮一人でも正直問題ないレベルのクイズだ。
問題点は体力のない直樹くらい。
一方圭のチームも圭だけで答えられるだろう。
その他の問題点が多いため、亮チームより時間はかかるはずだ。
「校内、真っ暗にしなくてもよかったんじゃない……??」
「真っ暗の方が雰囲気あるだろ?吊り橋効果的な。クリスマスだし、そのくらいあった方が面白い。」
問題点の一つの要因となるその暗さを香緒里が指摘すると秀人はそう返した。
一応そこもクリスマスイベントらしく、カップル成立も狙ったらしい。
「私今回参加者じゃなくて良かったかも……。」
美愛たちと同じくあまりこういった雰囲気が得意じゃない香緒里は呟く。
秀人はちょっと笑って、「ほら、日向が向こうで香緒里のこと探してるぞ。」と送りだした。
そもそも香緒里が参加者側なら秀人は主催者側に回らなかっただろうし、暗がりの中歩く必要があるなら香緒里の隣にいただろう、ということは多分香緒里は気付いていない。




