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一期一会  作者: 雪奈
第13章 冬、異国の地で
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閑話 クリスマス会 前編


文化祭、国体、中間テストという怒涛のスケジュールを乗り越え、あとは2週間後に待つ修学旅行を待つだけだな、と香緒里が思っている頃。


生徒会の日常業務が終わり、香緒里は副会長の小野一輝と共に部活へ向かっていた。

バレー部で庶務の日向里華は一足先に向かい、野球部で会計の佐倉時行、テニス部で書記の河村柚希、サッカー部で会計監査の手塚颯斗はグラウンドの方へ行った。


グラウンドの横を通り過ぎようとした時、たまたま同じクラスで陸上部の町田と出くわした。


「あれ?吉崎。これから部活?」

「うん、そう。」

「そっか、大変だな。そういえばさっきうちの部の後輩に聞いたんだけどさ、今年生徒会主催でクリスマス会やるんだって?」

「「…………は?」」


寝耳に水である。

そんな企画をした覚えは一切なし、これまでの緑ヶ丘の歴史でもクリスマス会をしたなんて記録はなかったはずだ。


「あれ?単なる噂だった?」

「えーと、多分……??私たちもよくわからないから……ちょっと確認するね?」

「そう?」


じゃあまた、と香緒里は町田に手を振り別れる。


「一輝…………これってさ。」

「……時行だろうな……。」


二人の脳内に浮かんだのは同一人物。

彼が絡んでいるに違いないだろうと二人は確信した。

部活に行くとそれぞれ空手部、男子バスケ部で似たようなことを聞かれた。


香緒里は部活終わりに生徒会のグループメッセージを開き、


『夕食後19時30分、多目的棟4階、第一会議室に集合すること。遅れないように。』


と、送った。

これは問い詰めないといけない。



-------------


夜、会議室に生徒会メンバーは集まった。

一輝以外の面々はなぜ呼び集められたのかよく分かっていない顔をしている。


「今日、生徒会主催のクリスマス会をやる、なんて話を聞いたんだけど。」

「あ、それ私も女テニで聞かれた。」

「俺もクラスで。」

「私も聞かれました〜〜。」


香緒里が言った話に柚希、颯斗、里華がそれぞれ言う。

どこまで広まっている噂なのかは定かではないが、校内のあちこちで話されているのは間違えなさそうだ。


「トッキー…………何か知ってるよね??」


静かに香緒里は時行を見る。

若干いつもより圧があることが一輝にも分かった。

時行本人は気にしてない様子だが。


「生徒会主催でクリスマス会やりたいなーーって話はしてたよ??いやーでもまさかそんな話になるなんて〜。」

「お前…………確信犯だろ。」


白々しく肩を竦めて言う時行を一輝は座った目で見る。

噂になるであろうタネを撒き、全校に広める。

それが目的だったのだろう。


「バカなんですか?????」

「ほんとそう、バカでしょ。」

「さすがに前例ありませんもんね〜。」

「えーーでも絶対楽しいって。」

「いやそういう問題じゃねーだろ。」


香緒里は少し考えた後、溜息をついて言う。


「わかった…………やりましょう、クリスマス会。」

「会長……正気?」


柚希はびっくりした顔で香緒里を見た。


「話を聞いてる限り、全校生徒のかなりの人数が知ってそうでしょ?いくら時行が言い出したこととはいえ、『生徒会主催』って思われている限り、万一やらないなんてことになったら、私たちの信用問題になるでしょう?」

「それはそうだけど…………。」

「前例のないことだけど、ここまで広まった以上はやるしかないわよ。」


香緒里とてやりたい訳ではない。

本来ならば仕事がほとんどない期間なのだ。


「さっすがかおりん!」

「トッキーは絶対サボらないで。会議含め遅刻は厳禁。」

「わかりました!」

「あと、必ず『今年限り』であることを強調して。恒例のように思われちゃうと、来年度以降の生徒会の子たちが可哀想だからね。いい?」

「わかりました!」


時行は元気にそう返事をする。

香緒里はもう一度溜息をつき、「期末はしっかりテスト対策の時間取れると思ったのにな……」と呟いている。


「時行お前、会長なら噂広めればなんだかんだやってくれると踏んで噂流しただろ。」


その香緒里をチラリと見た後、一輝は時行に言う。


「さぁねー???」

「お前、そのうち秀人に締められるぞ?」


一輝の言葉に柚希、颯斗、里華もうんうんと頷いた。

文化祭前に過労で倒れたこともある香緒里。

要らぬ仕事を増やして香緒里に負担がかかることに対して、あの過保護な彼氏が黙っているはずがない。


「むしろ締められた方がいいでしょ。」

「同感です。」

「やるからには絶対会長は頑張っちゃいますもんねー。」



その後、生徒会主催でクリスマス会をやるということが告知された後、時行に圧をかけまくっている秀人を見た人がいるとかいないとか。



-----------


やると決めたからには早く動かなければならない。

学校に許可を貰うためにある程度の方向性を詰め、予算を見直す必要がある。


「トッキーはとりあえず私と里華ちゃんと企画大枠を決めよう。で、一輝と柚希、颯斗で予算の見直し。」

「了解、文化祭の予算が余ったから他にも余剰する見込みのところがないか見てみるぞ。」


修学旅行前に最低限学校側の許可を得ておいた方がいい。

帰ってきて少ししたら期末試験が始まってしまうからだ。

そんなこんなで修学旅行前日まで、香緒里たち生徒会はバタバタ動いていたのだった。




フランスからの帰国翌日から、今度は全校生徒への告知とイベントの内容を詰めだす。


「やっぱりクリスマスっぽいことはしたいですよねぇ、プレゼント交換とか。」

「参加者からお金出してもらうのはちょっと負担じゃないか?」

「そうなんだよねぇ、颯斗くんなんかいい案なぁいー?」

「考えてるけどなかなか思いつかない。」


里華と颯斗はそう話す。

クリスマス会と銘打っている以上、何かしらそれに即した形の方がいいだろう。


「今のところ出てるのがビンゴ大会とマルバツゲーム…………あと何か一つくらいやりたいとこではあるよね。」

「食事の問題はなんとかなったしな。」


クリスマス会の日は終業式の後、23日。

夕方からの開催とし、食堂の方々に交渉し、その日に出すクリスマスメニューの夕飯をビュッフェ形式にし、会場である第一体育館に準備してもらうこととなった。


「ツリーはさすがに準備は難しいからねー……。」

「クリスマスっぽい飾り付けはするけど……。」


香緒里は更に頭を捻る。

有志を募って飾り付けのものは手作りする予定である。

大きなクリスマスツリーや電飾などはさすがに準備は難しい。


「クリスマスに因んだ校内宝探し兼謎解きっていうのはどう?」


時行がそう提案する。


「面白そうだけど、謎解き考えるの難しくない……?」

「まぁ頑張ればなんとかならなくはないだろうけど……。」

「佐倉先輩考えられるんです?」


香緒里、柚希は難しい顔をし、颯斗は訝しげに時行を見た。

時行は、「俺が考えられるわけないじゃーん」と手を振り笑う。


「でもいるじゃん、適任が。絶対断らなくて、絶対いい問題考えてくれる人。」

「えー?誰ですかぁ?」


里華に問われ、時行は香緒里の方を見た。


「秀人なら、かおりんが頼めば絶対やってくれるでしょ?」

「時行………お前、勇気あるな……。」

「あれがあってよく頼もうと思えるわね。メンタルがすごいわ。」


一輝と柚希から呆れの視線を受けながらも時行は特に気にせず、香緒里に「聞いてみてー」と言っている。


「佐倉先輩ってある意味大物なのかもしれませんね。」

「お、珍しくはーくんが褒めてくれてる?」

「ある意味、です。乗るか反るかだったら絶対反るタイプです。」



------------


「宝探しの謎解き?」

「うん。ちょっと案に上がってるんだけど………秀人、文化祭でも脱出ゲームとか考えてたし、手伝ってくれたら嬉しいなぁって思って。」


夕食のタイミングで香緒里は秀人に先程のことを話す。

遠慮がちにそう頼む香緒里に、秀人は二つ返事で「わかった、やるよ。」と言った。


「え!ほんとにいいの???」

「まぁ、面白そうではあるしな。」

「ありがとう、とっても助かる!」


嬉しそうに笑う香緒里を見て秀人は微笑む。


「……絶対香緒里といられる時間増えるからだよね。」

「だろうなぁ。香緒里が無理しないように見ていられるだろうし。」


沙世と真は小声でそう言い合う。

そもそも香緒里から頼み事をされて秀人が断ることはない。

香緒里が頼み事することが少ないのもあるが。

ともかく、頼られて嬉しくないはずがない。


「あ、そういえば香緒里ちゃん、クリスマス会の飾り付けで悩んでなかった?」


後ろのテーブルにいた圭が振り返って聞いてきた。


「うん、クリスマスっぽい飾り付けは作ってしようとは思ってるんだけど、ツリーないからなーって。」

「そしたらさ、うちにあるクリスマスツリーと電飾使わない??俺らが今家にいないから一部使ってないのがあるらしいんだよ。」

「それはありがたいけど……でもいいの?」


気持ちは嬉しいが、個人の家の物である。

借りてもいいのかとちょっと悩んでしまう。


「忘れたのか?ここの高校はうちの傘下だ。うちから物を提供してもおかしくはない。」


圭の代わりに亮は答えた。

実はこの緑ヶ丘高校は鮎川グループが経営している。

将来世の中で活躍出来る人材を育成するために、自主自立を大事にしている。

そのため、私立で設備は綺麗なのに学費は安いのだ。

入学試験も学力より面接等を重視していたらしい。


「遠慮しないで借りてあげてー。亮がもう許可取ってあるから。」


奈津が付け加えて言う。

じゃあそれなら、と有難く貸してもらうことになった。


こうして、なんとか期末試験の1週間前までに企画をまとめることが出来た。

試験明けからは本格的な準備のスタートである。



------------


無事に期末試験を終えた香緒里たちは放課後、生徒会室に集まって、2週間後に迫るクリスマス会の準備を進める。


「じゃあ柚希は全校生徒に配るお知らせ作り、トッキーと颯斗で必要物品のリストアップ終えて、明日買いに行けるようにして。里華ちゃんは食堂の方にメニューの詳細決まってるか聞いてきて。一輝は私と会場のセッティングとタイムテーブルについて考えるよ。」


香緒里が指示すると皆「了解」と言って作業に取り掛かる。

有志の生徒に作ってもらう飾り付けを何にするかも考えなければならない。


「ゆず、段落整えたいならこっちのボタン。」

「え……?あ、ほんとだ。意外とパソコン出来るのね。」

「この人、ほんとやれば出来る人なんですよ……やる気に波がありすぎるのが困ったところですけど。」


横でパソコンを使ってお知らせを作る柚希の手元を見て時行が言う。

的確なアドバイスを貰った柚希は驚いて時行を見、それに対して颯斗は溜息混じりに言った。


「二人とも俺の評価ひどくなーい?」

「腹立たしいことに、こいつ成績もいいんだよな。」

「カズまで!まぁ確かに成績は結構いいよ、会長には負けるけどね〜。」


やれば出来るのにやらないのが時行。

流石に今回は頑張ってやっているが。


作業を進めていると、生徒会室のドアがノックされる。

香緒里が返事をすると扉が開き、秀人が入って来る。


「頼まれてた謎解き、出来たぞ。」

「え、もう!?早くない……?」


香緒里は立ち上がり、秀人から書類を受け取る。


「全員同じルートになると分かりやす過ぎるから、3ルート用意してみた。」

「シゴデキかよ。」


一輝が突っ込む。

秀人が考えた謎解きをとりあえず生徒会メンバーで解いてみることにした。


「なるほど、次の場所への指示出しの問題と、最終問題に繋がるための問題の2種類があるわけだ。」

「そういうこと。指示出しの問題の方はかなり分かりやすくした。あんまり時間掛けすぎても後のスケジュールに影響あるだろ?」

「さっすが秀人、配慮が行き届いてるぅ!」


難易度としてはすごく難しいわけではなく、謎解きに慣れてる人ならば時間がかからずに解けるであろうレベルの問題。

校舎内を歩き回ることになるので、その時間を加味しての難易度設定なのだろう。


「ちゃんとクリスマス仕様にしてくれたのね。」

「もちろん、そういうリクエストだっただろ?」


香緒里は、もし出来たら、というレベルで言ったのだがそこに完璧に応えてくれるあたりさすがである。

改めてその仕事の速さとレベルの高さに生徒会メンバーは感心する。


「とりあえず、大丈夫そうか?」

「うん、全然問題なし。秀人も部活で忙しいのにありがとね。」

「役に立てたなら良かったよ。翔太たちも会場の飾り作りや当日の準備、出来るところは手伝いたいって言ってたぞ。」

「ほんと?それは助かるな〜また改めてお願いしよ。」


それじゃ部活行くから、と秀人は出て行った。


「じゃあこの内容をデータに落とし込んで、印刷とかもまたしなきゃね。」


あと校内図もあった方がいいかな……あと飾り付けとかのお手伝いの募集と………と香緒里はメモしだす。


「改めて、新谷くんってほんとハイスペックよね。」

「それと並んでも違和感ないくらいの会長のスペックもすげーと思うけどな。」


続きの仕事をしながら、柚希と一輝はそう話す。

ともあれ、残り少ない時間で準備を進めていかないといけない。


クリスマス会まで、あと2週間。

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