エピローグ
修学旅行から帰ってきた翌日。
2年生は代休となっていたが、香緒里は午後から生徒会室にいた。
やる事が溜まっているのだ。
一輝や柚希も来ていた。
時行は爆睡してるとのことで来なかったが。
通常の授業もあり、部活もある颯斗と里華は来ていない。
夕方になると一輝や柚希は流石に疲れたとのことで寮の方に戻って行った。
ふと窓の外を見るともう暗かった。
時刻はもう17時過ぎ、そろそろ戻らないといけないな、と思っていると生徒会室のドアがノックされ、扉が開いた。
「帰国直後なのに無理しすぎじゃないか?」
「秀人……。どうしたの?」
少し呆れた表情で秀人は言う。
「迎えに来た。一輝から会長を早く仕事終えさせて帰して欲しいって頼まれたんだよ。……まぁ、どっちにしろ行こうとは思ってたけど。」
「いなかった期間の、颯斗と里華がやってた仕事の確認とか、あとは今度のイベントの事とか、気になってたんだよね…………。」
無理はしてないよ、と香緒里は言う。
時差ボケや疲れを取るための代休となっている日にやるのがそもそも無理なような気もするのだが……。
「……眠くないか?」
「うん、昨日の夜はぐっすり眠れたから大丈夫。」
「そっか。」
流石にそろそろ下校時刻になるため、香緒里は帰り支度をし始める。
鞄にファイルや筆記用具を仕舞い、立ち上がってコートを着る。
「修学旅行ももちろん楽しかったけど……やっぱり秀人とすぐに会えるいつもの方がいいなぁ。」
生徒会室の電気を消しながら香緒里は呟く。
一緒のクラスだったらまだ違ったのかもしれないが、クラスも違い、ホテルでも朝食会場でしか会えない。
いつも一緒にいる時間が長い分、寂しく感じた。
ドアに手を掛け、出ようとした時。
秀人はその手を後ろからそっと掴んだ。
振り向いた香緒里の顔の横の扉に手を付き、優しくキスをする。
「あ、あの………秀人……?」
「帰ったら、って言ったろ?」
「言いました……。」
顔を赤くした香緒里は秀人の目を見た。
柔らかいその視線に胸がドキドキして来る。
「修学旅行中…………ずっと香緒里にキスしたかった。…………ダメか?」
そう、頬に唇に指先で触れながら低く甘く、優しい声で秀人は言う。
そんなの、断れるわけがない。
「ダメじゃない…………。その、私も……キスしたい。」
そう言うともう一度キスをされる。
そして少し強く抱き締められた。
「香緒里、ずるい。……でも、かわいい。」
耳元でそう囁かれると、心臓の音が速まる。
秀人の方が絶対ずるい。
部屋も、外も暗い。
「香緒里……?」
少し目線を逸らした後、ゆっくり秀人のことを見つめる。
「秀人…………好き、大好き。」
腕の中でそう呟くと、秀人は一瞬その身を固くした。
その少し潤んだ瞳から目が逸らせない。
片手で香緒里の頬を優しく包む。
そして、目線をゆっくり近付けながら、甘く甘く伝える。
「俺も香緒里のこと、大好きだよ。」
ほとんど誰もいないかのような校舎で、二人はなかなか会えなかった時間を埋めるかのように、長い長いキスをする。
月明かりだけが二人を優しく照らしていた。




