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一期一会  作者: 雪奈
第12章 秋めく文化祭
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137/214

9、二人きり



『今年の一年のミス緑高ミスター緑高、2人とも生徒会かよ〜。』

『画面偏差値高め生徒会てこと???』

『一部な、一部。』

『なぁもしかして俺をディスってる!?』


今年のミスコンミスターコンのMCは例によって時行と原田である。

1年生のミス緑高ミスター緑高は、里華と颯斗だ。


特に初めて里華を見た時、雪音並に美人だなと思っただけある、と香緒里は舞台袖から二人を見て考える。


「佐倉先輩、もう裏戻ってもいいですか。」

『感慨も何もねぇなぁ!いいよ戻って!』


後輩が冷たいよぉ!と嘆く時行を見て、会場内から笑い声が上がる。


『2年生のミス緑高ミスター緑高の発表でーす。』

『なぁこれ、もういっぺんに言っていいだろ?』

『いいんじゃね?』

『はーい、2年生は見事二人とも2連覇!!安西雪音さんと新谷秀人くんでーす!』


去年のように雪音と秀人は壇上に上がる。


『どうです?2連覇の気分は。』

「どう、と言われても……。」

「特になし。」

『え〜そんな〜。』


雪音は困ったように笑い、秀人は短くそう言う。


『あ、そういえば安西さんと僅差でうちの会長が2位だったんだよな〜。』


香緒里も結果をもちろん知っていた。

ファンクラブがあるくらいだから当然と言えば当然なのだろうが、香緒里は「なんで……」と結果を見て不思議な気持ちになった。


「え?そうなの?じゃあ私辞退した方がいいかしら。」

『いやいやいや、それはダメだよ会長に怒られちゃう。

あの人、2人が2連覇って聞いて、当然でしょっていう顔をしながらめちゃくちゃ喜んでたんだよ??』

「「え、かわいい。」」


時行の言葉に二人はハモる。

会場は湧いた。


「トッキー、時々私をネタにするよね……。」

「まぁ会長の話出すと喜ぶ人が一定数いるからね。」


香緒里が言うと隣に立つ柚希がそれに対して答える。


「あとは、あの2人、ステージで喋るタイプでもないから、会長の話題出せば乗ってくれると思ったんだろ。」


柚希と反対隣に立つ一輝も言う。

時行は考えていないようで考えているのだ、多分。



-------------


3年生の発表に移ったので、秀人と雪音は壇上から降りる。


「先行ってるね。香緒里のとこ、行くんでしょう?」


秀人が動き出す前に雪音はそう声を掛ける。


「…よくわかったな。」

「一応私たちも付き合い長いからね。なんとなくわかるわよ。」

「それもそうか。」


じゃあ後で、と雪音は翔太たちの方へと戻って行く。

秀人はステージ裏に周り、生徒会のいる天幕へ顔を出す。


「あれ?秀人、何かあった?」


香緒里が気付いて寄ってくる。

その手をちょっと引きつつ、秀人は一輝の方を見る。


「香緒里、連れてっていいか?」

「あーいいよ、閉会式まで仕事ねーし。」


一輝の隣で里華や柚希も頷いている。


「秀人が連れてった方がちゃんと休んでくれるだろ。よろしく。」

「了解。閉会式までには帰すよ。」

「えぇぇ?」


秀人はそのまま香緒里の手を引いて歩き出す。


「秀人……?」

「んー?」

「どこ行くの?」

「考え中。」


そう言いつつ、校庭から離れていく。

生徒の大半は校庭におり、寮のある方へ行くにつれ、人もいなくなってくる。

寮の近くのベンチまで来ると秀人は香緒里を促して座らせ、自分もその隣に座る。


「どうせまた休んでないんだろ?」

「……まだ、大丈夫。」

「限界を攻めるなよ。」


秀人の言葉に香緒里がそう答えてきたので突っ込む。


「無理してるつもりは、そんなにないの。文化祭、みんなが楽しそうにしてるのを見て、嬉しかったから。」

「そっか。」

「時間かけてたくさん準備したから、喜んで貰えて嬉しいんだ。」


嬉しそうにそう話す香緒里を秀人は見つめる。

そんな顔をされたら、何も注意出来なくなる。


「でも、やっぱり秀人の隣が一番落ち着くなぁ。」


ぽつりと香緒里が漏らした言葉に、秀人はちょっとだけフリーズする。

文化祭中も時折会ってはいた。

けれど常に他に誰かがいた。

完全に2人きりなのはかなり久しぶりだ。

その中でこの言葉。


秀人は黙って香緒里の髪を梳いた。

こちらを見上げてくる視線にまた狂わされそうで、少しだけ視線を外す。


「……コンテストの時さ、気付かれるだろうなとは思ってたんだよ。でもあんなに早いとは思ってなかった。」


昨日の男装女装コンテストの時の話を秀人は話す。


「目が合った瞬間だろ?」

「うん、そう。出てきた時に、あれ?って思ったんだけど、目が合って確信したの。」


秀人から向けられる視線は姿が変わっても変わらなかったのだ、間違うはずがない。

そう香緒里は思っている。


「でも、秀人が綺麗になりすぎてて……それにはびっくりしたかな。」

「……普段とどっちがいい?」

「そりゃ、もちろん普段の秀人の方がいいけど……。」


近付くと香緒里は少し顔を赤くして逸らした。

しかし、その後に秀人の顔をジッと見つめる。


「香緒里……?」

「やっぱり、かっこいい秀人の方がいいな……。」


意図せずの上目遣い。

香緒里から言われ慣れない「かっこいい」の言葉。

恐らく無意識なのだろうとは思う。


耳を赤くした秀人は香緒里の肩に頭を乗せる。


「秀人?」

「なんでもない。」


かわいすぎる。

わかっていないのか首を傾げるその仕草さえも。


「香緒里。」


耳元で、少し声を低くして優しく呼ばれると、香緒里は胸の奥がキュンとした気がした。

思わず秀人の服の裾をギュッと握る。

ドキドキして、顔に熱が集まるのを感じた。

目が合うともう逸らせない。


「その顔、反則。」

「え……?」


抱き寄せられ、キスをされる。

少し長めのキス。

唇から離れた後、額にもキスをされる。


「かわいい。」


そう囁かれる。

その表情は優しく甘い。


「秀人……ずるい。」

「香緒里が好きなだけだ。」


腕の中で呟くと、そう返ってくる。

心臓が持たない。


「……どんどん好きになっちゃう……。」


思わず小さく言った言葉は、秀人を固まらせた。

ずるいのはどっちだよ、と秀人は思い、抱きしめる力を強めた。




喧騒がはるか遠くに聞こえる。

文化祭ももうすぐ終わりを迎えようとしている。


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