2、いざ大阪へ
お盆休みに入る直前、空手部が帰ってきた。
緑ヶ丘高校唯一のインターハイ出場者かつそれが生徒会長、ということで出迎えの人数が凄かった。
生徒も先生達もほぼ総出での門での出迎え。
「迂闊に近付けないくらいの人気やなぁ。」
「名実共にうちの高校のスターになった感じね。」
それを遠巻きに見ながら美愛と沙世は言う。
「ちょっと悔しい気持ちと友人として誇らしい気持ちに挟まれている。」
「そこで悔しく思うのが圭が残念で凄いところだよな……。」
微妙な表情をする圭に真はそうコメントする。
悔しいのは自分も注目を浴びたいからだろう。
未だにモテたい欲求はあるらしい。
「これで秀人と不釣り合い、なんて言う人達はほぼほぼ消滅するでしょうね。」
「ビッグカップル過ぎるだろ。」
雪音が今度は言い、悠が突っ込む。
高校入学時から注目を浴びていた秀人に付随して様々な目線を向けられてきた香緒里。
成績常に上位層、空手部のエースであることが徐々に知れ渡り、生徒会長になり、今回のインターハイ出場である。
学力は全国でもトップレベル、運動神経抜群、そして芸能人ばりの容姿の秀人にも引けを取らないくらいのレベルになった。
もちろん、本人たちはお互いのスペックなどさっぱり気にしていないのだけれど。
「新谷くんや亮くん、圭くんがいるからみんなに忘れられがちだけど、香緒里ちゃんも相当スペック高いよね。」
由美の言葉に皆頷く。
問題なのがそれを本人が自覚してないところである。
徐々に人集りが引けてきて香緒里達の姿がよく見えるようになってきた。
空手部も解散になったらしく、各々寮の方に戻って行く。
こちらに気が付いた香緒里、奈津、亮が寄って来る。
香緒里は一直線に秀人の方へ行き、「ただいま。」と顔を見上げて言う。
「おかえり、お疲れ様。」
秀人は微笑んでその頭を撫でる。
「うちらのこと見えてる????」
「見えてねー気がするな???」
美愛と悠は思わず突っ込んだ。
「ベスト8だって??すごいよねぇ。」
「ありがとう。でもちょっと悔しいんだよねぇ。来年は優勝したい。」
「目標が高いな。」
沙世に言われ、香緒里はそう言う。
悔しさはあるものの、既にもう切り替えている様子である。
「香緒里とってもかっこよかったよ〜後で動画見せるね!」
バッチリスマホに試合の動画を収めていた奈津が言う。
「悠、新幹線取れたぞ。」
香緒里の周りで皆が話す中、亮は悠にそう話し掛ける。
「おーサンキュー!さすが亮だな。」
「丁度うちの旅行代理店の枠で空きがいくつか出たからな。6人席1つと4人席2つで押さえてもらった。」
「この時期に取れたんすごいわ。ありがと。」
美愛も亮にお礼を言う。
そしてまだ香緒里にだけしっかり伝えてないことを思い出す。
奈津は亮を通じてもちろん聞いていてる。
「せや、香緒里。戻ってきて早々なんやけど、明後日から大阪行かへん?」
「え?大阪???」
「そう。久しぶりに帰省するんやけど、良かったらみんなでどうかなぁ思て。うちの実家、旅館やからそこに泊まればいいし。」
「え、旅館なの!?というかみんな知ってるの……???」
香緒里にはインターハイに集中してもらいたいから後で伝えることになっていた。
かなり直前になってしまったが。
「大阪かー行ったことないから確かに行ってみたいかも。みんなで旅行も楽しそうだし。」
「じゃ、決まりやな!新幹線は鮎川亮に押さえてもらったし。」
「あとは荷造りだけだね!大阪グルメも楽しみー!」
「食べるぞー!」
わーい!と沙世と直樹が手を上げた。
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「オレ、新幹線初めて乗るんだよねー。」
「あれ?そーなの?」
「うん、日本帰ってきた時は直接埼玉のおばあちゃんち行くか、大阪の美愛んち行くかだったから。」
新幹線のホームに来ると直樹は並ぶ新幹線を見てキラキラした目をしていた。
「日本の新幹線、すごいって聞いてたから楽しみ!」
「まーでも新幹線はいつ乗ってもちょっとワクワクするよね〜。」
沙世も楽しそうにしている。
手にはちゃっかり売店で買ったお菓子を持っている。
「普通車両、初めて乗るんだよなー。」
「ここに来てボンボン設定が生きるな?」
「いや設定じゃないんだけどね!?」
圭と秀人が漫才のようなやり取りをする。
2泊3日の大阪旅行。
スキー旅行の時と同じく、井口が同行してくれている。
美愛と直樹以外は旅行後に自宅に帰省することになっている。
新幹線を待つ間、着いたら何をするかなどをわいわい話し合ってる中、美愛は新幹線が来る方向を見ていた。
「……無理しなくてもいいんだぞ。」
その美愛に悠はそう声を掛ける。
「大丈夫、帰る。」
「そっか。なんかあったら言えよ。」
「うん。」
短くそう交わした。
その二人のやり取りを由美は少し離れた所から見ていた。
「由美ちゃん?」
「あ、圭くん。」
「二人、見てたの?」
「うん…………。」
二人と圭を見比べて由美は何とも言えない表情をする。
それを見てちょっと察した圭は苦笑いする。
「あー、俺はもう気にしてないから大丈夫だよ??」
「そう……?なら、いいんだけど……。美愛ちゃん、多分大阪帰るの、始めてなんだよね。」
「そうなの?」
「中学の時もずっとおじいちゃんちにいたし、高校入っても帰るのはそっちだったから、多分……。」
両親が大阪にいるのに祖父母宅に住んでいることを中学の頃から不思議に思っていたが、スキー旅行の時にその理由が判明した。
「だから、大丈夫かな……って、思ってたんだけど。悠くんがいるなら、大丈夫なのかなと思って見てたの。」
「なるほどね。……それなら俺からも大丈夫の保証をしとくよ。悠なら美愛になんかあった時でも、なんとかしてくれるよ。」
圭はそう言って由美に笑いかける。
弟の保証がついているのなら、尚更心強い。
由美もその笑顔に釣られて微笑んだ。
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「なんかこうしてトランプしてると修学旅行思い出さない?」
香緒里、雪音、沙世、秀人、真、翔太と並んで向かい合わせに座った6人席でババ抜きをしている時に沙世が言う。
「あー懐かしいねぇ。確かにあの時もこうやって遊んだもんね。」
「秀人のUNOの弱さが判明した日な。」
「いやあれはお前らが俺を寄って集って引かせまくったせいだろ???」
「秀人の引きの悪さも相当よ??」
「そういえばソシャゲのガチャ運も悪いもんな。」
基本的に引きがあまり良くないのかもしれない。
釈然としない顔をしながら、秀人は一番に上がる。
ババ抜きや大富豪なら負けない。
自分の手札や相手の手札の動き、相手の表情や視線を見るからだ。
ちなみに沙世が一番分かりやすい。
「あー!そっちにヘビ行ったで!」
「げっ、マジかよ!こっちカタパッド倒してんのに!」
「ごめんオレ今ハシラやってる〜」
「えええこれどうしたらいいの???」
一方美愛、由美、悠、直樹で固まる四人席では某イカのゲームをケータイゲーム機でやっていた。
由美は持っていないが、圭に「たまにはやってみたら?」と勧められて試しにやってみたが普段ゲームをやらないせいもあり、なかなかにボロボロである。
「圭はあっち行かなくていいの?」
そこから少し離れた所には奈津、亮、圭、井口が座る。
「うん、俺はいいかなー由美ちゃんにゲーム機渡しちゃったし。今はこっちでゆっくりするよ。」
亮と井口はパソコンを開き、何やら仕事をしている。
奈津が暇をしないように来てくれているのだろうと察した。
「奈津は疲れてない?インターハイ直後だけど。」
「私は大丈夫だよ〜見てただけだしね。多少旅行疲れみたいなのはあるけどね。」
「移動が長いと疲れるよねー。」
他愛ない話を車窓を眺めながらする。
「普通車両、初めて乗ったけど確かに席間隔狭めだね。」
「確かにねー。」
「でもみんなでワイワイ旅行するには、こっちの方が楽しいかも。6人席もあったりするし。」
そう、圭は楽しそうに笑って言った。
チラリと後ろを振り替えり、美愛達を見る。
楽しい思い出で終わることを願って。




