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一期一会  作者: 雪奈
第10章 梅雨闇に揺らぐ
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閑話 声にしなくても 前編


体育祭当日の朝。

いつものように沙世たちは食堂に向かう。

男子組は既に到着して、席を取っておいてくれている。


「おはよー。」

「香緒里は?」

「朝早くから最終の打ち合わせとか言って、うちが起きた頃にはもう出てくとこやったで。」


香緒里がいないことに気付いた秀人が同室の美愛に聞くとそう返ってくる。

生徒会は朝からもう動き出しているらしい。


「体育祭か…………。オレ、1日外にいられるかな…」


体力が無さすぎる直樹は今から遠い目をしている。

今日はめちゃくちゃ天気がいいし、暑くなる予報。


「無理だったら、救護室もあるらしいからそっちに行ってもいいと思うよ…?」


由美がそう提案すると、そうしようかな……と呟いている。

対して悠のテンションは高い。

元々イベント事大好き×運動、の体育祭だ。

めちゃくちゃ張り切っている。


「絶対秀人たちのクラスに負けねーからな!」

「今回の優勝商品、なんだっけ?」

「購買のアイス3回無料券、って香緒里が言ってた気がするわよ?」

「今回は学食無料券じゃないんだ。」

「アイスかーまぁ、やるなら負けたくはねーな。」


悠に仕掛けられた秀人は優勝商品を雪音に確認した後、そう言った。

負けず嫌い、というわけではないが、手を抜くタイプでもない。


「やっぱり真と同じクラスがよかったなー。応援しづらい〜いや応援するけど、全力で。」

「こればっかりは仕方ないからなぁ。」


不満そうな顔をしている沙世の頭を真はちょっと苦笑いしながら撫でる。


「みんな敵同士だもんね。まぁでもクラス違っても応援したいよね。」

「……奈津、もしかして俺と亮が一緒に走ることがある場合、亮のこと応援するのか…??」

「え?当たり前じゃない?」


同じクラスなのに…!!!と圭は嘆く。

当然だろ、という顔を亮はしながら朝食を食べ進めていた。


「まぁでもそこは仕方ないよねー。応援したいし、応援してもらいたいよね。」


ねー?と雪音は隣に座る翔太を見ると、そうだねぇ、と返ってきた。




-------------------


『開会式も終わりまして!早速第1種目の100m走の準備が始まっています。進行と実況は放送委員会委員長の2年B組バスケ部の原田浩が務めさせていただきます。同じく実況と解説はー』

『はいはーい、生徒会会計の2年E組野球部の!佐倉時行がやりまーす!』

『全校生徒の皆さん、盛り上がる準備は出来てますかーー!?』


賑やかなアナウンスと共に体育祭は始まる。

いぇぇぇぇい!と既に盛り上がっている。

生徒会本部のテントにいる香緒里は、果たして時行が実況解説で大丈夫なのだろうかと心配している。


『さぁ1年生の100m走が終わりまして、現在トップはB組!続いては2年生の100m走となります。さぁ男子第1レースのメンバーを見て気になる選手はいますか?』

『そうですねー、やっぱりC組の鮎川悠くんですかね。彼ちょっと頭は残念なんですけど、運動神経はめちゃくちゃいいんですよね〜』


余計なお世話だ!!とスタートラインに立つ悠が叫んでいる。


ピストルの音が鳴り、走り出す。


『おぉ〜先頭を走るのはやはり悠!!だが他のクラスも負けていません必死に食らいつきますが、更にスピードを上げてゴーーーーール!』


C組で歓声が上がる。

「やっぱり悠を第一レースにして良かったねーテンションぶち上がる!」

「ユウ、運動神経だけはいいねぇ。」

「直樹くんはその反対だもんね……。」


『さて第2レースもそろそろスタートとなります。大歓声を浴びているのはうちのバスケ部の次期主将、A組の新谷秀人!』

『いやーすごい人気ですねーそこのとこどうです会長?』

『え、私に振らないでくれる!?』


丁度放送席の近くに用があり来ていた香緒里に時行が話を振り、香緒里の声が放送に乗る。

会長ー!という女子の声が上がる。


第2レース、スタート。


『今黄色い歓声を浴びながらブッチギリで走っています!!そのまま他を引き離してゴール!』

『バスケ部なのが勿体ないくらいですね。』

『だが他の部活にはやらん!』


相変わらず速いなぁと思いながら香緒里は生徒会本部に戻る。


「会長、顔がちょっと緩んでるぞ。」

「え、うそ。」


一輝に指摘され、香緒里は頬を押さえた。

これ、後で秀人に報告してやるか……と一輝は生温かい目で香緒里を見ながら思う。



『さて男子第4レースも終わりまして次は女子のレースです。』

『第1レースの注目はやはり女バスのエースC組の渡辺美愛と女テニの王子のB組の根室璃子ですかね。』

『A組D組E組も特に速い選手を第1レースに集めた模様です。』


「美愛頑張ってーーー!!」

「璃子先輩ファイトですーー!!」


C組から美愛への応援が、そこかしこから璃子への応援が聞こえてくる中、レースはスタートした。


『やはり渡辺と根室のトップ争いか!!2人ともフォームが美しいです!』

『渡辺が今スピードを上げた!そしてゴール!!』


よっしゃ!と美愛は拳を突き上げる。

そして先にレースを終え、待機していた悠とハイタッチをする。

のを沙世がC組からスマホのカメラに収めていた。


女子のレースも3年生まで終わり、現在A組B組C組がほぼ横並びの状態となる。



『さて2年生ハードル走第2レースです。』

『ここはうちのエースピッチャーの沢田真が出ますからね〜クラス違えど応援したくなりますね〜』


自分のクラスの応援しろ!とE組の方から野次が飛ぶ。

沙世は既にスマホスタンバイ状態。


スタートすると真は軽やかに無駄なくハードルを越えて行く。


「真頑張ってー!!!」


もちろん一番にゴール。

第1レースを走ったA組の男子とハイタッチをする。


「体育祭、大満足……」

「沙世ちゃん、まだ始まったばっかりだよ…?」



『さぁ第3レースです。鮎川三兄弟の三男圭が爽やかに女子たちに手を振っている!』

『転べばいいのに!』

『トッキー、嫉妬は実況に乗せちゃダメじゃね?』

『あ、やべ。』


圭も単独トップでゴール。

やはり運動神経がいい。

そして女の子たちにお手振り&Vサイン。

ファンサもえぐい。


「あぁしていればただのイケメンなんだけどねー。」

「秀人たちと張り合うから残念なイケメンになるのよね……。」


それを見ていたD組の奈津と雪音が呟いた。


続いては二人三脚。

これには秀人真ペア、雪音奈津ペアが出る。


「真、本気で走っていいぞ。」

「え、マジ?」

「俺が合わせる。」

「んじゃ、頼んだわ。」


『2年生二人三脚、先程100m走とハードル走で1着を取った2Aコンビが走ります!』

『中学からの友人らしいですからね〜コンビネーションも期待です。』

『さぁスタートです………ってはや!!!』

『普通に走ってんのと変わらなくね!?』


思わず実況を忘れて感想が出てしまうくらいには二人の息はピッタリで他を寄せ付けない速さであっという間にゴールした。


『えーと…記録出ました、緑高の二人三脚の記録タイム歴代1位を塗り替えました!!』


大歓声である。


「エグイな、あの二人。」

「付き合いも長いし、ルームメイトだし、なんだかんだ一緒にいること多いからねぇ。」

「にしてもだろ。」


香緒里は本部で次の競技の動きを確認しながら一輝とそう話す。

二人三脚の次は道具の多い障害物競走なので開始までの時間が結構シビアだ。

集まった担当の生徒たちにどこからどう搬入するか指示していく。


『さー2年生女子の部です。男子生徒の注目はD組でしょうか?』

『去年のミス緑高もいますからねーさて安西上原組、ビジュがいいですね〜歓声が上がっています。』


「亮、しっかり?」

「問題ない。」


歓声に眉根を寄せているが目線は奈津の方しか見ていない亮を翔太は見る。

亮も運動神経は悠圭と並んでいいのだが、競技に全力を出す気は一切ないのか、午前中は部活対抗リレーまで出番がない。



『では続いて第4競技、障害物競走です。レース内容は、まず平均台を渡り、その後ネット潜り、グルグルバットをクリアすると借人競走となります。』

『借人競走のお題は私佐倉時行が独断と偏見で決めました!』

『では文句がある方は佐倉くんに全てお願いします。』


香緒里が全体競技以外に出る唯一の種目がこの障害物競走なのだが、出来れば避けたかった。

でも走るのは苦手なので出られる競技は限られる。

午後の方がやることが多いので午前中の部門に出たい、という苦渋の選択だった。


『それでは2年生女子の部。やっぱり注目は我らが生徒会長ですかね!』

『歓声上がってますね〜さすが生徒会選挙を圧勝で飾った吉崎香緒里!!』


「持ち上げるのやめてって言ったのに………。」


会長をやっているとはいえ、本来目立つことはそんなに得意ではない。

それでも注目を浴びてしまいがちなのが難儀なところなのだが。


『さぁ第一レース、一斉にスタートです!まずは平均台!』

『ここまではこれまで同様横一線ですね〜分かれ道はやはりネット潜りかー?』

『おぉっとここで手間取ってる人達がいる!』

『女子は髪の毛引っかかりやすいですもんねー』


香緒里は今日は部活の時より少し高めの位置でポニーテールをしている。

それが引っ掛かる。

同じような人達は他にもいた。


なんとか抜け出し、グルグルバットへと向かう。

ここが香緒里的に最大の難関である。


『会長回ってます!!でもなんかすごい遅い!!』

『あぁ回りきったけどすごい蛇行している!』


三半規管がめちゃくちゃ弱いのだ。

回るのなんてもっての外。


「あーー………やっぱりそうなるよな…。」

「秀人、知ってたのか。」

「前にそんな事言ってたからな。」


A組席で秀人は苦笑いをする。

助けてあげたいところだが競技中なのがもどかしい。

でもちょっとかわいいとも思ってしまう。


それは秀人だけではなかったようで、恐らく新谷吉崎カプファンクラブの会員達が「かわいい…」「愛らしい…」とザワついている。


「うぅ…まだちょっと回ってる……。」


ようやく借人競走に辿り着く頃には他の人たちはもう紙を持って走り出しているところだった。


『さぁついに会長も借人競走に辿り着いた!!』

『紙を見て何か考えている。迷っているのか?お題はなんだ!?』


香緒里はC組の方へ向かった。


「沙世、来てくれる?」

「え?私???」


その後、隣のD組に行く。


「雪音も。」

「私も!?」


『おぉっとー?会長は谷中さんと安西さん二人を連れてゴールに向かっている!!』

『二人ってありなのか…??』

『お題は今入ってきた情報によりますと………「親友」だそうです!!!』

『うわぁぁぁそれは確かに選べない!』



お題が分かった雪音と沙世は満面の笑みで香緒里に抱きついた。

一部から歓声が上がった。


『俺、新たなページが開けそう……。』

『原田気をしっかりしろ!!その扉はそれぞれの彼氏に絞められる未来しかないぞ!』





『さぁ一番に借人競走にたどり着いたのは鮎川圭!!』



「ところで圭はなんで障害物競走なんだ?」

「なんか面白そうだから出てみるって言うとったで。」

「なんだろう、地雷踏み抜きそうな気がする……」


悠、美愛、沙世がC組席でそう話す。

確かに圭くんならやりかねない、と聞いていた由美も思う。


『圭、こっちに向かってきたぞ!?』

『生徒会本部だ!会長を連れ出している!』


「すげー秀人からの視線が痛いんだけど!?」


香緒里の手を引いて走りながら圭は身震いした。

A組席の秀人の目がすごい冷えている。

後で土下座くらいしとかないといけないかもしれない。


『ちなみに多分お題は「会長」だと思います!!』


「トッキー後で絶対締める………香緒里をお題にするとか…。圭だからまだいいが、もし他の男だったら…」

「秀人、顔怖いんだが……!?」



他にも『イケメン』や『美女』のお題があり、それぞれ秀人、雪音が連れて行かれていた。

「なんで俺じゃないの!?」と圭は拗ね、香緒里はちょっぴりモヤモヤし、翔太も「後で一言トッキーに文句言おう。」と真顔で言っていたという。





午前中のメインイベントは、部活対抗男女混合リレーである。

空手部のような元々男女混合の部活はそのまま、バスケ部のように男女分かれている部活は合同でチームを組まれる。

もちろん文化部も走る。

得点には全く関係ないが毎年盛り上がる。


いつものメンバーでは、秀人・悠・美愛がバスケ部、圭がサッカー部、真が野球部、亮・奈津が空手部としてそれぞれ走る。


『さぁ始まりました部活対抗男女混合リレー!男子4人女子4人で交互に走ります!』

『第一走者、まず先頭に飛び出したのはバスケ部の新谷!!今回はトップバッターを務めて突き放す作戦だ!』

『同じ作戦の野球部ソフト部合同チームもトップバッターとして沢田を置き追い縋る!』


「よし秀人そのままいけー!!!」

「真、新谷に負けるなー!!!」


リレーに出ていないそれぞれの部員からはもちろん、他の部活からも応援が熱い。

生徒会席だと大っぴらに応援出来ないが、香緒里も手を止めてその走りを眺める。


『第2走者にバトンが渡されまして、今度は陸上部エースが追い上げる!!!短距離なら負けたくないでしょうからね!』

『文化部の皆さんも頑張ってください!!』


その後も運動部の中で一進一退を繰り返し、第7走者。


『ここで再び1位に躍り出たのはバスケ部渡辺美愛!!100m走でも見せた走りが光る!』

『おおっと空手部の上原が地道に順位を上げて3位まで出てきた!!だがしかし後ろからサッカー部の鮎川圭が迫る!』


ちなみにサッカー部に女子はないため、ハンデとして他の部が8人で走るところを4人で走る、つまり1人200mだ。


「悠、後は頼んだ!」

「おう任しとけ!!」


『今バスケ部のアンカー、鮎川悠にバトンが渡された!アンカーは200m走ります!』

『更に突き放すかと思いきや、ここで弟の圭が更に順位を上げる!1人だけ300mとなるが体力は持つのか!?』


「亮!!」

「わかってる。」


『ここで空手部上原から鮎川三兄弟長男亮にバトンが渡る!!まさかの三兄弟対決だ!!!!』

『すごい追い上げだ!前二人に追い付くか!?』

『追い付いた!!!だがしかし最後に悠が粘りを見せる!そして今ゴーーーール!!勝ったのはバスケ部だ!!』



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