クリフ・コールドレイクは戦場に帰った
埃っぽい空気、血と汗、鉄を鍛える臭い。
クリフはそれらの臭いを口いっぱいに吸い込んだ。
全てが鮮やかに見える。あぁ、なるほどこれが故郷というものかとクリフは思う。
故郷とは遠くにありて気付くもの。
「それもそうだ。戦場にいる時間の方が長いのだからな」
納得したクリフは軍議の間に向かう。
軍議の間では予想していた通り、シーザリウスが途方に暮れていた。
「あぁ、コンフォード卿! 待っていたんだよ!」
「クリフ・コールドレイク、ただいま戻りました」
「コールドレイク? え、どういうこと?」
クリフは何があったかをシーザリウスに説明し、その説明を聞いたシーザリウスはドン引きしたり、クリフの代わりに怒ったり、悲しんだりしてくれた。
「辛い、辛い旅だったんだなぁ、クリフ」
まぁ、過ぎてしまえばなんてことはないとクリフは思う。
もはや自分の心が故郷から離れてしまっていたことを実感できたし、逆に戦場にいる自分こそが自分らしいと感じることもできた。
そういう結果を思えば、そう悪い旅でもなかったろう。
「それで、殿下は何を困っているのですか?」
クリフは本題を尋ねる。すると返ってきたのは最悪の答えで──
「亜人・魔族同盟軍がまた攻めてくるみたいなんだよ。軍備を整えてるみたいだし」
そんなことは予想が出来ていたことだ。慌てることじゃない。
「それに勇者の奴も傷が治ったらしくて戦場に戻ってくるとか。どうしよう、クリフ」
クリフの口許に自然と笑みが浮かんだ。とうとう、あの勇者と決着がつけられることへの期待によるものだった。
「殿下、まずは他の将軍も呼び、軍議を行いましょう。対策についてはその場で」
クリフは戦場への期待を抱きながらシーザリウスに指示を出す。
どちらが主なのか分からないありさまだが、クリフはシーザリウスの相談役も任されている。なので、クリフが実際の指揮を執ることもあり得るだろう。
「では、戦の準備をしましょう──」
故郷へ戻ってきたクリフの眼は爛々と輝いていた。もはや、彼の地は故郷ではなく、故郷はこの地にあり。
かくして、クリフ・コンフォードの故郷への旅は終わりを告げる。
結果として彼が得たものは殆ど何もなく、新しい苗字くらいのものであったが、彼は決して不幸ではなかった。なぜなら、自分のいるべき場所を見つけたからである。もはや生まれた場所は故郷ではなく、いま生きる戦場という場所こそが故郷であり、自分のいるべき場所。
そして、クリフはきっと自分の居場所を守るために戦い続けるだろう。それこそ永遠に──
これにて物語は終了となります。
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