↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/51

収拾不可能

 思えば色々なことがあったと、クリフは目の前で喧々諤々の論戦を繰り返す、自称クリフの父を前にしながら今までのことを思い出す。


 きっかけは兄の手紙から、そして故郷に帰る旅に出たら、通り道の町や村で困っている人々がいたので助けた。その内にクリフに領地を継がせたい派閥と継がせたくない派閥の争いに巻き込まれた。故郷に帰ってきてみると故郷は荒れ果てていたので、アレクサンダーの伝手を頼って近衛騎士団を呼び、治安を改善。少し落ち着いてきたので実家に戻ってみると、見舞いをした父からは襲い掛かられ、兄からは普通に歓迎された。とりあえず、兄に重税をやめさせ、治安維持の方法を見直させたのでコンフォード男爵領は平和になった。だが、今度は自分の父がヘンドリクセンではないかもしれないという可能性を示唆され、今ではクリフの父が揉めている真っ最中だ。


「……め、面倒くさい」


 もはや、領地を継ぐ可能性もないのだし、自分はさっさとこの場から抜け出して前線に帰りたいと思い始めたクリフ。

 実家だのなんだのは、もうどうでもいい。住む場所も永久に軍の官舎で良いし、俸給を貰い、退役の年齢まで軍に務め、老後は軍からの年金で生活すればいいとすら思い始めてきた。

 姫と聖女が自分に対して、好意を抱いているらしいと聞いたが、それだって今のクリフにすれば面倒以外の何物でもない。

 なんというか、どちらかもしくは何かを選ばないといけないが、選ばなかった方に対しても気を遣う必要がある状況に辟易していた。


「クリフ殿、お茶でもどうかな」


「クリフ殿、一緒に釣りはどうかね」


「クリフ殿、狩りでも一緒にどうだ?」


「クリフ殿、夕食を一緒にどうかね?」


 うーん、面倒くさい。

 クリフは心の底から思うのだった。今まで一度もそんなことに誘ってきたことのない年上貴族が媚びるように誘いまくってくる現状に気味の悪さを感じていた。


「あ、頭がおかしくなりそうだ」


「もう、これは閣下の体調のためにも夜逃げするしかないのでは?」


 サルトゥーラの町長の好意で町に家を用意してもらったクリフ。

 クリフはそこに従者のオリヴィエと妙に好意的な貴族たちから隠れるように住んでいた。


「いやいや、ヤバいですぜ大将。貴族連中が噂を流しだしました」


 買い物から帰ってきたゴーツェルが深刻そうな表情を浮かべている。

 ゴーツェル曰く、クリフは宰相の隠し子だったとか、軍務卿が今まで隠していたがクリフは実の子だったとか、どこから急に出てきたのかという噂ばかりだ。宮廷で活躍する高位貴族ともなれば、噂を流して世論を誘導するのも容易いということだろう。


「やぁやぁ、相変わらず苦悩しているな、我が友よ」


 アレクサンダーがヒルドレイク卿と見知らぬ貴族を一人連れて家に入ってくる。

 よくよく考えれば、アレクサンダーが余計なことに気づかなければ、こんな事態にはならなかったのだ。

 クリフはそのことに気づき、アレクサンダーに掴みかかる。


「もとはと言えば貴様が余計なことを考えなければ……」


「落ち着いてくだされ、コンフォード卿」


「駄目です、コンフォード卿。腐っても相手は皇子です」


 二人に引きはがされ、クリフは少し冷静になる。

 だが、冷静になったところで、自分を取り巻く状況に変わりはない。


「アレクサンダー、ところでそちらの御仁は?」


 クリフは見知らぬ貴族について尋ねた。この状況でわざわざ連れてくるのだから、何かしら自分の助けになる相手だろうとクリフは考えるのだった。


「あぁ、こちらの御仁はマリウス・コールドレイク。コールドレイク侯爵家の嫡男だ」


 どうやら、アレクサンダーは味方ではないらしい。この期に及んで厄介な貴族をさらに増やすとは。クリフはアレクサンダーが敵になったことを確信し、剣を抜き放つのだった。


 窮すれば鈍する。ただし、剣聖将軍の剣は窮地にあってこそ鋭さを増すのである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。