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101人パパさん

 テレジア・イスマイルのもっとも凄まじい才能は将来性を見極める力だろう。

 彼女と関係のあった男性は現在の帝国において、そのほとんどが要職を担っている。

 シャルルの父ロスコー伯爵も宮廷画家として確固とした名誉を持つ貴族であり、伯爵として広大な領地も有する。息子に従軍吟遊詩人としての活動を認めるなど若干、奇矯なところはあれど、概ね真っ当な貴族であった。


「──というわけで、コンフォード卿には私のようなパパ候補がこれから先いっぱい訪れると思うのだよ。だから、練習として親子の再会やってみたのだが、いかがだったかね」


「何もかも全く訳が分かりません」


 クリフが困惑を顔に出すとロスコー伯爵はハテと首をかしげる。


「もしや、何もご存じない?」


「ええ、何も知りません」


 そう言うとロスコー伯爵はわざとらしく驚いて見せ、続けて冷静に状況を説明するのだった。


「まぁ、あれだ。いま帝都の皇城では、もしかしたら自分がコンフォード卿の父親なのではないかという疑心暗鬼に駆られるものが続出していてね」


「なぜ、そんな」


「それはまぁ、キミの父上と母上の折り合いの悪さと。キミの母上の素晴らしき恋愛遍歴のおかげかな。まぁ、普通の貴族というか、生まれた子供が普通の子なら無視して放っておくのだが、残念ながら──いや、喜ばしきことにコンフォード卿だからね。自分の息子だと嬉しいと思うものはいるさ」


「は、はぁ……?」


 自分の母親の恋愛遍歴? そんなことを急に言われてもクリフには何も分からない。クリフの実母はクリフを産んだ時に亡くなっているのだから、その人となりを知る機会など今までにない。


「あぁちなみに、最初の私がお父さんというのは冗談だよ。私は妻以外の女性を愛していないし、妻以外と関係を持ったこともないからね」


「はぁ……」」


 そうですか。とクリフは思いつつ。何となく一番、身綺麗なロスコー伯爵が状況を伝えに来てくれたのだと察するのだった。


「兄上、自分はサルトゥーラの町の本陣に戻ります」


「うん、わかった」


 自分には関係ないことだと無関心なルドルフは戻るといったクリフには土産を渡して、戻らせた。

 クリフが来たことで領内の税率も下がり、治安も良くなったので、ルドルフは感謝しかなかった。なので、とりあえず、収穫した野菜を渡してクリフを戻らせるのだった。


「いったい、どういうことか説明を!」


 クリフは本陣に戻るなり、アレクサンダーに状況の説明を求めようとしたのだが、そこにいたのはアレクサンダーではなく。


「久しいなコンフォード卿」


 クリフの上役にあたる軍務卿その人だった。

 一体何故、軍務卿がいるのか理解できなかったが、軍務卿は手でクリフに座るように促す。


「コンフォード卿いやクリフよ。お前は何歳になった」


「27歳ですが」


 そう答えると軍務卿は目をわずかに潤ませてクリフの手を取る。


「そうか、随分と長い間苦労をかけたな。だが、これからは心配はいらん。儂に任せておけば、全て上手くいく」


 いや、ちょっと、これは……クリフは嫌な予感を覚えた。

 まさかロスコー伯爵の言っていたことが冗談ではないとしたら?


「いや、いやいやいや、冷静になりましょう。軍務卿閣下。もしや、酒場の与太話みたいな噂を閣下も信じているのですか」


「あぁ、信じているとも。儂は確かにおぬしの母と関係があった。そして時期も一致しておる。であれば、そうと信じるのが当然よ」


 目が、目が曇っている。

 何が原因でそんなに目が曇っているのかは分からないが、軍務卿は若干正気じゃない。


「儂が己の人生をかけて得た軍務卿の地位を我が子に譲れるなど、これ以上ない幸福よ。そして、我が子が他に並ぶもの無き英雄となれば、猶更であろう」


 軍務卿はクリフが自分の息子であることにこの上の無い期待を抱いている。

 クリフは嫌な予感を覚えた。もしやこれから先、こういった手合いを相手にしていかなければならないのかと。



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