↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/51

戦神皇子、ワクワクする

「状況はどうなっている?」


 オズワルド帝国第一皇子アレクサンダー・オズワルドはコントリウムの町を密かに囲む部隊の者に声をかけていた。

「もはや一刻の猶予もならん!」といって、飛び出したクリフだが。そんなクリフよりも先にアレクサンダーはコントリウムの町に辿り着いていた。


 おそらくクリフは啖呵を切って飛び出したものの、途中で苦しむ民草の手助けをしてしまい、遅れているのだろう。こうなることはアレクサンダーの予想通りであった。


「対象は暢気なものです。我ら帝国近衛騎士団が領内に入ったというのに、普段の暮らしを一切変えていません」


 意外なことにルドルフは驚いたのも一瞬、危機感を抱いたのも一瞬で自分はそんなに悪いことをしていないので、何かされることはないだろうと自信を持ち、近衛騎士団のことは気にしないことにしたのであった。

 そうしているうちに、聖女が食料を村々に配ってくれたり、近衛騎士が街道を巡回してくれたり、聖騎士が魔物退治をしてくれたりで、いいことしか起きていない。

 やっぱり何か酷いことをしに来たわけじゃないんだと安心をさらに深めたルドルフはのんびりと毎日を過ごしていた。


「うむ、ある意味ばけものだな」


 アレクサンダーは感心した。これだけ図太いと不幸など感じないのだろうなと。

 さて、そうしてコントリウムの町を眺めていると、遠くから馬の駆ける音が聞こえてきた。


「とうとうお出ましだぞ」


 現れたのはクリフだった。

 アレクサンダーに数日遅れての到着である。

 隠れているアレクサンダーはここからどうなるのだろうとワクワクしながら眺めていた。


 クリフはコントリウムの町の入り口に立つ衛兵に向かって叫ぶ。


「クリフ・コンフォードである! 父の見舞いのため舞い戻った! 道を開けよ!」


 数万の兵に届く声である。衛兵は耳を抑え、手でどうぞと合図を出した。

 そこで素直に通すのかとアレクサンダーは驚愕する。

 お家騒動中ではないのか、コントリウムの町はルドルフ派でクリフを敵視しているのではないのか。

 全く予想外の展開にアレクサンダーも部下に慌てて指示を出す。


「近衛騎士団特務隊、行動開始!」


 軽装に加え連射式特殊クロスボウを持ち、潜入工作に特化した部隊が、コントリウムの町に突入する。


「俺は正面から入る。みな続け!」


 アレクサンダーは右手で杖をつき、左手に細剣を掲げながら、コントリウムの町の入り口に向かう。


「何者だ!」


「貴様に名乗るほど俺の名は安くない!」


 そこらの平民に名乗るわけがないと細剣を構えると、衛兵が剣を抜く。

 その瞬間、アレクサンダーの細剣が衛兵の剣に対して巻き取るように絡みつき、跳ね上げられた。すると衛兵の剣は宙を舞い、遠くの地面に突き刺さる。

 え? となった衛兵の体に細剣を掠めさせるアレクサンダー。


「痛いっ!」


 ちょろっと斬られたというか、かすり傷程度で衛兵は降参してしまった。


「お見事です。流石は戦神皇子と呼ばれた御方」


「嫌味か貴様。昔は片手で大剣も振れたのに今ではこのザマだぞ」


 戦神皇子──それがアレクサンダーの異名である。戦場を遂に不敗で去った男。

 勇者との戦いで腕と足の自由を失ったが、武芸の腕まで完全に失ったわけではない。細剣程度の武器ならば、まだ振ることはできた。もっとも、振れたとしても、その実力は全盛期とは天と地ほどの差があるが。


「まぁいい。俺たちもさっさと男爵の屋敷を目指すぞ。今頃、特務隊が屋敷を囲んでいるはずだ。そして、クリフに何かあれば、突入し、ルドルフを殺す。


 それは剣呑な展開であり、本来望むべきものではないのは分かっているのだが、アレクサンダーは混沌とした状況が訪れることをワクワクした気分で待ち望んでいるのも事実であった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。