皇女と聖女は互いを刺し合う
「まぁ、なんと素敵な館なのでしょう」
完成のため、建築を急がせる皇女アメリア・オズワルドの前に聖女クリスティアナがやってきた。
アメリアは早々に公爵邸を建て終え、既成事実をもってクリフを自分の夫にしようと考えており、そのために建築を急がせていたのだが、そこに思わぬ来客であった。
「とても贅を尽くしたお館ですね。アメリア様」
「そうでしょうか。クリスティアナ様」
二人は初対面である。だが、眼が合った瞬間に二人は互いを敵だと認識した。
互いにある一人の男を愛する恋敵であると、そんな直感が働いたのである。
この女──なんて魅惑的な肢体をしていやがる。そう思ったのはアメリアであった。実際、クリスティアナは長身で男受けの良い豊満な肉体を持ち、出るところは出て、引っ込むところは引っ込む魅力的な体をしていた。そして、顔立ちも聖女でありながらどことなく妖艶さを感じさせる美貌に対して、明るい金髪が魅力を引き立たせていた。
対して、この女──なんて完璧なスタイルをしていやがる。そう思ったのはクリスティアナであった。アメリアはクリスティアナに対して女性的な膨らみこそ僅かに劣るが、それを補って余りあるほど、均整の取れたプロポーションをしていた。顔立ちも人形染みた精巧さを思わせるものであり、落ち着いた銀髪がその魅力を引き立たせている。
「一体、どのような方がこのお屋敷に住まわれるのでしょうか?」
クリスティアナはすっとぼけて尋ねる。
対してアメリアは勝ち誇った表情で──
「帝国でも名のある騎士の方が住まわれますの」
「あら、でも、そのようにご立派な方が住むには少し派手ではありませんこと? 私の知る立派な騎士様は清貧を好まれるのですけれど」
クリフと住むから贅沢にしたんだよ(アメリア)
クリフが住むには贅沢よりも質素の方が合うのでは(クリスティアナ)
「あら、そうなんですの? 教会の方が騎士について詳しいとは存じ上げませんでしたわ」
「教会にも聖騎士がおりますから」
騎士のことなんかよく分かんねぇんだから黙ってろ(アメリア)
うるせぇ、うちにも聖騎士ってやつらがいるから分かるんだよ(クリスティアナ)
アメリアとクリスティアナ。
同じ男──クリフ・コンフォードを愛する二人はお互いを完全に敵だと認識し、その後も嫌味の応酬を続けるのだった。




