↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/51

手紙の送り主~ルドルフ・コンフォードについて~

 さて、ここで物語の発端となる手紙の送り主、ルドルフ・コンフォードについても、伝えておこう。


 ルドルフ・コンフォード、彼はコンフォード男爵家当主ヘンドリクセン・コンフォードと男爵家に仕えるメイドの間に生まれた妾腹の子である。ヘンドリクセン男爵には正室に別の子爵家から嫁いできた妻がいたが、性格の反りが合わず、のんびりとした性格をしていた自家に仕えるメイドに恋し、大恋愛の末ルドルフが生まれることとなる。

 当初、ルドルフの存在は隠されていたが、正室がクリフを産んだ際に亡くなったことを良いことにルドルフを表に出し、実の子であることを明かしたのだった。

 ヘンドリクセン男爵は憎い正室の子であるクリフより愛したメイドの子を可愛がった。ちなみに、妻となったメイドの方は比較的道理をわきまえた人物であり、正室の子であるクリフが尊重されるべきとして、ルドルフをなるべく目立たせなかった。

 しかしながら、そんな気遣いも虚しくヘンドリクセン男爵は、クリフを王都に捨ててきてしまう。周りの者には事故で死んだと言い訳をしていたがバレバレであった。

 妻となったメイドも薄々なにがあったかは気付いていたが、最後は自分の子供可愛さにクリフのことを見捨てざるをえなくなり、ルドルフは何となくの空気のまま、コンフォード男爵家の跡継ぎになるだろうと周囲が思うようになるのだった。


 では、実際のルドルフの人物はというと、性格自体は決して悪人ではない。よく言えば、おおらかで物事に頓着せず、過去を気にしない性格。悪く言えば、空気が読めず、気遣いができず、無神経で忘れっぽい性格であった。

 そんな性格でなければ、親が捨てたことにしている兄に手紙など出したりはしないだろう。実際、ルドルフはクリフに対してなんら思う所がなく、たぶん兄弟と思しき、コンフォードの名を持つ者が世間で活躍しているなぁとしか思っていない。そこになんら含むところはなく逆に関心さえしていた。

 ルドルフは自分の普段の生活に満足しきっているので、周囲に対して嫉妬心など欠片も抱かない。妻は地元の地主のそれなりに美人な娘を貰い、そんな相手と何人も子供を作っている。妻と子供に囲まれた生活だけで十分で贅沢などしようという気持ちも欠片もない。


 ならば、なぜ、悪政を行っているかのように捉えられるかというと、そこは物事に頓着しない性格と気遣いのできない性格という悪い面が出た結果だった。

 ぶっちゃけた話、悪徳領主と言えるほど過酷な税率などを設定し、給金を惜しんで衛兵などを減らしたのはヘンドリクセン男爵である。彼は私腹を肥やすことに執心する人物であった。

 今は男爵の代行として領内の政治を執り行うルドルフは、あまり物事を気にしない性格なので、父の代と同じ領内政治を行っていた。

 父の時も上手くいっていたような気がするし自分も同じようにすれば良いだろうという短絡的な判断である。ここで、ルドルフに領民の声を聞くような気遣いがあれば、すぐさま税率を引き下げ、重税から解放しただろう。

 ルドルフ自身は決して悪人ではなく、貧困にあえぐ民がいれば、憐れむ情を持つ人物であるのだから。しかし、気遣いのできないルドルフは領民の声を聞くような繊細さはもっていなかった。


 もっとも全てを性格のせいにすることはできない。

 ルドルフは出自故、領主になるための教育をまともに受けていなかった。

 父は悪徳領主であるため、教師としては不向き、領主の常識を学ぶために帝国騎士学校という教育機関もあるが、母親が平民のため入学は難しい。ルドルフはなんとなくで領主を務めるしかなかったのである。


 ちなみに、皇城においてコンフォード男爵領はそこまで評判が悪くない。

 なぜかというと、ヘンドリクセン男爵が重税を利用して私腹を肥やしていた分を、ルドルフが領主代行となってからは、そのまま国に納めるようになったからである。

 詳しい事情を知らなければ、急激に税収が上がった領地として認識されつつ、かといって何か褒美をねだるということもしない謙虚な一族と皇城では思われていた。

 もっとも、これは賄賂などという手段を素朴な思考のルドルフが持ち合わせていなかっただけであり、税収も国に納めるのが普通であると純朴な思考で判断したからであった。


 そんなルドルフが男爵代行として治めるコンフォード男爵領に到着したクリフであったが、実際の所、実家に帰ったとして家を継げるかは微妙なところであった。皇城ではクリフが継ぐか継がないかで真っ二つに割れているが、それは上層部だけの話であって、一般官吏にとっては税収を急激に上げたように見えるルドルフの方が男爵に相応しいと思われていた。

 出自の上ではクリフに絶対的なアドバンテージがある。ただし、長年、領内の統治に関わってきた事実がルドルフを後押しする。

 しかしながら、ルドルフには大きな問題がある。それは彼の愛する我が子が絶対にコンフォード家を継げないことだ。


 差別的な表現になるが、ルドルフは貴族と平民のハーフである。血筋の尊さは一般的な貴族の半分以下。対して、ルドルフの息子は母親が平民であるので、ハーフの貴族の更にハーフ。貴族の血は1/4しか入っていない、貴族のクォーターである。

 流石にそれだけ貴族の血が薄まっていると貴族とはみなされない。なので、ルドルフの子はコンフォード家を継げないわけである。仮に、ルドルフが新たな妻を得ようとしても(ルドルフは妻を愛しているのでそれはありえないが)、貴族と平民のハーフに娘をやる貴族はいない。

 仮にルドルフが男爵家を継いでも、次の跡継ぎはは絶対にクリフの子にしなければならないという問題が発生する。お家相続問題は、当事者の家だけで済めばいいが、それだけでは済まない場合もあるので、多くの貴族が面倒のないスムーズな継承を望む。そうなると、次の子が確実に跡継ぎになるクリフの方が男爵家の跡継ぎに相応しいという考え方もある。


 ──とまぁ、手紙を送ったルドルフについて様々なことを述べたが、ルドルフがクリフに手紙を送ったのは素朴な感情に基づいたもので、きっと病気の父親の見舞いには来たいだろうというそれだけの思いだった。


 そんなルドルフにとって、アレクサンダー第一皇子が近衛騎士団を連れて、クリフと共に領内に入ってきたのは晴天の霹靂だったに違いない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。