冴えない故郷
帝都から二日。遂にクリフたちはコンフォード男爵領へと到着する。
もっとも、たどり着いたの領の境であり、ここからコンフォード男爵が治める村まで行かなければ、本当に到着したとは言えない。
「閣下の手前、こう言うのはどうかと思いますけど、なんだかパッとしない所ですねぇ」
空気の読めない魔術師の女。ヴィルマがつぶやいた。
なんというか、空気がどんよりとしているのだ。それは領の境にほど近い村に行っても同じで、
「空気が重いというか、なんというか」
オリヴィエですら思わず口にしてしまうほど冴えない雰囲気の故郷であった。
「うーむ、子供の時分は分からなかったが、随分と貧しいのだな。俺の故郷は」
クリフは苦笑いを浮かべている。何分記憶が十歳までしかなく、それまでも領主の屋敷で暮らしていたのだから民の暮らしぶりまで分かるはずがなかった。
「ちょいと、話でも聞いてきやしょうか?」
ゴーツェルの提案を承諾するとゴーツェルは馬から降り、村人に話を聞きに行った。その間にクリフたちは休憩を取る。簡易糧食を馬に括りつけた袋から取り出すと、クリフのそばに子供たちが寄ってきた。
食べ物を見て寄ってきたのだろう。クリフは持っていた食べ物を子供たちに渡すと子供たちは喜んで立ち去って行った。
「すまんな。食い物を分けてくれるか」
自分の分がなくなったクリフはオリヴィエから分けてもらう。
「幼子が飢えているとは一体何事だ?」
疑問に思うクリフのもとにゴーツェルがやってくる。
「どうにも領主が重税をかけているらしいすわ。ついでに、凶作、魔物の略奪も起こったらしく、食料がすっからかんだとか。他の町や村も似たようなもんで、凶作と重税が重なっているのと、魔物や盗賊・山賊が跋扈してるとか」
「凶作、豊作は天の配剤故仕方ないが、重税と領地の治安維持は人の不手際だな」
クリフの顔に怒りが浮かぶ。
不手際は自分の一族のせいと考えられるため、怒りもひとしおだった。
「オリヴィエ、シャルルとシド殿と共に帝都に戻ってくれるか。そして、アレクサンダー殿下から、近衛騎士を一小隊借りてきてくれ。シャルルがいれば話はすぐ済む。シド殿は教会からの食糧援助を引き出していただきたい。費用が必要であれば私が払おう」
シャルルは従軍吟遊詩人などと名乗っているがれっきとした帝国の上位貴族である。シドも司祭としての地位があるので、クリフの言葉を伝えるには十分な立場であった。
「あの、私は何かすることは?」
ヴィルマが自分も役に立つアピールをしているが、婦女子に無理をさせるのはクリフの騎士道に反するので何も頼まない。
「騎士として、民の飢えは見逃せぬし、治安を守ることも役目である。そのためならば、使えるものは何でも使おうではないか」
そういうと、クリフは村人の食糧確保のために弓を持ちだし、ゴーツェルと共に山へ狩りに向かうのだった。
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