当人の気持ち
町を迂回するルートで馬を走らせたクリフ達だったが。
物資もなく、天を仰ぐ気持ちで、近くの岩場で体を休めることにした。
「まさか、クライスとアロイスが裏切るとは」
そもそも何に対しての裏切りなのかわからないし、町の入り口を塞いでいた重装歩兵もクリフ達には訳が分からなかった。
「一体何が起きているのだ」
クリフは岩に背を預け、天を仰ぐ。
「あぁ、いたいた」
妙に明るい声が聞こえてくると魔術師のヴィルマがぴょんと岩場に姿を現した。
真っ先に逃げ出したものが何用だ。などとは言わない、相手は婦女子であるのだから、騎士としてクリフはそんな物言いはしない。
「無事だったか」
「それはまぁ、真っ先に逃げ出したもので」
なかなかな人物を魔術院はよこしてくれたなとクリフは思うが口には出さない。
それよりも疑問があるのは、あの重装歩兵の集団だ。
「彼らが何者かわかるか?」
訊ねるとヴィルマは逆に何故分からないのかという顔をしてみせる。
少しイラっとしたがクリフは我慢してヴィルマの話を聞くことにする。
「あの人たちは閣下が故郷に帰るのを邪魔しようとしているんですよ」
「何故?」
「閣下にコンフォード男爵になられたら困るからです。ちなみにいうと私はというか魔術院は閣下にコンフォード男爵になってほしい派です」
いやいやと、クリフは首を横に振る。
「訳が分からない。なにゆえ、皆が俺がコンフォード家を継ぐと思っているのだ。俺はまず病気の父の見舞いに帰るのが目的だぞ。確かにその時に家督相続の話は出るかもしれんが」
「いやぁ、コンフォード卿はずっと旅をしてたから知らないでしょうけど、いまや国内全土で、卿が家を継ぐか継がないか、継がせるか継がせないかで大揉めですよ」
なぜそんなことになるのかとクリフは言いたくなるが、それもこれもクリフの影響力の高まりが激しいからであって、人々はその流れに乗っているだけである。
「俺は別にコンフォード家を継いでも継がなくてもどっちでもいいと思っているのだ。そもそも、俺には兄がいるし、父上も兄を好いていて、俺を捨てたわけだしな。俺が家を継げる見込みはないだろう」
「でも、帝国の基本方針として跡継ぎは正室の長子と決まっているじゃないですか。閣下はそれに当てはまっているでしょう」
だがなぁ、と腕を組み困った表情をするクリフ。まさか自分の気付かないところで、帝国がこんな有様になっていたとは予想外であった。
「なんにせよ、旅を中止するわけにはいかん。捨てられたとしても、一応は親だ。親の見舞いくらい行かねばならんだろう」
情況が混沌としていることを理解したクリフだが、当初の旅の目的通り、コンフォード男爵領を目指すことには変わりはない。気持ちを切り替え、再び旅を始めるのだった。
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