裏切り
ヴィルマの体を労わりながら遅々とした歩みを進むクリフと旅の仲間。
食料や物資は充分以上に補給してきたので、何も問題はない。
「俺はただ父上を見舞いに行きたかっただけなんだがなぁ」
手紙に戻ってきてほしいとあったから帰郷のための道を歩んでいるだけなのに、何故、ここまで様々な出来事が起こるのか。クリフは正直、困惑していた。
捨てられたのは、自分がいると妾腹の兄が困るから、そのことはわかっているし、どうこういうつもりはない。とにかく人として最低限の行いとして父の見舞いをするべきだと思っているだけで、自分は何も思うところがないクリフであった。
「まぁ、大将ほどのお方なら、一歩進めば国も動くと思えば」
ゴーツェルが慰めにもならないことを言う。
気もそぞろなクリフはゴーツェルの言葉を聞き流し自分の思ったことだけを言う。
「俺の軍はどうしているだろうか。シーザリウス殿下はどうしているだろうか」
レオンハルト卿とサーベリウス卿に任せてきたから心配はないと思うが、シーザリウス殿下はどうか。おしめを変えたころからの付き合いだ。心細い思いはしていないだろうか。クリフは急に戦の最前線が恋しくなってきた。
「落ち着いてください閣下」
クロイスとアロイスの双子が槍を交差させ、振り向くクリフの視界を塞ぐ。
まぁ、みんな何とかやってるだろうと気を取り直すクリフ。
だが、そこに斥候のアーヴィンから報告が入る。
「閣下、この先の町の様子がどうにもおかしく」
どうおかしいのかと尋ねても説明が曖昧であったので妙とは思いながらもクリフは街の近くまで馬を進める。すると、おかしい理由は一目瞭然だった。
なにせ、全身を鎧で固めた重装歩兵が指揮官付きで町の門前にいるのだから。
「おかしいも何も──」
というより早く「突撃」の声が聞こえて、重装歩兵がクリフたちに襲い掛かる。──
といっても、武器を使うわけでもなく集団で揉みくちゃにするだけであった。
「オリヴィエ! ヴィルマ殿を連れて──」
「あ、すいません。私ここまで頑張れとはいわれていないので──」
ヴィルマは馬車からぴょんと降りる。魔術で手助けなどもなく、全く何も役に立たない女であった。
「ええい、一時撤退!」
クリフは号令を出すと、何名かがクリフに続いて重装歩兵を振りほどいて、いったん距離を取る。だが、クロイスとアロイスはどういうわけか、重装歩兵側についていた。
「お前らどっち派?」
「継がない派」
それだけで通じ合ったのか重装歩兵とハイタッチしあう。
双子の騎士はクリフは統べる軍が心地よく、その環境が続いてほしいと思う派閥であった。
「こりゃあかんですぜ」
ゴーツェルはとにもかくにもクリフ派であったからぶれない。
気付けばアーヴィンもいない。おそらく重装歩兵側に移ったのだろう。
従軍司祭と従軍吟遊詩人の二人もクリフについてきているかろうじてオリヴィエの馬車も無事だ。
「余計な荷物は捨てる。町を迂回し、我らは進む。オリヴィエ、馬車は捨て、俺の馬の後ろに──」
と言ったのに、オリヴィエはシャルルの馬の後ろに乗った。まさか貴様らとクリフは追及しなかった。何かを読み違えていると思いながら、クリフは馬を町を迂回するルートで走らせた。
この作品について面白いと思う場面などあれば、評価・ブックマーク・感想をよろしくお願いします。
また、たまに活動報告などもご覧いただけるとありがたいです。




