怪しい女
ドラゴン討伐の祝宴をすると言われたが、クリフ達は固辞した。
そんなことをしている余裕はないからだ。
クリフたちは物資の補給が済み次第、町を発つ予定であったが、そこに一つの影が。
「クリフ・コンフォード将軍閣下であられますか。私は帝国魔術院のヴィルマと申します」
露出の多い服にマントを羽織った怪しげな魔術師であった。
クリフと旅の仲間たちも怪しいとしか思わなかった。
「魔術院の方からクリフ様のお手伝いをするように命じられたのです」
「不要である。我らは急ぎの旅をする身。女人の身では辛い旅路となるだろう。騎士たるもの、女人に苦労を背負わせるなど騎士の名折れである」
ヴィルマはクリフの返答に困る。
とりあえず、コンフォード卿が領地に帰る手助けをしろと言われて送り出されてきただけである。露出の多い服も色仕掛けでもすればいいのかと思って用意したものだがあまり意味はないと気付くのだった。
「そこを何とか、このまま帰っては叱られます。それに戻る道も一緒なのですから同道しても問題はないのでは?」
そう言われて、それは可哀想だ。とそれもそうだなという二つの気持ちが起き、クリフはあっさりと同行を承諾するのだった。
「うむ、御婦人の一人旅というのも危険があるだろう。騎士たるもの女性の身を案じ、それを守るのも務め、旅への同行は許そう」
とりあえず、ヴィルマは馬をもっていなかったため、オリヴィエの御者する馬車に乗せることとなった。さて、この馬車、荷馬車であるからして乗り心地は最悪であった。ヴィルマとしては魔術院からの任務であるのでそれも耐えるつもりであったが、騎士道精神豊かなクリフがそれを許すはずもなく、馬車の中にいるヴィルマを労わるため、クリフと旅の仲間は頻繁な休憩をすることとなる。
さて、ここで思い出してほしいのが帝国魔術院の目的である。魔術院としてはクリフに領地を継いでもらい、軍から離れてもらうのがねらいであったのだが、逆にヴィルマの存在によってクリフたちの進みは緩やかになってしまっていた。
果たして、このままでは家督相続者を決めるときまでに領地に戻れない可能性がでてきた。だが、当のヴィルマはクリフを筆頭に騎士たちに姫君のような扱いをされてまんざらでもなかった。当初の目的を忘れ、この女、旅を楽しみ始めていたのである。
そのことに魔術院が気付いていることなどは当然ありえず、クリフたちの旅は更にゆっくりとしたものとなっていった。
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