面目躍如
「なるほど、ドラゴンは休眠中か」
では、様子見で──と冒険者ギルドのギルドマスターが言うより早く、
「では、攻めるのは今しかないな」
クリフは仲間との協力で数匹のドラゴンを仕留めたことがある。
魔物の頂点といえど、人間の頂点が何人か集まれば退治するの苦労はない。
「それは、何故?」
「休眠中のドラゴンは巣穴にこもっている。となれば戦闘の場は狭い巣穴だけとなる。ハッキリ言って、ドラゴンに大空を自由にはばたかされば私でも手には負えん」
だから、寝ているところを奇襲するのだ。
「さて、貴公ら冒険者の中にドラゴンの目を正確に射抜くことはできるものはいるか」
ギルドに集まった冒険者たちは誰も手を挙げない。
「ゴーツェル?」
「自分にも無理です」
ならば視界を奪うのは諦めよう。
「ドラゴンの一撃を耐えられる大盾を持つ者はいるか」
誰も手が上がらない。
「クロイス・アロイス」
「いや、槍で抑えるのは無理ですって」
ならばドラゴンの攻撃を防ぐのは諦めよう。
「では、ドラゴンを力で一瞬でも押さえつけられるものはいるか」
誰も手があがらない。
ぐぬぬとクリフが歯ぎしりを立てる。
「ドラゴンの頭を一太刀で断ち切ることができるものはおらぬか!」
当然、誰も手を挙げない。
「一体、貴様らはなんならできるのだ!」
サーベリウス卿ならば、たやすく竜の目を矢で貫く。
ジェラルド殿ならば、ドラゴンの一撃など大盾で軽くいなす。
レオンハルト卿なら、ドラゴンを押さえつけるだけでなく投げ飛ばす。
アレクサンダー第一皇子ならば昔は一太刀でドラゴンの頭をかちわり、ジェラルドはメイスでドラゴンの頭を揺らした。ここに聖女の支援法術が加わればたやすい相手である。
「ええい、役立たずどもめ! こうなれば、冒険者はつれてはいけぬ。連れていったところで命を散らすだけ。帝国臣民がやたら命を散らすのは騎士として許せぬ!」
「では、どうするので」
「決まっている。俺一人で退治するのだ!」
全ての人々がクリフを止めようとするのを振り切り、クリフは腰にある剣を確かめ、ギルドを出て、竜が眠るという洞穴。
「こうして、英雄は旅立ったのであった」
従軍吟遊詩人のシャルルがついてくる。
「ドラゴン退治。素晴らしい題材だ。しかし勝算はあるのかい」
「ある。空を飛ばさなければ、火を噴くトカゲだ、ドラゴンなど」
堂々とした答え。シャルルはその後を追い、戦いの行く末を見届けることにした。
町から少し離れた山道。そのそばにドラゴンの姿があった。
「うーむ、魔物風情に名乗りは必要あるまい」
そういうなり、クリフは巣穴の方に向かって駆け出した。
そして、眠っているドラゴンの翼を狙い、両手に持った剣を振り抜き、翼の翼膜を大きく切り裂いた。
翼膜を切り裂いたのは羽ばたきを使った態勢変更を妨害するためだ。
「名乗りが遅れて失礼。我が名はクリフ・コンフォード。帝国の騎士である」
ドラゴンがクリフを認識し、ブレスを吐こうとしたがそれをすでに読んでいるクリフの動きは早い。ブレスが吐かれるよりも早く懐に飛び込み、ドラゴンの腹を切り裂いた。血と内臓が零れ落ちのたうち回るドラゴンに対し、クリフはその頭へと駆け上がり、ドラゴンの目に剣を突き立て、奥まで押し込んだ。
目の奥には必ず脳がある。確信をもって全力で突きこまれた刃とそれを持つクリフを遠ざけようとドラゴンは暴れるがクリフは剣を離さず、更に奥へと剣を押し込んだ。
その瞬間、ドラゴンの動きが止まり、倒れ伏す。
「まだだ」
クリフは目から剣を抜くとドラゴンの眉間を狙い。帝国の宝剣を突き立てた。刃は相当な抵抗があったが全力を込めて剣を押し込み、刃を脳髄まで到達させ完全にドラゴンの息の根を止める
「剣聖将軍の面目は保てたか」
クリフは一部始終を見ていたシャルルに尋ねるが、シャルルは何も言えずひたすら頷くしかできなかった。
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