ドラゴン討伐
「おお、神よ。なぜ、我々にこれほどの数多の試練を与えるのか」
町の騒ぎを見て、司祭のシドが天を仰ぐ。
「待て、まだ何が起きたか分からん」
クリフは斥候のアーヴィンに状況を調べるように伝え、自分たちは酒場で待機することにした。ほどなくして、アーヴィンが戻り、クリフに町の状況を伝える。
「どうやら、近くにドラゴンが現れたようです」
「あぁ、神よ」
司祭のシドが再び点を仰ぐ。これは駄目だ。
この展開は駄目だと旅の仲間たちは諦めた。
「ドラゴンと聞いてはこうしてはいられん。町の者たちの助太刀に向かうぞ。
「いや、その前に少しご飯を食べようよ」
シャルルの言葉。
確かにそうだ。ここまで強行軍? でまともな食事をとっていないことを思い出したクリフは分厚いステーキとたっぷりの鶏のシチュー、ベーコンと芋の炒め物と山のように積まれたパンを頼んだ。人の二倍、三倍は食べるのがクリフである。ほとんど一人で注文した料理を平らげ、旅の仲間たちを驚愕させると、腰の剣を確かめ、町の人々の手助けに赴くのだった。
「やぁやぁ、皆の衆。話は聞いた! ドラゴンが現れて困っているそうではないか、帝国騎士として、このような事態は見過ごせぬ。微力ながら手を貸そうではないか!」
「いや、まだドラゴンは暴れまわってはいないのですが。ところで、貴方はどちら様でしょうか」
クリフは尋ねられると堂々と答えた。
「我が名はクリフ・コンフォード! 帝国にて第一軍を預かる将なり!」
ははぁ、とひれふすかと思ったが何人かの若者が肩を揺らし、威嚇するようにクリフのもとへと近づいていた。
「悪いが帝国軍人に用はねぇ。この件は冒険者ギルドが預かっている」
冒険者ギルド──民の依頼を受けて魔物退治などを行う立派な組織だとクリフは認識しているが──
「喝!」
大音量でクリフは寄ってきた若者を叱責するのだった。
「我々はともに民のために戦う者。所属がどうこうなどと下らぬことを抜かすなど言語同断! その不心得、今すぐ改めよ! 我らは協力し、ともに民のために戦うのだ!」
旅の仲間たちの同意を得ることなく。クリフたちがドラゴン討伐に参加することが決定した瞬間だった。
勢いに負けて、冒険者ギルドの若者たちが後ずさる。そこへすかさずクリフが指揮官のような振る舞いで──
「司令部はどこだ。案内せよ!」
勢いと凄みで負けた若い冒険者たちは従順な犬になってクリフを案内する。
案内した先は冒険者ギルドのある建物だが、クリフは我が物が顔で扉を潜り──
「我が名はクリフ・コンフォード! 騎士として民のため、助太刀に参った!」
飯をたっぷり食って体力全快、気力も全快のクリフ・コンフォードは戦に赴く気持ちになっていた。
「コンフォード卿!? 何用で当ギルドまで?」
ギルドマスターが慌てて、クリフの前に現れ跪く。
普段の言動から、甘く見られがちだから、今のクリフは立場で言えば帝国軍の中でも五本の指に入る立場。無礼を働けば、ギルドマスターの首など立場的にも物理的に簡単に飛ぶ。
「ドラゴン討伐を行うと聞いた。私も騎士として助勢したい!」
いや、助勢と言ってもドラゴンの存在も噂程度で──
「アーヴィン、今すぐドラゴンの在処を探せ」
「はっ」
斥候役が影のように消える。
「作戦会議は立てているのか!」
クリフが叱責するようにギルドマスターに問う。
「いえ、まだ──「遅い! 噂であれば真偽を確かめ、民の避難まで務めるのが貴公の役目である!」
クリフは腰帯から鞘ごと剣を掴み、ギルドの床に凄まじい勢いで叩きつけた。
「今より、私──クリフ・コンフォードが指揮を執る。ここは今より対ドラゴンの作戦本部である!」
またまたとんでもないことになってきたと旅仲間たちは頭を抱えることになるのだった。
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