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 ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。  作者: 米糠


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 とうとうリーナのBランク昇格試験の日がやってきた。リーナは朝からそわそわしている。


 俺はリーナの実力は、余裕でBランクのレベルにあると信じているが、本人にその自信はないようだ。


 昇格試験は模擬実戦形式。試験官はAランク上位の冒険者ランディスさんだ。場所は北方訓練場の第五フィールド。時間は午前十時開始だ。



 Aランク上位が相手の模擬実戦ということは、相手に勝つ必要はない。

 というより、勝てたらAランク上位の実力があるということ。普通は勝てるはずがない。


 だが、リーナは勝たなければ合格できないとでも思っているのか、緊張が半端ない。受験者の心理というのはそういうものだろう。俺にも経験がある。


「リーナ。そろそろ行こうか」


「は、はい」


「リーナ姉、緊張し過ぎじゃない?」


 カイ。それは言っちゃいかんやつだぞ。


「そ、そうかなあ……」


「気にするな。大きく深呼吸でもしてみろよ。リーナはBランクの実力は悠にある。Aランク上位が相手の模擬実戦なんだ。勝とうと思う必要はない。自分のできることをすべて試験的に見せるつもりで頑張ってこい」


 リーナは深呼吸を三度ほど繰り返し、ぎゅっと拳を握った。

 少しだけだが、肩の力が抜けたように見える。


「じゃあ、ポータルシフトで試験会場に行くぞ」


「はい。お願いします」


 リーナとカイが俺につかまり、俺はポータルシフトで北方訓練場の第五フィールド近くに転移した。街の冒険者たちにとって昇格試験はちょっとした見物らしく、一般席にもちらほら観客の姿がある。


 第五フィールドにはすでに、今日の相手となるAランク上位の冒険者ランディスさんが待ち構えていた。


 鋼鉄のような体躯、無駄のない立ち姿。

 リーナの視線に気づいた男が、軽く手を挙げる。


「よく来たな。俺は『大剣のランディス』だ。手加減はするが……容赦はしない。全力で来い」


 ランディスの登場に、観客席がどよめく。

 この男、姫野宮都市でも実力派として有名らしい。見るからに強そうだ。


 声をかけられたことにより、リーナはランディスに飲まれたらしい。緊張が、朝より5倍増しになっている。もう体がカチンコチンで動けそうにない。


「リーナ。肩の力を抜いて」


「は、は、は、はい」


 だめだこりゃ。……何とかしないと試験に落ちるぞ。俺はどうすればいいか考えに考えた。リーナの緊張が解ける何か。……笑わせる? くすぐる? 無理無理。


「リーナ! 作戦を授けよう。 Sランク冒険者の考えだぞ」

 俺は、リーナに作戦を授けて、やることに集中させ、それに集中させることで緊張を解こうとした。集中していれば、余計なことを考える暇がない。


「お願いします」

 リーナが縋るように俺を見つめた。


「相手はAランク上位と言えども剣士、つまり前衛職だ。接近戦は得意だろうが、遠距離での戦いはどうしても落ちるはず。そしてお前は魔術師、遠距離戦闘は得意だろう」


「は、はい」


「つまり、奴との戦いは、間合いが重要。奴に接近戦を許すな。遠距離から攻め続けるんだ」


「はい。そうですね」


「リーナには、ホバームービング、ブーストホバームービング、ハイウィンド・インパルスという三つの飛行魔法がある。それを駆使すれば、奴に接近攻撃を許さないことは可能だろう」


「つまり、空に昇って魔法を撃ちまくれば勝てるってことですね!」

 リーナの表情がぱっと明るくなる。勝てるという思いが前面に出ている。


「リーナ。相手はAランク上位の実力者だ。そう簡単には勝たせてはくれないさ。でも、勝てなくても試験には合格できる。勝つことが合格の判定基準じゃないからだ。あくまで、Bランクの実力があると判断されれば合格なんだ。そこのところは、勘違いするなよ」


「はい。分かりました」


「それから、空に昇って魔法を撃ちまくれば勝てるというものでもない。奴だって、剣げきを飛ばしてくるかもしれないし、空を駆け上ってくるかもしれない。たぶん、Aランク上位なら、そのくらいはするだろう。そこでブーストホバームービング、ハイウィンド・インパルスといった飛行スピードで接近戦を許さないことも大切になるんだ。分かるよね」


「はい。卓郎のアドバイス、胸に刻んで頑張ります」

 リーナは、何か吹っ切れたような表情で俺に答えた。


 頑張ってこい。


 俺は、リーナの肩を押して、試験に送り出した。

 リーナの肩が、唇を噛んで前に出た。その目は、試験官である『大剣のランディス』を睨んでいる。


「リーナです。……よろしくお願いします!」


 張り詰めた空気の中、審判役のギルド職員が手を挙げる。


「これより、リーナのBランク昇格試験――模擬実戦を開始する!」


「リーナ……落ち着け。大丈夫だ」

 観覧席から大きな声で応援する。

 カイも両手を握り締め、祈るように見守っている。


 ランディスが大剣を構えるのと同時に、リーナの魔力がふっと立ち上った。

 リーナの足元に小さな風紋が広がり、杖の先に淡い光が灯る。


 ――先に動いたのは、リーナだった。


「ホバームービング!」


 ふわりと体が浮かび上がり、ランディスとの距離を一気に開ける。

 観客席から「おおっ」とどよめきが起きた。


「いい判断だ」

 ランディスが唸るように呟く。


 だが次の瞬間。


「だが――甘い!」


 ランディスが足を踏みしめた瞬間、地面が弾けた。

 一歩で十メートル近い距離を詰めてきたのだ。


「速っ……!」


 リーナの表情が固まる。


 俺も思わず身を乗り出す。

 あれがAランク上位……。やっぱり規格外だな。


「リーナ! 集中しろ――来るぞ!」

 俺が叫んだ直後、ランディスの大剣が横薙ぎに振り抜かれた。


 ゴッッ!!


 空気が爆ぜるほどの圧だ。

 剣そのものより、斬撃の風圧が地面をえぐっていく。


「ひっ……!」

 リーナは慌てて高度を上げた。


 だが――ランディスは追う。

「跳躍ッ!」


 信じられない高さまで跳び上がり、空中のリーナへ刃を伸ばす。


「きゃあああっ!」


(避けろリーナ――!!)


 その瞬間、リーナの体が再び風に乗った。


「ブーストホバームービング!!」


 風の塊が破裂したような加速。

 リーナは空中を滑るように後方へと逃れ、ギリギリで大剣をかわした。


「いい反応だ!」

 ランディスが笑った。


 完全に楽しんでやがる。この人、戦闘狂だ。


 リーナは息を荒げつつも杖を構え直す。

「ま、負けない……!」


 魔力が杖の先に渦を巻く。


「ウィンドカッター!」


 鋭い風刃が連続で放たれる。

 数は多い。威力も申し分ない。

 一般のCランクなら回避も防御もできずに沈むだろう。


 しかし――


「ふっ!」


 ランディスは大剣を軽く振っただけだった。


 ――風刃が消えた。


 いや、斬られたのだ。

 目にも止まらぬ速さで。


「おいおい……マジかよ」

 思わず俺が呟く。


 カイも震え声で言った。

「ランディスさんって……こんな強い人だったの……?」


 ランディスが大剣を肩に担ぎ、リーナを見上げる。

「リーナ。大剣使いに距離をとって、遠距離攻撃を選んだのは良い判断だ。だが――その攻撃力では決め手に欠けるな!」


 リーナが歯を食いしばる。

「……まだよ!」



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